663:1:2012/08/14(火) 22:29:46.38 ID:DibcIHbAO
最終パート
魔王「おれと来てくれないか、魔法使い」魔法使い「…ああ」
引用元
魔王「おれと手を組め」魔法使い「断る」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1339856123/
664:1:2012/08/14(火) 22:36:05.64 ID:DibcIHbAO
――魔王城
人魚「――つまり、スパイがいたってこと?」
魔大臣「そう。人間側と、反魔王派のふたつだ」
ゴブリン「なんでスパイが今頃見つかったんだ?」
魔大臣「今頃、というより今まで泳がしていた」
側近「魔大臣と一応の検討はつけていたが、いかんせん証拠がなくてな」
魔大臣「証拠なしで疑惑なんかかけたら問題が起こる。だから手を出せなかったんだ」
トロール「証拠がつかめたト」
魔大臣「そういうこと」
665:1:2012/08/14(火) 22:43:31.89 ID:DibcIHbAO
ミノタウロス「ってことは自分からゲロったと」
魔大臣「うーん…当たらずとも遠からず…だな」
側近「自分からゲロらせた、というべきかなんなのか…」
ミノタウロス「?」
側近「本人からのほうが話が早いだろうな。いつまでそこで盗み聞きしてるんだ」
サキュバス「えへへ☆入り時を見失っちゃってた☆」ガチャ
人魚「」イラッ
サキュバス「なんと、サキュバスちゃんのお手柄なんですっ!」バ-ン
ゴブリン「は?」
トロール「どういうこト?」
666:1:2012/08/14(火) 22:48:14.23 ID:DibcIHbAO
魔大臣「サキュバスといったらアレしかないだろ…」
側近「ここまで自分を武器にするとは恐れ入った…」
ゴブリン「ま、まさか」
サキュバス「そっ☆スパイくんたちを片っ端からベッドに呼んで――」
サキュバス「情報と精、搾り取っちゃったよ☆」ツヤツヤ
ミノタウロス「スパイは…どうなったんです?」
ゴブリン「なぜ敬語」
サキュバス「あたし達が本気出したら死んじゃうからね☆一歩手前で止めたよ☆」
トロール「ご愁傷様だネ」
ゴブリン「まったくだ」
667:1:2012/08/14(火) 22:55:54.99 ID:DibcIHbAO
サキュバス「ところで魔王さまは?」
側近「資料を見に行っている」
サキュバス「残念☆魔王さまと遊びたかったなぁ。性的な意味で」
側近「!?」
ゴブリン「ぶぅーっ!?」
人魚「あ、あんた、まさか魔王さまと寝る気!?許さんわ!」
サキュバス「あれれ~おばちゃん、嫉妬~?」
人魚「だ、れ、が、おばちゃんよ!!」バッシャーーン
ゴブリン「ぎゃああぁぁぁぁびっしょびっしょぉぉぉぉぉぉ!!」
魔大臣「真面目に会議できないのかな…」
側近「無理っぽいな」
668:1:2012/08/14(火) 23:00:06.84 ID:DibcIHbAO
――資料室
魔王「」パラッ
司書「……魔王さまが、ここになんて珍しいですね……」
魔王「司書か。気になることがあってな」
司書「……お調べ物ならなんなりと……」
魔王「じゃあ聞くが、全く魔力のない人間に魔法を使わせる薬はあるのか?」
司書「……“人魚”の時の件ですか……」
魔王「よく知っているな」
司書「……情報を集めるのが我の仕事ですから……」
司書「……あるには、あります……」
魔王「どんな?」
669:1:2012/08/14(火) 23:06:16.82 ID:DibcIHbAO
司書「……いくつか入手の難しい薬草を、ややこしい調合で混ぜ作るんです……」
魔王「ふむ。そう簡単にはできないってことか」
司書「……はい……」
魔王「副作用はないのか?」
司書「……すぐにはありません。しかし……」
司書「……服用すると短命に…飲んでから十年生きられるかどうか……」
魔王「…無理矢理に魔力をつくる代償が寿命か」
司書「……はい……」
魔王「なるほどな。礼を言う、参考になった」
司書「……勿体なきお言葉……」
670:1:2012/08/14(火) 23:15:29.25 ID:DibcIHbAO
――街の近く
戦士「久しぶりだな、魔法使い」
魔法使い「何故ここに。牢に入れられたと聞いたが」
戦士「牢から出してもらったんだよ。お前を倒すためにな」
魔法使い「誰に!」
戦士「誰でもいいじゃないかよ……挨拶はここまでだ。行くぞ」ブォン
魔法使い「魔法――!?戦士、お前、薬を飲んだのか!」
戦士「じゃないと勝てないからな。なんにでもすがるさ」
魔法使い「戦士…自分の力で敵に勝つんじゃなかったのか」
戦士「……」
671:1:2012/08/14(火) 23:21:31.83 ID:DibcIHbAO
魔法使い「鍛錬し、己を磨き、最強を目指すんじゃなかったのか」
戦士「……」
魔法使い「あれらはすべて嘘だったのか!」
戦士「もうあの頃のオレじゃないんだよッ!」
魔法使い「……っ」
戦士「勇者を殺し、盗賊を殺し、僧侶を傷つけ、剣士を騙したオレは――」
戦士「そんな、そんな夢なんて語れる身分じゃないんだよ」
魔法使い「……」
戦士「オレは目的を見失った。狂ったオレ残ったものは――お前への恐怖」
魔法使い「私への……」
672:1:2012/08/14(火) 23:27:34.53 ID:DibcIHbAO
戦士「だから、殺り合おうぜ。魔法使い」
魔法使い「……」
戦士「オレはお前を殺して、恐怖を殺して、それから生きる目的を探す」
魔法使い「とんでもなく自己中心的だな」
戦士「なんとでも言え――なぁ、お前はオレを殺したらどうするんだ?」
魔法使い「殺さない。せまい牢に生きて、罪に苦しめ」
戦士「ははっ……相変わらずキツい奴だな」グッ
魔法使い「……」
戦士「覚悟しろ――混血っ!」
魔法使い「……っ、来いよ!我が侭に付き合ってやるよ、戦士!!」
681:1:2012/08/16(木) 22:41:35.39 ID:AFiSOtZAO
顔に打たれるギリギリでくるりと魔法使いは回避した。
魔法使い「っ!」
逃げてもまた追ってきて今度は蹴りを食らいそうになる。
体力は並みの人間より上とはいえ、早めに対処をとらなければいけない。
戦士「逃げてばっかりか!そんなに軟弱なのか!」
魔法使い「安い挑発だな」
魔法陣を戦士の足元に展開させ、爆発させた。
容赦はしない。
そしてこの程度では死なないだろうとも思っている。
戦士「だぁっ!!」
魔法使い「…やっぱりな」
682:1:2012/08/16(木) 22:51:15.51 ID:AFiSOtZAO
ぴんぴんの姿で砂ぼこりの中から姿を現した。
戦士は目の前に魔法陣を展開させ、それに向かって勢いよく拳を叩きつけた。
それは空気を圧縮させた凶器となり魔法使いに迫る。
が、手を払っただけであっさりと消え失せた。
そもそも基礎が違う。
強い魔力をもち十年も修行に明け暮れた魔法使いと、
薬を飲んでわずかな期間で魔法を使う練習をした戦士。
勝敗は明らかだった。
魔法使い(ま、それも魔力だけならな――)
魔法使い(あっちは身体が武器だから)
683:1:2012/08/16(木) 23:01:01.19 ID:AFiSOtZAO
一瞬でも油断すれば重い拳の犠牲になるだろう。
よろめいたらそこで終わりだ。抵抗する間もなくひたすら殴られる。
魔法使い(それは、やだなぁ…)
魔法使い(魔物化をすれば一発で倒せるとは思うが)
それは嫌だった。
間違えて戦士を殺してしまう可能性もある。
魔法使い(あと、通行人も巻き添え、に、………ん?)
