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??「ボクの名前は、一式陸上攻撃機」

1 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 16:55:35 ID:QZSOmzwk


一式陸攻「乗ってる人からは、一式陸攻って呼ばれてる」

一式陸攻「ボクは開戦当初、大活躍したんだ」

一式陸攻「イギリスの戦艦を沈めたのにも貢献しているんだよ?」

一式陸攻「すっごく低く飛んでね……、それこそ海面に当たりそうなくらいに」

一式陸攻「対空砲火の中、お腹に抱えた魚雷を発射する」

一式陸攻「ボクは、傷だらけになりながらも 何とか任務を成功させた」

一式陸攻「ふふっ、誇らしかったな」




引用元
??「ボクの名前は、一式陸上攻撃機」
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1344326135/
2 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 16:56:43 ID:QZSOmzwk


一式陸攻「中国にも行ったっけ」

一式陸攻「あの時は、ちょっと大変だったな」

一式陸攻「ボクは軽くて、それまでの日本の飛行機の中で」

一式陸攻「一番遠くまで飛べる爆撃機だった」

一式陸攻「でも…それゆえに、ボクについて来れる 護衛の戦闘機がいなくてね」

一式陸攻「爆撃に行く度に 何機かの兄弟が撃墜されたんだ……」

一式陸攻「あの時、九六式艦戦くんは、迎撃に出てきたI-15、I-16に」

一式陸攻「勝ってる機体だったから」

一式陸攻「尚の事、悔しかったな」




3 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 16:58:00 ID:QZSOmzwk


一式陸攻「だけど、しばらくして 頼もしい戦闘機が来てくれたんだ」

一式陸攻「それは、十二式艦戦くん」

一式陸攻「後で、米軍に『ゼロファイター』と恐れられた」

一式陸攻「零式艦上戦闘機……零戦くん!」

一式陸攻「引き込み脚、風防つき戦闘機で、最初は 怪我ばかりしてて」

一式陸攻「大丈夫かなぁ…なんて思ってた」

一式陸攻「でも、僕たちの護衛に付いてきた時」

一式陸攻「そんな心配は無用だったんだ」




4 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:00:01 ID:QZSOmzwk


一式陸攻「ある日、いつもの様に爆撃任務で飛んでた時だった」

一式陸攻「向こうから、すごい数のIー15、I-16が飛んできているのが見えた」

一式陸攻「どう見ても零戦くんの倍の数は居た」

一式陸攻「ボクは、ボクも、兄弟も、きっと何機か落とされるって思った」

一式陸攻「それだけに信じられなかった」

一式陸攻「次の瞬間、零戦くんは速度を上げて、敵機に向かって行くと」

一式陸攻「次々とI-15、I-16を落としていった」

一式陸攻「いやホントに」

一式陸攻「零戦くんは とにかく、後ろを取るのが上手かった」

一式陸攻「そして、あっという間に敵機を撃墜していく」

一式陸攻「九六式艦戦くんも上手かったけど、更に磨きがかかったような」

一式陸攻「そんな動きだった……」




5 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:01:02 ID:QZSOmzwk


一式陸攻「それからの爆撃任務は、楽だった」

一式陸攻「何しろ、迎撃の戦闘機が一切出てこなくなったからね」

一式陸攻「ボクに乗ってる人は、『零戦を怖がってる』って言ってた」

一式陸攻「そりゃそうだよね」

一式陸攻「未知の戦闘機に倍以上の数で挑んで」

一式陸攻「全滅した上に、零戦くんは 損失無しだったんだから」

一式陸攻「ホントに零戦くん様様だったよ」




6 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:01:54 ID:QZSOmzwk


一式陸攻「それからしばらくして、ボクは中国から南方戦線での」

一式陸攻「任務が多くなった」

一式陸攻「台湾、サイパンを経由してラバウルって所に配属された」

一式陸攻「ここは最前線だった」

一式陸攻「来るのが楽だったから、あんな事になるなんて」

一式陸攻「思いもしなかった……」




7 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:02:43 ID:QZSOmzwk


一式陸攻「ガダルカナル……」

一式陸攻「地名だから、仕方ないんだけど」

一式陸攻「この名前は、あまり思い出したくない」

一式陸攻「元々は、日本軍が整地して 基地にしようとしてたんだけど」

一式陸攻「それを米軍に奪われた」

一式陸攻「その為、『ガ島奪還作戦』が、繰り広げられる事になった」