違和感。
戦士が動きをとめた魔法使いに今がチャンスと殴りかかってきたが撥ね飛ばした。
周りを見回す。
684:1:2012/08/16(木) 23:04:37.88 ID:AFiSOtZAO
誰もいない。
―――誰も、いない。
魔法使い(戦士にばかり気を取られていたが――これは…)
魔法使い「おい、戦士」
戦士「あ?」
魔法使い「お前は人払いを出来るのか?」
戦士「んなもんするぐらいならもっと技磨いてらぁ」
魔法使い「だよな…そこまで頭が回るほど賢くないよな…」
戦士「なんだとコラ」
うるさいので再び足元を爆発させる。三連発。
魔法使いは熟考し、そして
魔法使い「逃げるぞ、戦士」
685:1:2012/08/16(木) 23:09:20.77 ID:AFiSOtZAO
戦士「は?」
魔法使い「周りの気配を探ってみろ。武器を持った人間が二十名」
戦士「……マジか」
魔法使い「しかも人払いをかけられているのに、だ。嵌められたな」
戦士「嵌められた?つまり…」
魔法使い「どちらかが勝っても、結局は奴等に殺される」
戦士「待てよ、意味わかんねぇよ」
魔法使い「お前は誰から薬を貰ったんだ?正直に言ってくれ」
戦士「……大臣さまだ」
魔法使い「ふん。じゃあ確実に私を殺しにきたか」
戦士「オレは?特に殺される理由ねぇぞ」
686:1:2012/08/16(木) 23:24:38.14 ID:AFiSOtZAO
魔法使い「なにいってんだ」
切羽詰まってきてなんだか笑えてきた。
ひきつった笑みに戦士が引いた。
魔法使い「捨てゴマに決まってんじゃないか」
戦士「………」
怒るかな、と魔法使いは身構えたがそうでもない。
ただ静かに立ち尽くしているだけだ。
戦士「じゃあ」
魔法使い「なんだ」
戦士「オレを捨てゴマ扱いしてる奴らをぶっ殺してから、お前も殺す」
魔法使い「勝手にしろ」
戦士「逃げるか」
魔法使い「そうだな」
杖で上に向かって大きく弧を描く。
周りが大爆発していくつかの悲鳴が生まれた。
687:1:2012/08/16(木) 23:33:38.71 ID:AFiSOtZAO
――魔王城
魔王「あ」
司書「……魔王さま?……」
魔王「いや、ちょっと遠くで誰かが危険なことにあっている気がしてな」
司書(……電波?……)
側近「魔王さま!」バサッ
魔王「どうした」
側近「反魔王派が城内で暴動を起こしているそうです」
魔王「ふむ。分かった」
司書「……我も行きますか……」
魔王「いや。お前はここを守れ、いいな?」
司書「……はい……」ドキドキ
側近(天然タラシ…か…)
706:1:2012/08/18(土) 20:39:24.96 ID:cBmhwRSAO
――魔王城通路
魔王がついた時、すでに暴動は終わっていた。
魔王「ご苦労だったな」
ゴブリン「このぐらいなんでもありませんよ」
ゴブリンの持つ棍棒とトロールの拳にはどろりとした液体が付着していた。
壁や床がそこまで損傷していないところを見ると厳しい戦いではなかったようだ。
メイド達は慣れた手つきで速やかに掃除、補修をしていく。
魔王「生存者は?」
ゴブリン「ふたりです。あ、あと人魚がそろそろ来ます」
魔王「上々だ。いい部下を持った」
ゴブリン「褒めても何も出ませんって」
707:1:2012/08/18(土) 20:44:57.87 ID:cBmhwRSAO
トロールに押さえられている魔物を魔王は目を細めて見やる。
金色の目からは思考が伺えない。
ミノタウロス「魔王さま、来ていたんですね」
ミノタウロスの肩に乗せられて人魚が来た。
ゴブリン「…陸上げ」ボソッ
人魚「鼓膜破るわよ」
ゴブリン「それはやめて!」
ミノタウロス「暴れるな、落ちるから」
ゆっくりと人魚を暴動を起こした魔物の前に降ろす。
尾ひれで床をぱしぱし叩きながら人魚は問う。
人魚「分かってるわよね?覚悟は当然、してきたでしょ?」
708:1:2012/08/18(土) 20:51:30.46 ID:cBmhwRSAO
ふたりの魔物はそれには答えず、ただ恨みのこもった目で見返すだけ。
魔物α「……」
魔物β「……」
人魚はやれやれとため息をつき、こほんと咳払いをした。
白魚のような細い指が魔物αの頬を優しく、強く包み込んだ。
人魚「あなたが首謀者?」
鈴のような軽やかな声。
“人魚”の声は相手を惑わす。つまり、使い方によっては尋問時の武器となる。
それが彼女が魔王に直直に仕える理由だ。
人間のような足が生やせない代わりに声と魔法はずば抜けいる。
709:1:2012/08/18(土) 21:00:31.98 ID:cBmhwRSAO
魔物α「チガう」
人魚「じゃあ他にいるのね。誰かは分かる?」
魔物α「ダイジン」
人魚「それは誰?」
それに答えたのは意外な人物だった。
魔王「……そいつは人間だ」
人魚「え?」
ゴブリン「ん?」
トロール「なんで魔王さまガ?」
魔王「細かい事情は後だ。今は聞き出せるだけ聞いてくれ」
人魚「は、はい」
分かったことはふたつ。
その『大臣』は魔物と人間、両方を引き連れていること。
今、人間の国を掌握していること。
710:1:2012/08/18(土) 21:06:59.04 ID:cBmhwRSAO
魔王「人間のところまでか。なんだか糸が見えんな」
人魚「それは後で考えるとして……もういいですか?」
魔王「ああ」
魔物β「な、なにをするつもりだ!殺すなら早く――」ガタガタ
魔王「焦るなよ。お望み通りにしてやるから」
彼は暴君でもなければ慈悲深くもない。