8 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:04:25 ID:QZSOmzwk


一式陸攻「ボクの任務は変わらない」

一式陸攻「敵地に行って爆弾を落とす…つまり爆撃任務だ」

一式陸攻「問題は距離」

一式陸攻「ラバウルから560海里(約1000キロ)もの距離を往復しなくちゃならない」

一式陸攻「それは、とんでもない事だった」

一式陸攻「巡航速度(燃料を効率的に消費かつエンジンに負担のかからない飛行速度)で」

一式陸攻「片道3時間くらい掛かる距離だ」

一式陸攻「ボク達はいい」

一式陸攻「機械だから整備不良が無ければ出来る」

一式陸攻「でも、乗っている人達は そうはいかない」




9 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:05:38 ID:QZSOmzwk


一式陸攻「特に護衛に来てくれる零戦くんのパイロット達は、かなり深刻だ」

一式陸攻「たった一人で、いつ襲われるか分からない」

一式陸攻「空の中を飛ばなくてはならない」

一式陸攻「そんな緊張状態を7時間近くも続けないといけないのだ」

一式陸攻「……ボクを言いようのない、不安が襲った」

一式陸攻「そうこうしている内に作戦が始まった」




10 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:06:45 ID:QZSOmzwk


一式陸攻「そういえば、この頃 米軍はいろいろ新しい戦闘機や戦法を使ってた」

一式陸攻「最初は、零戦くんの敵ではなかったはずのグラマンF4Fも」

一式陸攻「この頃には すぐ逃げ出して、なかなか倒せなくなってたし」

一式陸攻「新型戦闘機のグラマンF6FやF4Uコルセアなんて」

一式陸攻「性能面では 多分、自分より上だ、と零戦くん自身が言ってた」

一式陸攻「……守ってもらってて申し訳ないけど」

一式陸攻「頼りない事、言わないでよ、と思った」




11 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:07:49 ID:QZSOmzwk


一式陸攻「……ガダルカナルでは、たくさんの兄弟達が散っていった」

一式陸攻「悔しいけどね、ボクは、米軍に”ワンショット・ライター”なんていう」

一式陸攻「不名誉な あだ名をつけられていた」

一式陸攻「一発でも当たれば火を吹くから、らしい」

一式陸攻「……実際そうだから、なんにも言えないけどね」

一式陸攻「そして、あれ程頼もしかった零戦くんも」

一式陸攻「どんどん落とされていった……」

一式陸攻「結局、ガ島奪還作戦は失敗に終わり」

一式陸攻「ラバウル基地の維持すら難しい程、ボク達は疲弊していた」




12 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:08:48 ID:QZSOmzwk


一式陸攻「正直、ボクも よく生き残れたと思う」

一式陸攻「なにしろ、ガダルカナルに行く度に」

一式陸攻「米軍は どんどん数が増えていったからだ」

一式陸攻「信じられなかった……」

一式陸攻「攻撃しても攻撃しても、全然数が減らない……」

一式陸攻「ホントに恐怖だった……」




13 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:09:47 ID:QZSOmzwk


一式陸攻「それからボクは、輸送任務が多くなった」

一式陸攻「人も物資もたくさん運んだつもりだったけど」

一式陸攻「なんだか前線では全然足りていない様だった……」

一式陸攻「それから、ご飯(燃料)が不味く(オクタン価が低く)なってきた」

一式陸攻「これでは任務にも張り合いがなくなるけど」

一式陸攻「やるしかなかった……」




14 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:11:01 ID:QZSOmzwk


一式陸攻「突然、ボクは内地(日本本土)に戻る事になった」

一式陸攻「なんでも、M1作戦?というのが失敗して」

一式陸攻「南方戦線が維持できなくなったらしい」

一式陸攻「一足先に戻ったボクだったけど……」

一式陸攻「ボロボロになった零戦くんに マリアナやサイパンでボロ負けした事を聞いた」

一式陸攻「……信じられなかった」

一式陸攻「いや……」

一式陸攻「信じたくなかった」




15 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:11:56 ID:QZSOmzwk


一式陸攻「もうダメかな……」

一式陸攻「そう思ったのは」

一式陸攻「零戦くんの話を更に聞いた時だった」



零戦「苦肉の策として、自爆攻撃までしたんだけどな……」



一式陸攻「ボクは、絶句した」