功績を残した部下にはそれ相応の褒美をやるし、
逆に今回のようなことを起こした部下はしかるべき処置をする。
魔王「人魚」
人魚「はい」
ふたりの魔物以外は耳が聞こえなくなった。魔王が魔法をかけたのだ。
彼が頷くのを見て、人魚はすっと息を吸い、歌い出す。
崩壊の歌を。
711:1:2012/08/18(土) 21:17:52.20 ID:cBmhwRSAO
人魚「~~♪」
魔王「……」
人魚「~♪……」コク
歌が終わった時、魔物αとβは口から泡を吹き、白目で死んでいた。
魔法を解く。
魔王「相変わらず、気持ち良さそうに歌うな」
人魚「私たちにとって歌は命ですもの。例えどんな内容でも」
ミノタウロス「それにしても、魔王さまならすぐに終わらせられたんじゃないんですか?」
魔王「おれは基本的に散らかるからな。メイドに申し訳ない」
メイド達「」オロオロ
ゴブリン(変なところで気遣いするんだよなぁこの方…)
712:1:2012/08/18(土) 21:32:39.20 ID:cBmhwRSAO
魔王「さてと。司書を呼んでくれるか」
ミノタウロス「了解っす……人魚?」
人魚「水、ミズをぉぉぉぉ……」ブルブル
ゴブリン「やばい禁断症状が!」
トロール「近くの水につけてこなくちャ」
バタバタ ワアワア
魔大臣「あれっ?」
側近「全部終わってた」
ゴブリン「今まで何してたん?」
魔大臣「警戒措置をとらせるために城内を手分けして走り回ってた」
ミノタウロス「うん、お疲れ」
713:1:2012/08/18(土) 21:40:27.15 ID:cBmhwRSAO
――街を抜けて
戦士「人払いの結界は!?」ダッダッ
魔法使い「抜けた!」タタタ
戦士「だとするともう誰が敵か分かんなくなるな」
魔法使い「攻撃してきたら敵だ」
戦士「そんぐらい分かっとるわ馬鹿!もういっそ辺りを…」
魔法使い「いいか、みだりに周りへ攻撃するなよ」
戦士「なんでだよ、討たれる前に討たないと」
魔法使い「この脳筋が。仕方がないだろ、一般人なんか攻撃してみろ」
戦士「誰が脳筋だゴルァ」
714:1:2012/08/18(土) 21:45:12.93 ID:cBmhwRSAO
魔法使い「大臣のやつ、嬉々として私たちを犯罪者に祭り上げるぞ」
戦士「ぐっ」
魔法使い「あまり敵は増やしたくないんだ」
戦士「……じゃあ翼生やせよ。強くなれんだろ」
魔法使い「あのな、混血狩りとかあるんだから。結果的には敵増やすだけだろ」
戦士「なんかお前本当にめんどくさいな!」
魔法使い「私がいいたいぐらいだ!」
戦士「ちくしょう、恨むぞ大臣の野郎!」
魔法使い「それには私も同意だちくしょうめ!」
715:1:2012/08/18(土) 21:55:18.85 ID:cBmhwRSAO
――人間の城の近く、酒場にて
マスター「どうやら国王さまが捕まったらしい」
「なんで?」
「嘘だろ。平和じゃねーか」
マスター「いや…風の噂なんだがな。真実かは知りゃせん」
マスター「なんでもフードを被った女が『国王が危ない』と言いに来たそうだ」
「どこに?」
マスター「憲兵隊詰所」
「だから最近せわしないのか」
「季節外れのジョークだろ」
ガタ
マスター「帰るのかい」
剣士「なんか、そういう気分じゃなくてな」
716:1:2012/08/18(土) 22:02:03.77 ID:cBmhwRSAO
カランカラン
剣士「いったい何が起きてるんだか…」
剣士(いやに静かすぎるのも不気味だが)
スタスタ
剣士「ん?」ピタ
フード「……」
剣士(女、か?)
剣士「ここは治安があまり良くないから出歩かない方がいいぞ」
フード「今はそういうことも言ってられない状況なのです」
剣士「え?」
フード「」パサッ
剣士「え、あ、あ、ああっ!?」
僧侶「お久しぶりです、剣士さん」
僧侶「さっそくで悪いのですが――どうか、助けてください」
722:1:2012/08/19(日) 16:11:12.75 ID:og8I/D6AO
剣士「そ、僧侶……?」
僧侶「はい」
剣士「僧侶…」
僧侶「そ、そうですよ。剣士さん?」
剣士「」ポロッ
僧侶「ええっ!?な、なにか失礼なことをしましたか!?」
剣士「違うんだ…ただ、毎日しょうがないとはいえオッサンに囲まれてて…」ポロポロ
僧侶「は、はあ」
僧侶(確かどこかに所属しているんですよね、剣士さんは)
剣士「鍛錬で汗臭い男と剣を交える日々…花のような芳しい香りなどあるはずもなく」グッ
僧侶「」オロオロ
723:1:2012/08/19(日) 16:17:14.35 ID:og8I/D6AO
剣士「そんなところに来たのが僧侶!女神か!天使か!」
僧侶(頭をやられてしまったのでしょうか)
剣士「あの日以来何度教会に行こうとしたか…しかし邪魔になると思い行けず…」
僧侶「き、基本的に来る人は拒みませんよ。お祈りの時以外は、いつでも」
剣士「優しい…やっぱり優しいよ僧侶…」
僧侶「…魔法使いさんには会わなかったんですか」
剣士「だってあいつ絶対『悪いが愚痴には付き合わない』で終わるぞ」
僧侶「…否定できません」
724:1:2012/08/19(日) 16:21:09.21 ID:og8I/D6AO
剣士「で、どうしたんだ?」
僧侶「話が元に戻るまでずいぶんかかりましたね…」
僧侶「出来れば、人のよらないところで話をしたいのですが」
剣士「じゃあ、借りてる部屋があるからそこへ来るか?」
僧侶「」カアッ
剣士(しまった!男の部屋に女の子呼ぶとかどう考えてもアウトだろ!)
僧侶「……剣士さんならいいですよ」
剣士「」
僧侶「元パーティーでしたし、信頼していますし…剣士さん?」
剣士「」
僧侶「立ったまま気絶していますね…」パシパシ
726:1:2012/08/19(日) 20:19:08.37 ID:og8I/D6AO
――剣士の部屋
剣士「今ランプに火をつけるから」シュボッ
僧侶「はい」
剣士「適当に座っていいよ。お茶持ってくる」
僧侶「そんな…悪いです」
剣士「いいからいいから」
僧侶(すっきりした部屋ですね)キョロキョロ
剣士「男の一人暮らしだからろくなもんねーけど」コト
僧侶「ありがとうございます」
剣士「で……なんだい?わざわざ遠くから来た理由は」
僧侶「その前にひとつ」
剣士「ん?」
僧侶「この話を全て信じてくれませんか」
727:1:2012/08/19(日) 20:24:43.32 ID:og8I/D6AO
剣士「分かった。信じよう」
僧侶「助かります」
剣士「こっちからも一つ…憲兵隊のところに言ったのは、僧侶?」
僧侶「……はい。しかしなかなか動いてくれないので、もう剣士さんしかいないと」
剣士「そ、そんなにオレを頼られると困っちゃうなー」テレッ
僧侶「話に入りますね」
剣士「……ハイ」
僧侶「まず、国王さま一家が捕らえられました」
剣士「!」
僧侶「もうお聞きですか?」
剣士「ああ……でもなんで表向きはあんなに静かなんだ?」
剣士「普通は『この国はおいらのだー』とか言うと思うが」
728:1:2012/08/19(日) 20:30:29.33 ID:og8I/D6AO
僧侶「ええ…普通は、その首謀者は大々的に公表するでしょうね」
剣士「時期を見計らっていたりするのか?」
僧侶「当たらずとも遠からず、です。まだ終わっていないのです」
剣士「というと?」
僧侶「この世界には大きく分けて王がふたりいるでしょう?『国王』と――」
剣士「――『魔王』!?次は魔王を捕まえるつもりなのか」
僧侶「単純な話、王をふたり倒せば人間と魔物、両方の王になれますからね」
剣士「バカげてる…国王はともかく、魔王は強いんじゃ」
729:1:2012/08/19(日) 20:36:56.37 ID:og8I/D6AO
僧侶「現魔王は戦慣れをしていないと聞きます」
剣士「というと…」
僧侶「単体なら最強ですが、軍隊を組んで行動をしたことがないとか」
剣士「そう言われればそうだな。魔王直直の戦争は最近ない」
僧侶「不意打ちや罠には恐らく善処できないのではないか、と言われています」
剣士「じゃあ…うまく行けば魔王も…」
僧侶「…はい」
剣士「そいつは誰なんだ?思い上がりも甚だしいそいつの名前は?」
僧侶「…大臣さま、です」
剣士「なっ!?」
730:1:2012/08/19(日) 20:43:13.26 ID:og8I/D6AO
僧侶「…わたしはあの人に近いため、このような話も多くされました」
僧侶「大臣さまは今、自らの望みのために堕ちています」
僧侶「もはやその姿は人間ではありません」
剣士「……」
僧侶「巻き込んでごめんなさい。でも、でも、この国は見えないところで危機に陥ってます」
剣士「危機…」
僧侶「わたしだけじゃもう……。どうか、国を…守ってください」
剣士「――分かっ」
バァン!
剣士「!」ジャキッ
大臣派兵「やっぱり裏切ったなぁ?この雌狐!」
731:1:2012/08/19(日) 20:47:04.51 ID:og8I/D6AO
僧侶「つけられていた…!?」
大臣派兵「教会の人間のくせに尻が軽いな!…まあ」ジャキンッ
大臣派兵「大臣さまのそばにいたてめーは前から気に入らなかったんだよ。ここで死ね」
剣士「後ろに下がってくれ」
僧侶「で、でも……」
剣士(敵は五人、なかなかの強者に見える)
剣士(しかもこの狭さだ。不利すぎる。だが、やるっきゃ――ないだろ)
大臣派兵「行け!」
大臣派兵A「ウオォォォ!!」
剣士「くっ」ガキンッ
732:1:2012/08/19(日) 20:51:17.76 ID:og8I/D6AO
ザシュッ
剣士「ひとり!」キィンキィン
大臣派兵B「ひでぶぅっ」ザシュッ
剣士「ふたり!っと――!?」
大臣派兵C「足元がお留守だ!」
剣士「うおっ」ドサッ
僧侶「剣士さんっ!!」
剣士「そ、僧侶!どけ、お前まで」
僧侶「嫌です!」
大臣派兵C「仲良く死―――あがっ」バタッ
剣士「……え?」
マスター「話は聞かせてもらった!!」
剣士「なんでマスター……」
733:1:2012/08/19(日) 20:58:17.44 ID:og8I/D6AO
「おい剣士が羨ましいシチュエーションしてる」
「ケッ」
マスター「怪我はありませんか、お嬢さん」
僧侶「は、はい」
剣士「どうしてマスターがここに?」
マスター「なんか変な奴いたから追いかけたらここに来た」
剣士「運いいんだなオレ。ってか、マスター強かったんだ…」
マスター「昔は騎士だったからな!酒が好きだから酒場を開いたが」
剣士「っあー…なんかもう、ドッと疲れが」
マスター「まだまだ夜は始まったばかりだ。お嬢さん、最初から話をしてくれないかな?」
僧侶「え?」
マスター「元は国に仕えていた身だ。国がピンチなら助けにいかないと」
僧侶「マスターさん…」
剣士「あれっ、これオレ空気?」
734:1:2012/08/19(日) 21:12:04.59 ID:og8I/D6AO
――魔王城、会議室
司書「……人間界の大臣ですか……」
魔王「ああ。そいつの情報はあるか?」
司書「……しばらくお待ちを……」フゥッ
ミノタウロス「魔王さま。なぜ大臣とかってやつをご存知だったんですか?」
魔王「…なんでだか大臣に嫌われてるやつがいてな。そいつから色々聞いたことがある」
側近(まだ混血の差別は色濃い…わざとはぐらかされましたか)