一式陸攻「……それは、神風特攻隊、と呼ばれていた」

一式陸攻「零戦くんの話では、一定の効果はあったらしい」




16 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:12:37 ID:QZSOmzwk


一式陸攻「でも、たったの一回で飛行機を失う作戦は」

一式陸攻「どう見ても異常だった」

一式陸攻「作戦とも言えない作戦……」

一式陸攻「いずれ……ボクにもお鉢が回ってくるのだろうか?」

一式陸攻「そんな事を考えたな、あの時は……」




17 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:13:51 ID:QZSOmzwk


一式陸攻「ボクは輸送任務をこなしながら、だんだん内地でも」

一式陸攻「よく敵機を見かけることが、多くなった事に気がついた」

一式陸攻「迎撃に上がる 陸軍機の飛燕くんと鍾馗くん」

一式陸攻「でも、相手の米軍機は とんでもな速度で、すぐ逃げてしまう」

一式陸攻「銀色に輝く 見たこともない新型戦闘機だった」

一式陸攻「ボクは、ただ、怖かった」

一式陸攻「飛燕くんですら追いつけない戦闘機が、内地をウロウロしてるなんて……」

一式陸攻「ボクは、どうやっても逃げ切れない」

一式陸攻「でも、さらに恐ろしいモノをボクは見てしまった……」

一式陸攻「あれは、まさに”化物”と呼ぶのにふさわしい相手だった」




18 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:15:02 ID:QZSOmzwk


一式陸攻「硫黄島が奪われてから しばらくしての事……」

一式陸攻「ボクはいつもの様に、輸送任務に就いていた」

一式陸攻「ボクに乗っている人の一人が」

一式陸攻「空を、上の方を見上げて『あれはなんだ?』と言った」

一式陸攻「幾筋もの雲を引く 数機の銀色の機体」

一式陸攻「僕の飛べる高度の遥か上を行くそれは」

一式陸攻「雄々しく、悠然と編隊飛行を行っていた……」

一式陸攻「後で迎撃に上がった 飛燕くんに話を聞いてみた」




19 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:16:29 ID:QZSOmzwk


飛燕「化物だったよ」

飛燕「あいつは……いや、あいつらは、高度1万mの上空で」

飛燕「悠々と飛んでいやがった……」

飛燕「こっちは上がるだけで精一杯だってのに」

飛燕「一撃を加えることすら、出来なかった……」



一式陸攻「……飛燕くんは、エンジンが4つも付いた大型の爆撃機と言っていた」

一式陸攻「後で、それがB-29、という名前だと知った」

一式陸攻「どんどん絶望感だけが増していってたな、この頃は……」




20 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:17:44 ID:QZSOmzwk


一式陸攻「それからしばらくは、飛行が怖くて仕方なかった」

一式陸攻「B-29の絨毯爆撃は、恐ろしい程激しくなるし」

一式陸攻「それに付いてくる護衛戦闘機のP-51ムスタングが」

一式陸攻「なによりも怖かった……」

一式陸攻「そう、ボクが前に見た 謎の新型戦闘機」

一式陸攻「それだった」

一式陸攻「…………」




21 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:19:17 ID:QZSOmzwk


一式陸攻「ああ……とうとう出てきたか」

一式陸攻「うっすらと見える黒い点々……」

一式陸攻「多分、グラマンF6Fの大群だろうな」

一式陸攻「対してこちらは」

一式陸攻「護衛無しのボク達兄弟が5機だけ……」

一式陸攻「どうして、こんな事になったんだろう?」



一式陸攻「ボクの最後の任務」

一式陸攻「ボクのお腹に抱えられている『桜花』を」

一式陸攻「敵・機動艦隊空母に命中出来る距離まで運ぶ事」

一式陸攻「……………………」




22 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:20:38 ID:QZSOmzwk


一式陸攻「……………………」

一式陸攻「無理だ」

一式陸攻「『桜花』は重さが2トン近くもあって、ボクが運べる重さの限界ギリギリ」

一式陸攻「そんなんじゃ回避行動すらままならない」

一式陸攻「おまけに護衛戦闘機もなし」

一式陸攻「今、見えているだけでも敵機は40~50機は居る」

一式陸攻「絶対無理だ」

一式陸攻「……ボクの事はいい」

一式陸攻「ボクは戦いの道具として作られたから」

一式陸攻「ボクの代わりは、いくらでも作れるしね」




24 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:21:16 ID:digD7EUw

なんか悲しい結末しか見えない…

(´;ω;)