魔王「魔法を破る矢、魔法を使えるようになる薬。それらを開発したら張本人しい」
736:1 訂正:2012/08/19(日) 21:29:55.26 ID:og8I/D6AO
魔大臣「人間の技術力は底無しですね」
人魚「なんで人間って魔法に憧れるのかしらね」
トロール「なかなか手に入れられないからじゃなイ?」
ゴブリン「憧れって怖い」
司書「……魔王さま……」フゥ
ゴブリン「で、でたァ――――!!」ダキッ
人魚「キャ―――――!!抱きつくな変態!!」
魔大臣「うるさい」
魔王「どうだった」
司書「……外からは人格者、生真面目、忠誠心のある有能な人材……」
ミノタウロス「そんな奴存在していたんだ…」
人魚「でも裏があったじゃない。そんなもんよ」
737:1 :2012/08/19(日) 21:40:05.81 ID:og8I/D6AO
司書「……ただ、親や生まれた場所、また城に勤めるまでどこにいたかは謎……」
魔王「ふむ」
司書「……なにか知られては都合が悪いらしく……」
魔王「都合の悪い過去か。助かった」
司書「……以上です。それでは……」フゥ
ゴブリン「びびったぁー」ドッキドッキ
人魚「びびりすぎ!しゃんとしなさいしゃんと!」
側近「ああもうお前らは…」
魔王(過去になにか罪を犯したのか?いや、ならとうに暴露されててもおかしくない)
魔王(親すらも隠しているとなれば、可能性のひとつに――)
738:1 :2012/08/19(日) 21:46:35.64 ID:og8I/D6AO
バッタァァン!!
人魚「キャアアア―――!?」ダキッ
ゴブリン「ウワアアア――――!?」ダキッ
魔大臣「小心すぎるだろ」
側近「メイド長か。どうした」
メイド長「緊急。メイドが何人か突然倒れました。呪いの魔法かと」
ミノタウロス「なぜ呪いにかかった?」
メイド長「不明。今詳しいものに調査を以来しています」
魔王「……そのメイドたち、暴動起こしたやつらの死体や血に触れたか?」
メイド長「多分。――そこから呪いが?」
魔王「あらかじめ仕込ませていたかもしれんな」
739:1 :2012/08/19(日) 21:53:44.23 ID:og8I/D6AO
魔王「見に行く。案内を」
メイド長「御意」
魔王「お前たちはそれぞれすぐに動かせる兵の数を出しておいてくれ」
側近「!」
魔大臣「というと?」
魔王「その大臣とやらがいつ何をやりだすか分からない」
トロール「仲間呼ブ」
ミノタウロス「こっちも」
魔王「緊張はしておけ。最後まで何もなくてもだ」
魔大臣・人魚・トロール・ゴブリン・ミノタウロス「了解!」
740:1 :2012/08/19(日) 22:02:17.70 ID:og8I/D6AO
ゴブリン「あー!」
トロール「やばイ」
ゴブリン「棍棒でぶん殴っちゃったじゃん!」
トロール「殴っタ」
魔大臣「なんだって!?」
人魚「妙ね。見た感じ呪いにはかけられてないみたい」
側近「トロール族は昔から呪いには強いぞ。ゴブリン族は知らないが」
トロール「良かっタ」
ゴブリン「どうしようどうしよう」
魔王「なにか異変を感じたら早く言え。死なないようにはする」
ゴブリン「ぴぎゃー!」
741:1 :2012/08/19(日) 22:06:48.93 ID:og8I/D6AO
――魔王城通路
魔王「メイド長は血には触れなかったのか?」
メイド長「肯定。触れました」
魔王「何か体調の違和感は?」
メイド長「否定。ありません」
魔王「ふむ。では何故爪を伸ばす」
メイド長「不、明。あ、れ?からだ、の制御が、いきなり」カクカク
魔王「どこかで操られてるか」
メイド長「危険。魔王さま、逃げてくださいま――」ガク
魔王「…ほう。意識までもか」
メイド長「ハハ!はじめましてだな、魔王サマ」
魔王「誰だ」
742:1 :2012/08/19(日) 22:15:04.13 ID:og8I/D6AO
メイド長「そっちはもう首謀者が誰だか分かってるんじゃないか?」
魔王「大臣とか言ったな」
メイド長「大当たり。あいつらが吐いてるとは思っていたがね」
魔王「何が目的だ」
メイド長「そんなもの、あってないようなものだ。違うか」
魔王「知らんな。呪いの魔法をかけたのも貴様か」
メイド長「頼もしい私の部下だ。あれ、無理矢理解除すると死に至るからな」
魔王「なに?」
メイド長「人間界の城にご招待しよう。そしたら呪いも解こう」
魔王「ふん。もっと上手い招待をするべきだな」
743:1 :2012/08/19(日) 22:24:29.73 ID:og8I/D6AO
メイド長「いいのか?来なかったらお前の可愛い部下は酷い苦しみの中死ぬぞ」
魔王「はん。三流の脅し文句か」
メイド長「本気だ。お前みたいなたかだか百歳二百歳の若造にはまだ未経験だろうがね」
魔王「……」
メイド長「さぁ宣戦布告もすんだ。ああ、残念ながら私が呼んだのは魔王だけだから、」
魔王「一人で来いってことだろう?そのぐらい予想できるさ」
メイド長「なら話は早い。来いよ、じゃないと…」
魔王「チョップ」ビシ
メイド長「鈍痛。わたくしはいったいなにを?」
魔王「何も。早く行こう、時間がない」
744:1:2012/08/19(日) 22:34:05.39 ID:og8I/D6AO
――魔王城医務室
医師「呪いです。無理矢理解除したら、命に関わるほど強力な」
魔王「嘘ではなかったか」
医師「はい?」
魔王「なんでもない。こちらの話だ」
医師「解決を急いでいますが……どうしたらいいものか」
魔王「なんとかする」
医師「魔王さま?」
魔王「なんとかしてくる」
745:1:2012/08/19(日) 22:41:47.33 ID:og8I/D6AO
――会議室
側近「魔王さま!ゴブリンが!」
魔王「…どうした?」
トロール「いきなり倒れて…意識が戻らなイ」