25 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:21:40 ID:QZSOmzwk


一式陸攻「でも」

一式陸攻「ボクに乗っている人達は違う」

一式陸攻「代えが効かない」

一式陸攻「…………」

一式陸攻「ううん、そうじゃない」

一式陸攻「この人達に死んで欲しくない」




26 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:22:24 ID:QZSOmzwk


一式陸攻「機長の山田のおっちゃんは、着陸の後」

一式陸攻「いつも『ありがとう』と言ってボクを撫でてくれる」



一式陸攻「副操縦士の堀田は、ちょっと乱暴な操縦をするけど」

一式陸攻「機体不良の箇所を誰よりも早く見つけてくれる人だ」



一式陸攻「航海士の袴田は、口が悪くてボクを『ポンコツ!』って怒鳴るけど」

一式陸攻「一番最後までボクに残って、ボクの中を丁寧に掃除してくれた」




27 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:23:17 ID:QZSOmzwk


一式陸攻「爆撃照準をする偵察員の鈴木は、懐に酒がないとイライラして人を殴る奴だけど」

一式陸攻「暇さえあれば照準器を磨いて、仕事は常に完璧に、を心がけていた」



一式陸攻「左右・後方の銃撃士兼整備員の三人は、いつもつるんで悪さをして」

一式陸攻「機長の山田のおっちゃんに怒られていたけど」

一式陸攻「どんな苦境にも めげず、明るくつとめて、機内はいつも賑やかだった」



一式陸攻「そして……みんな家族の話をする時は」

一式陸攻「いつも懐かしそうな、嬉しそうな顔をしていた」




28 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:24:02 ID:QZSOmzwk


一式陸攻「なのに」

一式陸攻「どうしてみんなは」

一式陸攻「こんな馬鹿げた任務をやろうとするの?」



一式陸攻「山田のおっちゃん」

一式陸攻「この前、二人目の子供がやっと立ったって」

一式陸攻「会いたいって、言ってたじゃないか」



一式陸攻「堀田は悔いはない、とか言ってたけど」

一式陸攻「女物のハンカチを大切に持ってる」

一式陸攻「そうだよ、今、握り締めてるそれだよ」




29 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:24:59 ID:QZSOmzwk


一式陸攻「袴田もいつもみたく悪態をつかないで、どうして笑顔で」

一式陸攻「ボクにお礼を言うんだよ……やめてくれ、似合ってない」



一式陸攻「鈴木、ボクにお酒なんて、かけないでくれ」

一式陸攻「何が『お前とは、まだ飲んでなかったな……』だよ」

一式陸攻「ボクが、飲めるわけないだろ」



一式陸攻「銃撃士の三人、昨日まで泣くほど 怖がってたじゃないか」

一式陸攻「どうして、今になって そんなに笑えるんだよ」

一式陸攻「どうして、笑顔で『迎撃よーい!』とか言えるんだよ」




30 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:25:48 ID:QZSOmzwk


一式陸攻「そして……」

一式陸攻「純粋な自爆兵器『桜花』に乗るのは」

一式陸攻「まだ、あどけなさの残る 十代の若者だ」

一式陸攻「彼には、もう迷いは無い様だった」

一式陸攻「……………………」

一式陸攻「ボクは、彼の事は何も知らない」

一式陸攻「何が彼を そうさせるのか……」

一式陸攻「知らないし、知りたいとも思わない」

一式陸攻「ただ、言えるのは」

一式陸攻「死んでいい人間じゃないって事だ」




31 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:26:37 ID:QZSOmzwk


一式陸攻「…………」

一式陸攻「…………ボクも頑張るよ」

一式陸攻「力の限り飛んで飛んで、飛び続けて」

一式陸攻「みんなの気持ちに答えるよ」

一式陸攻「…………どこまで出来るかは、わからないけどね」

一式陸攻「そうさ…」

一式陸攻「無駄にして、たまるものか」

一式陸攻「みんなの気持ちを、生き様を、これまでを」

一式陸攻「無駄になんてして、たまるか」

一式陸攻「それがボクの、一式陸攻の意地だ」




32 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:27:31 ID:QZSOmzwk


一式陸攻「……………………」

一式陸攻「でも……」

一式陸攻「願わくば、平和な空を飛んでみたかったな……」

一式陸攻「敵機にも 銃撃にも 対空砲にも 怯えないで」

一式陸攻「この広く、青い空を」

一式陸攻「どこまでも、どこまでも」



一式陸攻「ただ……真っ直ぐに」




       おしまい




33 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:30:04 ID:bA6nYbxM

感動した




34 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:32:57 ID:digD7EUw

乙…(´;ω;`)

戦争は航空機を飛躍的に進化させたけど…

出来る事なら全ての翼に平和な空を自由に飛ばせてやりたい




36 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:38:17 ID:QZSOmzwk


??「俺の名はB-29スーパーフォートレス!」



B-29「まあ、長ったらしいからB-29でもB公でもいいぜ?」

B-29「好きに呼んでくれ!」

B-29「そう、日本人にとって悪名高き、『あの』爆撃機さ!」

B-29「……………………」

B-29「そうさな、どこから話すかな?」

B-29「うん、まず、俺の生まれは、アメリカのカンザスって所だ」

B-29「ステイツは”カンザスの戦い”っていう呼び方をするが」

B-29「短期間で大量生産された内の一機だ」




37 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:39:15 ID:QZSOmzwk


B-29「俺が実戦配備された頃」

B-29「もう日本は、青息吐息ってやつだった」

B-29「南アジアもマレーシア、フィリピン、台湾、サイパン、パラオを取られて」

B-29「降伏も時間の問題と、兵隊も言っていたな」

B-29「……だが、日本人は”カミカゼ”とか言う」

B-29「爆弾抱えて飛行機ごと突っ込む、自爆攻撃を仕掛けてきた」

B-29「……クレイジーだと、俺に乗ってた機長のボブが言った」

B-29「俺も同感だったね」




38 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:41:01 ID:QZSOmzwk


B-29「さて、それからしばらく カミカゼに悩まされつつも沖縄、硫黄島を落とし」

B-29「いよいよ俺たちの出番となった」

B-29「俺はまず、サイパンから飛び立った」

B-29「目標は敵の軍需工場」

B-29「……とは言うがな」

B-29「敵機対策とは言え、高度1万m上空から正確に狙えるわけがねえ」

B-29「だからボブ達は、目標と思われるポイントに来たら」

B-29「とりあえず、狙いをつけて爆撃していたよ」




39 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:42:07 ID:QZSOmzwk


B-29「これは俺が言ったわけじゃないがな」

B-29「日本の軍事生産拠点は、工場等で限るのではなく」

B-29「一般の家も該当している」

B-29「と、もっともらしい 言い訳みたいな事を 理由に挙げている」

B-29「…………」

B-29「誰が言ったと思う?」

B-29「なんと、カーチス・ルメイ将軍様さ!」

B-29「そう!」

B-29「あの、自衛隊設立に一役買ってくれたあの、な!」

B-29「…………」

B-29「皮肉なもんだよな……」




40 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:43:07 ID:QZSOmzwk


B-29「さて、それからだ」

B-29「日本軍は、俺達にも迎撃の戦闘機を向けてくる」

B-29「まあ、当然だよな」

B-29「…………けどよ」

B-29「高度1万mに上がって来た迎撃機は」

B-29「どれもこれもフラフラ。 ヒイヒイ言ってやがった……」

B-29「それもそのはず」

B-29「なんと過給器を積んでいなかったんだ」

B-29「高高度では空気が薄くなるから、当然燃焼率は下がる」

B-29「それはエンジンのパワーダウンって事だ」

B-29「喧嘩で自分に重りをつけている様な感じかな……」




41 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:44:20 ID:QZSOmzwk


B-29「だけど、もっと驚く事があった」

B-29「それは、武器を外してまで上がって来ていた事だ」

B-29「機体を出来るだけ軽くしてって発想なんだろうが……」

B-29「生憎と俺様は、B-29”超要塞”(スーパーフォートレス)」

B-29「乗組員の命を守る防弾装備はバッチリだった」

B-29「ゼロファイター(零戦)の武器7,7ミリはもちろん」

B-29「20ミリ弾だって至近距離からでないと貫通させられないくらいの余裕はあった」

B-29「…………」

B-29「ん? それからどうなったのかって?」

B-29「そうだな……、一言で言うなら」

B-29「空でも日本人は”カミカゼ”をして来たんだよ」




42 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:45:30 ID:QZSOmzwk