人魚「突然、突然に魔法が…巧妙な時限制の魔法だったみたいで…」
魔王「昏倒の呪文か…おい、ゴブリン」
ゴブリン「」
魔王「起きろ。聞こえるか、起きろ」
人魚「……っ」
ミノタウロス「チクショウ…!」
側近「……」
魔王「…彼を医務室に。おれは出掛けてくる」
側近「魔王さま、お一人で、ですか?」
魔王「ああ」
746:1:2012/08/19(日) 22:50:04.82 ID:og8I/D6AO
魔王「兵は側近、魔大臣で指揮をしろ」
側近「…は?」
魔大臣「えっ?」
魔王「もしも敵からおれの名前を出されても惑わされるな」
人魚「魔王さま!?いったい何を!」
魔王「なに、大切な部下たちに手を出されたお礼にいくんだよ」
ミノタウロス「大切な部下って、え、」
トロール「自分たチ?」
魔大臣(な、なんか嫌な前触れのデレかただな…)
魔王「ゴブリンの扱いは丁寧にな。お前らも無理をするな」
人魚「……ま、待って下さい!なんで今、そんなことを…」
魔王「なに、ちょっと遊びに行ってくるだけだ」バタン
側近「魔王、さま…」
747:1:2012/08/19(日) 23:04:01.31 ID:og8I/D6AO
――魔王城通路
サキュバス「魔王さま!」
魔王「サキュバスか。非戦闘員は安全な場所へ行け」
サキュバス「どこにいくの!?どうして皆を頼らないの!」
魔王「危険だ」
サキュバス「あたしたちは喜んで危険に飛び込むわよ!」
魔王「おれが良くない」
サキュバス「あなたが優しいのよ!魔王はもっと残酷であるべきだから!」
魔王「ふん。30年前、敵味方諸とも吹き飛ばしたおれが優しいと?」
サキュバス「優しいわよ…優しくなかったら、孤児になったあたしを城にいれてくれなかった」
748:1:2012/08/19(日) 23:09:05.52 ID:og8I/D6AO
魔王「……そんなこともあったな」
サキュバス「いかないで。事情はあるだろうけど――みんなを率いて戦って」
サキュバス「お願い、一人で戦わないで」
魔王「おれは一人じゃない。お前らがいるかぎりな」
サキュバス「またそんな…」
魔王「それに部下に手を出されたんだ。このまま黙っていられない」
サキュバス「あなたは…優しくて、脆くて、鈍感」
魔王「そうか」
サキュバス「でもそういうところも好きなのよ、魔王さま」
魔王「すまんな。他に、特別な相手がいるんだ」
サキュバス「なら仕方がないわ。寝取りは嫌いなの」
749:1:2012/08/19(日) 23:14:59.92 ID:og8I/D6AO
魔王「でも気持ちは嬉しい」
サキュバス「すっぱり断りなさいよ☆」
魔王「じゃあ行ってくる」
サキュバス「ええ。――ちゃんと帰ってきてね、お兄ちゃん」
魔王「懐かしいな」
サキュバス「あの頃は偉いひととは思わなかったからね~」
魔王「じゃ」
蝙蝠「トウッ」パタパタ
魔王「皆によろしく伝えてくれ」シュンッ
サキュバス「……」
サキュバス「えっ、今なんかいた?」
756:1:2012/08/20(月) 21:39:18.80 ID:f/AiJ6RAO
――どこか
魔法使い「そうだ、城へ行こう」
戦士「軽いな」
魔法使い「状況が不明なところに乗り込むのは気乗りしないが仕方ない」
戦士「さすがに城はまだ大臣の手に落ちてないんじゃないか?」
魔法使い「どうなんだろうな。大臣はかなり汚い奴だから」
戦士「お前本当に嫌いなんだなあいつ」
魔法使い「戦士のほうがまだ二割はマシだ」
戦士「そうか、やっぱり予定を変更してここで殺るわ」ブォン
758:1:2012/08/20(月) 21:46:29.70 ID:f/AiJ6RAO
戦士「待て。自分で話しときながらそれか。負ける。絶対負ける」
魔法使い「“戦士”だろ?負けるなんか思うな」
戦士「二対何百何千の兵で勝てると思ってんのかアホ!」
魔法使い「全てに立ち向かわなくてもいいじゃないか」
戦士「へ?」
魔法使い「なにをそんな几帳面に戦う必要がある?」
戦士「これだから魔王討伐の時からお前が苦手だったんだよ…」
魔法使い「なんだ、苦手だったのか」
戦士「お前の料理もろもろにな」
759:1:2012/08/20(月) 21:51:31.35 ID:f/AiJ6RAO
戦士「あのな、“戦士”は戦うことが誇りなんだ。戦わない道を選択するなんて恥だ」
魔法使い「じゃあいますぐその誇り捨てろ。まあ戦士のばあい埃被ってるだろうが」
戦士「無茶ぶり言うな!あとそのうまいこと言ったって顔やめろ!むかつく!」
魔法使い「冗談はともあれ、誇りに縛られてたら死ぬぞ。特に今回は」
戦士「……」
魔法使い「何も考えず戦えないんだよ。殴りあうだけじゃ駄目だ」
魔法使い「それに大臣はさっきも言ったように汚い奴だ」
760:1:2012/08/20(月) 22:02:27.25 ID:f/AiJ6RAO
戦士「……分かったよ!そんな説教しなくてもいいじゃねーか」
魔法使い「悪い」
戦士「しかし本当に二人だけで行くつもりか?」
魔法使い「……助っ人が欲しいところだがな」
戦士「ちょっと待ってみよう。この流れならもしかしたら助っ人が来るかもしれない」
魔法使い「そうだな」
一分経過。
戦士「んなわけねーだろうが!!」
魔法使い「言い出しっぺのくせに何を言っているのやら」
戦士「都合良く助っ人なんか来るわけないよな!」
761:1:2012/08/20(月) 22:09:55.37 ID:f/AiJ6RAO
魔法使い「追っ手は来たけどな」
戦士「無駄話しすぎた」
魔法使い「うまくひっかかるといいが」トントン
戦士「……杖、新しくしたのか?」
魔法使い「ないと色々困るし」
前方を見やれば追っ手がかけてくる。
戦士「おい、やばいんじゃ…」
魔法使い「大丈夫。走っていれば弓矢は使えないし」