B-29「正直に言う」

B-29「あれは、怖かったね……」

B-29「俺に乗っていた搭乗員もみんな」

B-29「『バカげてる!』って言ってたよ……」

B-29「…………」

B-29「…………」

B-29「俺の隣で飛んでた兄弟に、トニー(三式戦”飛燕”の事)がぶつかった」

B-29「そいつは、翼をもがれて きりもみ落下……」

B-29「…………」

B-29「その時だ」

B-29「トニーに乗ってた日本人が、何か叫びながら ぶつかって行った事に」

B-29「俺は気がついた」




43 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:46:30 ID:QZSOmzwk


B-29「日本人が自爆する時に 何を言っているのか?」

B-29「信じてくれないかも しれないが」

B-29「俺に乗ってた乗組員も気が付いてた奴がいてな」

B-29「俺と同じく、興味を持っていたんだ」

B-29「…………」

B-29「どうせ”バンザイ”だろって誰かが言った」

B-29「サイパンやグァムで、そういう突撃や自決があったと聞いていたから」

B-29「ここもそうだ、と、推測したわけだ」

B-29「…………」




44 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:47:53 ID:QZSOmzwk


B-29「俺は、いつもの様に爆撃任務についていた」

B-29「日本軍は、日に日に弱くなっていった印象があったな」

B-29「相変わらず高高度からの爆撃で」

B-29「そこに上がってくる迎撃機のトニー(飛燕)やトージョー(鍾馗)は」

B-29「変わらずアップアップしていた」

B-29「そうそう」

B-29「俺の自慢は、防弾性能だけじゃない」

B-29「360度 ほぼ全域をカバー出来る、対空性能も売りだ」

B-29「しかも俺は、過給器のおかげで速度600キロ近く出せる」

B-29「上がるだけで苦労している日本軍にとって」

B-29「接触するだけでも大変だったろう」




45 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:49:00 ID:QZSOmzwk


B-29「そんな俺達に向かって」

B-29「三機のトニー(飛燕)が、攻撃してきた」

B-29「俺達は、もちろん迎撃する」

B-29「編隊で組んでた兄弟達の対空機銃が、一斉に火を吹いた」

B-29「トニー(飛燕)は、被弾しながらも 三機が三機とも」

B-29「俺達に体当たりをしようとした」

B-29「…………」

B-29「……結局、一機だけ兄弟を地獄に引っ張っていった」

B-29「残りは、ぶつかる直前に撃墜していた」




46 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:50:14 ID:QZSOmzwk


B-29「そして」

B-29「日本軍のパイロットが、何を言っているのかが、わかった」

B-29「サチコ、キミエ、タロー」

B-29「…………」

B-29「そうさ、何の事はない」

B-29「誰かの名前を叫びながら」

B-29「俺達に向かって来ていたんだ」

B-29「…………」

B-29「乗組員が、それを日本語に詳しい奴に聞いた時」

B-29「俺も含めて静まり返ったよ」




47 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:51:12 ID:QZSOmzwk


B-29「色んな事を考えた」

B-29「それは、パイロットにとって どんな存在だったのだろうか?」

B-29「恋人? 家族? それとも子供か?」

B-29「…………」

B-29「敵わないと知りつつ、無謀な体当たりをするのは」

B-29「いや……」

B-29「勇敢に立ち向かってくるのは」

B-29「それらを守りたい一心だったのか、と」

B-29「みな、口にしなかったが……理解した瞬間だった」




48 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:52:17 ID:QZSOmzwk


B-29「だが、これは戦争だ」

B-29「敵に同情していたら、こちらがやられる」

B-29「家族は俺達にだっている」

B-29「…………」

B-29「でも、出来る事なら 早く降伏してくれ、と」

B-29「誰かが、ポツリとつぶやいた」

B-29「…………」

B-29「下っ端が勝手に戦いを 止められない事を知りつつも、な」

B-29「……かく言う俺も、この時まで”ジャップ”呼ばわりしていた」

B-29「これを機に、俺はそれを止めた」




50 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:53:28 ID:QZSOmzwk


B-29「8月のクソ暑い日だったな」

B-29「護衛にP-51ムスタングが付くようになって」

B-29「高高度攻撃も終了し、低空での爆撃も ほぼやり尽くした頃だった」

B-29「兄弟の一機、『エノラゲイ』が新型爆弾を投下して」

B-29「ひとつの街を灰にしたって聞いた」

B-29「俺はジョークだと思ったね」

B-29「単に俺が、信じたくなかった だけかもしれないが」

B-29「その三日後に、もう一つの街が灰になった」

B-29「…………」

B-29「残念ながら、俺は、その灰になった街を見てしまった」




51 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:55:02 ID:QZSOmzwk


B-29「………恐ろしくなったね」

B-29「”カミカゼ”とは 全く別のベクトルでな……」

B-29「…………」

B-29「そして」

B-29「あのトニー(飛燕)のパイロットがこれを見たら、と」

B-29「考えずには いられなかった」

B-29「…………」

B-29「それから程なくして、日本は、無条件降伏した」

B-29「それだけは、少し嬉しく思った」




52 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:56:42 ID:QZSOmzwk


B-29「それからは、輸送任務が主な仕事になったな」

B-29「運んだのは主に人、だが」

B-29「たまにある、食糧支援物資輸送の時、お菓子の箱を見ると」

B-29「嬉しくなったものだね」

B-29「ん? 何が? だって?」

B-29「乗組員が喜んでたからさ」

B-29「日本の子供達が、これで笑ってくれるぞって言ってな!」

B-29「俺は子供たちに会えないが……」

B-29「兵士のそういう話を聞くのが、何よりの楽しみでな」

B-29「戦いのために作られた俺だが」

B-29「そんな俺にも平和に貢献できる仕事が出来る」

B-29「そう考えたら、楽しくてしょうがなかった」




53 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:57:29 ID:QZSOmzwk


B-29「…………」

B-29「それから、何年後だったかな」

B-29「ん? 5年後?」

B-29「そうか……そんなに後だったか」

B-29「お前さんも知っての通り」

B-29「朝鮮半島で戦争が勃発した」

B-29「…………」

B-29「俺は再び戦場へと駆り出された」




54 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:58:24 ID:QZSOmzwk


B-29「俺は爆撃任務についた」

B-29「ここでも一方的に攻撃するだけ」

B-29「……俺は憂鬱だったな」

B-29「だが」

B-29「それは俺の勘違いだった」

B-29「…………」

B-29「ある日、俺はいつもの様に爆撃任務についていた」

B-29「そいつは突然現れた」

B-29「聞いた事のない爆音を轟かしてな」




55 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 17:59:35 ID:QZSOmzwk


B-29「とんでもない速度だった」

B-29「俺の、俺達の、対空射撃が全然間に合わない」

B-29「護衛のP-51ムスタングも 全く相手にならなかった」

B-29「奴は、この高高度でも問題なく行動し」

B-29「信じられない事に……」

B-29「俺達を どんどん穴だらけに していったんだ」

B-29「撃墜される兄弟もいた」

B-29「自慢の防弾板が、その役割を果たしていなかった……」




56 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 18:00:47 ID:QZSOmzwk


B-29「俺は、命からがら基地に戻ると」

B-29「兄弟にそいつの話を聞いた」

B-29「奴は、ミグ-15 と、いうらしい」

B-29「ドイツの技術を元に ソ連が開発した ジェット戦闘機だという」

B-29「おまけに37ミリ、という大口径の機関砲を搭載しているのだ」

B-29「………俺は絶句したね」

B-29「ともあれ、任務には逆らえない」

B-29「俺も 乗組員も 覚悟を決めて出撃した」