距離、五十メートルになって。
魔法使いが一段と強く杖で地面を叩いた。
がばっと地面に穴が開く。
追っ手は抵抗できずに飲み込まれて消えた。
762:1:2012/08/20(月) 22:15:30.82 ID:f/AiJ6RAO
戦士「……死んだのか?」
魔法使い「いいや。数日後にここから吐き出されるよ」
戦士「お前、すげー魔法使うんだな」
魔法使い「そりゃどうも。じゃあ、城に行こうか?」
そういってずりずりと地面に円を書き始めた。
戦士「なにしてんだ…?」
魔法使い「魔法との相性が悪くて思うままに使えないんだよ」ガリガリ
魔法使い「だからこうやってわざわざ陣を地面に書いているわけ」ガリガリ
魔法使い「最近魔法陣でも正確に転移できる魔法を教わったし」ガリガリ
戦士「…何か大変だな」
魔法使い「武器との相性みたいなもんさ」
763:1:2012/08/20(月) 22:21:09.48 ID:f/AiJ6RAO
魔法使い「できた」
戦士「大丈夫なんだろうな」
魔法使い「いけるだろ、多分」
戦士「不安すぎる」
魔法使い「位置的には城のそばに転移するぞ。いいな」
戦士「その方がいいだろ。なあ、これって衝撃とかあ―――」
シュンッ
764:1:2012/08/20(月) 22:49:00.16 ID:f/AiJ6RAO
――人間の城、門前
魔王「……」シュンッ
魔王「ここか」
城門を一睨みして、魔王は歩き出した。
よく“魔王”の外見を思い浮かべるとき、人間が考えがちなマントはない。
そのため一見すると、真っ黒な出で立ちの青年が城へ歩いているように見えなくもない。
魔王「……」
夜風が彼の髪を荒らす。
もうじき月が真上にかかるだろう。
胸元の真珠に気づいて魔王は苦笑をもらす。
魔王「まだ返してなかったな」
それきり表情を消し去って、彼は闇へ消えた。
765:1:2012/08/20(月) 22:58:01.05 ID:f/AiJ6RAO
だが。
彼は多くの騒ぎの中で失念していた。
“魔王”は無敵だ。どんな傷もたちどころに治す。
そんな治癒効果すら、もっといえば“魔王”そのものの力を
封じ込めてしまう代物があることを頭の隅に置きっぱなしにしていた。
それが今入った城にある。
これから会うことにある大臣がそれを持っている。
――魔王が“勇者”と一度でも斬り結んでいれば。
それ専用の対策をとっていただろう。
だが彼は若すぎたのだ。“魔王”として。
すなわち、その名は。
766:1:2012/08/20(月) 22:58:49.51 ID:f/AiJ6RAO
―――『勇者の剣』
767:1:2012/08/20(月) 23:01:10.51 ID:f/AiJ6RAO
…
蝙蝠「ハッ」パチ
蝙蝠「チョットショウゲキガ、ツヨカッタヨ」
蝙蝠「アレ。マオウサマ、イッチャッタノカナ?」
蝙蝠「オイカケナクチャ。ボク、コノアタリシラナイシ」
蝙蝠「スッカリヨルダネ。ヨルハ、スキ」パタパタ
蝙蝠「マオウサマー」パタパタ
775:1:2012/08/21(火) 22:26:59.00 ID:H1rROV4AO
――酒場
僧侶「……と、いうわけなんです」
マスター「なるほど」
僧侶「信じていただけるのですか?」
マスター「先ほどの奴等を締め上げたら同じ事を言っていたからね」
僧侶「締め上げた?」
剣士「気にしなくていい。マスターと仲良くなりたいなら」
僧侶「は、はぁ」
剣士「にしても大臣はなにをしようとしているのやら」
僧侶「それはわかりません。力を…とにかく、強い力が欲しいようでした」
マスター「力ねぇ」
777:1:2012/08/21(火) 22:40:00.03 ID:H1rROV4AO
「国王とかやばいやん」
「魔王も狙われてるんだろ?すげーな」
「早くなんとかしないと」
剣士「表だって何もされてないんじゃ手の出しようがない」
マスター「だな。しらばっくれられたらそこまでだ」
「目つけられるかもだしな」
「大人ってめんどくさい」
ザワザワ
剣士「あ、じゃあこうしよう」
僧侶「?」
剣士「魔物が城を襲おうとしているって偽の情報を言えばいい」
マスター「ほう」
剣士「そのために警備してるんです→内部探りという感じで」
778:1:2012/08/21(火) 22:50:08.99 ID:H1rROV4AO
マスター「うまくできるかどうかは分からないが…やってみる価値はある」
「なんたって国王が危機だしな」
「王女さん大丈夫かな」
僧侶「で、でもそれだと魔物の怒りを…」
マスター「なんなら話せばいいさ、さっきの話を」
僧侶「聞いてくれるでしょうか…」
剣士「賭けだな。魔王も大臣に侮辱されたも当然だから攻撃ぐらいはするかも」
マスター「ついでにこちらの被害も未知数、と……」
僧侶「……」
剣士「とりあえず、ありったけの兵力を集めよう。明日の朝までにだ!いいな!」
779:1:2012/08/21(火) 22:54:53.58 ID:H1rROV4AO
「おう!」
「連絡してくる」
「憲兵隊にも」
剣士「表向きは『魔物に攻められそうだから』な。誰が密告するか分からないから」
剣士「武器の手入れと食料もだ。いつ何がおこるか分からないぞ!」
「了解!」
「行くぞ!」
僧侶「…剣士さん、人望ありますね」
マスター「あれでも隊長候補だ。変に抜けているのが不安だがね」
僧侶「そうなんですか…」
僧侶(ちょっとかっこいいです、剣士さん)
僧侶(ところで魔法使いさんは今なにをしているのでしょうか…)
780:1:2012/08/21(火) 23:01:17.42 ID:H1rROV4AO
――城のそばの森
シュンッ
魔法使い「少し遠すぎたか」
魔法使い「ふむ……移動にてこずりそうだな。城につくまで何があるか」
魔法使い「戦士はどう思う?」