57 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 18:01:47 ID:QZSOmzwk


B-29「…………」

B-29「…………で」

B-29「その結果が、ご覧の有様さ」

B-29「俺は、タフさが売りだからな。 こんな無様な姿になっても」

B-29「何とか 戻ってくる事ができた」

B-29「……残念ながら、スミスとエディーは守れなかったがな」

B-29「…………」

B-29「これで全てだ」

B-29「長いこと 聞いてくれて、ありがとうな」




58 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 18:02:59 ID:QZSOmzwk


B-29「ん? 何でこれで最後みたいな言い方をするのかって?」

B-29「そりゃ最後だからさ」

B-29「俺は、スクラップ処分される事が もう決まっている」

B-29「それに 決して珍しい事でもない」

B-29「俺の前に 何機も解体されているからな」

B-29「…………」

B-29「そんな顔をするな」

B-29「俺は……お前さんの同胞を 大勢殺しているんだぜ?」

B-29「日本風に言えば『因果応報』って奴さ」

B-29「殺しも殺したりってな……」




59 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 18:04:18 ID:QZSOmzwk


B-29「でも、な……」

B-29「出来るなら、もう兵器に生まれたくは ないかな」

B-29「使い方次第でって事はあるが」

B-29「戦後、平和的な任務につけた時が、一番楽しかった」

B-29「どんな戦果も」

B-29「どんな破壊よりも」

B-29「どんな勲章よりも」

B-29「価値があったと、俺は思っている」

B-29「…………」

B-29「ん? 何だ? 生まれ変わるなら 何がいいかって?」




60 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 18:05:31 ID:QZSOmzwk


B-29「そうだな……」

B-29「…………」

B-29「船がいいかな」

B-29「飛行機は、もうういい」

B-29「船になって、世界中をのんびりと進みたいな」

B-29「もちろん大量の物資を持ってな!」

B-29「そして港に着く度に、子供達にお菓子を配って回りたい」

B-29「お菓子を食べて喜ぶ子供達を見ながら」

B-29「俺も笑いたい」



B-29「そんな世の中になると……いいな」



     おしまい




62 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 18:21:07 ID:digD7EUw

再び乙…(´・ω・`)

いつか航空機が人類の夢の為だけに飛ぶ日が来ればいいな…




63 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 18:38:29 ID:TsZtcSLo



人類の夢の為だけに飛ぶ飛行機はもうないよ
あるとすれば、宇宙だけど、宇宙は船だからなぁ
あとはロケットだけど、ロケットを飛行機と言っていいのかどうか




65 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/07(火) 21:29:19 ID:QZSOmzwk

B-29は、第二次世界大戦で使われた米軍の戦略爆撃機です。
爆撃機とは、爆弾を空から落とす為の飛行機で、
当時、B-29は 世界の爆撃機の中でも群を抜いて性能が高かった。
今みたいに、ミサイルの様な物(厳密にはドイツのV2ロケットがミサイルの原型と言われている)は
無かったのでこんな飛行機が兵器としてありました。
現代にもありますけどね。

ちなみに一式陸攻も爆撃機です。 
桜花は、ロケット推進のミサイル。
人間がそれに乗ってコンピューターの役割を果たしました。
もちろん、搭乗者は間違いなく死にます。




67 :以下、名無しが深夜にお送りします 2012/08/08(水) 14:09:03 ID:pQnZ7kIg






引用元
??「ボクの名前は、一式陸上攻撃機」
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1344326135/
[ 2012/08/13 12:00 ] その他SS | TB(0) | CM(0)
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