魔法使い「戦士?」
戦士「オロロロロロロロ」
魔法使い「なに吐いているんだ。武者震いならぬ武者吐きか」
戦士「ちげぇ!衝撃がやばすぎて気持ちわオロロ」
魔法使い「あのぐらい耐えろよ」
戦士「逆によく耐えられるな!毎日やったら死ぬわ!」
魔法使い「そうか、初心者にはきつかったか。私は耐性があるんだろうな」
781:1:2012/08/21(火) 23:07:30.79 ID:H1rROV4AO
戦士「移動は…確かにめんどいな。行くまでに襲撃されたら困る」
魔法使い「もう一度転移か」ガリガリ
戦士「待った、それで敵の中に放り込まれてもしばらく動けないぞ」
魔法使い「…そうか。無理矢理身体動かせと言っても、動かないもんは動かない」
戦士「地道に行くしかないな」
魔法使い「その前に」
戦士「ああ」
魔法使い「――周りを囲んでいる連中を始末しないとな」
戦士「そうだな」
782:1:2012/08/21(火) 23:18:23.98 ID:H1rROV4AO
戦士「この森に元々住んでいる魔物じゃないんだな?」
魔法使い「違う。この森は小さい魔物がほとんどだから
ボンッと。
当たったら爆散しかねない攻撃が四方から二人に向かってくる。
魔法使い「触るなよ!」
魔法使いも光の球をいくつか出現させ、当てさせた。
強い風と砂ぼこりが舞う。
戦士「来る!」
砂ぼこりを掻き分け、敵が踊りかかってくる。
見る限り全員魔物だ。
魔法使い「了解!」
背中あわせになり戦士は拳で、魔法使いは強化した杖で相手を砕いていく。
783:1:2012/08/21(火) 23:23:13.57 ID:H1rROV4AO
殴り、叩き、突き刺す。
悲鳴と肉が潰れる音が断続的に響いていた。
魔法使い「ようやく半分だ」
戦士「気を抜くな」
足下からきた魔物を蹴り飛ばす。
魔法使いは魔法で石を浮かし、執拗に魔物へ当てていく。
数は減ってきた。
しかし疲労は重なっていく。
戦士「あっぐぅ!?」
魔法使い「戦士!?」
戦士「足をぶっ刺された…くそったれ!」
何かを殴打する音が背中から聴こえる。
しかし魔法使いも魔法使いで絶え間なくくる攻撃で振り向けない。
784:1:2012/08/21(火) 23:28:23.64 ID:H1rROV4AO
戦士「くっそ…」
戦士(足の感覚がほとんど消えた。立つのでやっとだ)
魔法使い「悪い、あとで薬草を渡す、今は辛抱してくれ!」
戦士「……わぁったよ。っと」
首筋に噛みついてくる魔物に容赦なく頭突きをした。
足の血が止まらない。
間隙を縫って布で止血を試みたが、深すぎるようだ。
戦士「……」
魔法使い「っ」
魔法使いが息を飲む。
魔法使い「最後の切札か!」
見れば、残った五体が突き出した手に魔力を込めていた。
785:1:2012/08/21(火) 23:34:17.53 ID:H1rROV4AO
邪魔をしようと杖を振り、
魔法使い「っぐ」
五体のうちの一体が攻撃をしかけてきた。
魔法使いの腕と手の甲が裂けた。
直後に二体が崩れ落ちたが、残りの魔物たちは気にするようもない。
いや、むしろ。
今がチャンスとばかりに、飛びきり大きい攻撃の球を送り出す。
魔法使い「――させるか」
応戦。
二つの球はぶつかり合い牽制しあう。
魔法使いがさらに力を放出すると魔物側の球は圧されていく。
あともう一押し、というところで。
786:1:2012/08/21(火) 23:39:04.14 ID:H1rROV4AO
魔物「魔王、捕ラエタ」
魔法使い「―――は?」
瞬間、集中力が途絶える。
それに気づいたころにはもう魔法使いの目前に死が迫っていた。
戦士「魔法使い!!」
横から強い力で押された。
堪らずに数メートル吹っ飛ぶ。
振り向いて、彼の姿を認める。
球に真正面から立ち向かう戦士を。
魔法使い「せん――」
ゴウッという音がやけに耳に焼き付いた。
787:1:2012/08/21(火) 23:44:18.51 ID:H1rROV4AO
轟音。
強い光があたりを照らす。
一通り落ち着いたあと、魔法使いは唇を震わせながら呼ぶ。
魔法使い「戦士……?」
砂ぼこりを手で払うように振ると、すぐさま視界が透明になる。
人間が横たわっていた。
魔法使い「うそ」
両腕の肘から下がない。
あちこちが焼け焦げ、悲惨な有り様だった。
魔法使い「戦士!なんで!」
胸元を叩いて呼びかける。
薬草でどうにかなるレベルの損傷ではない。
戦士「………い…」
魔法使い「戦士!」
戦士「あ……オレ、原型残っ……さすが、強化……魔法…」
788:1:2012/08/21(火) 23:47:54.24 ID:H1rROV4AO
魔法使い「なんで…なんで私を!」
戦士「女に……戦わせん……の、恥、だから」
魔法使い「誇りのためか!?でも、結果がこれだ馬鹿!」
戦士「……オレ、さぁ……勇者、になりたくて………」
戦士「でも、なれなくて……さ」
魔法使い「……」
戦士「あんな…こと、した……償い……」
魔法使い「私を殺さないのか。大臣を殺さないのか!?」
戦士「足……も、ダメだったから。動くの、無理……だった」
魔法使い「……」
戦士「足手、まとい、よりは、いいだろ?」
789:1:2012/08/21(火) 23:50:57.05 ID:H1rROV4AO
魔法使い「馬鹿……お前なんか見とりたくなかった」
戦士「オレも……できれば、王女、さまが、良かった、なぁ……」
魔法使い「あはは…わがままなやつ」
戦士「なぁ……オレから、必要なの、持ってけ…」
魔法使い「ああ」
戦士「埋めなく……いいから…体力、使う」
魔法使い「ああ」
戦士「勝てよ」
魔法使い「必ずだ」
戦士「……僧侶と、剣士にも……よろしく」
魔法使い「分かった」
戦士「………」
魔法使い「………」
魔法使い「止まった」
790:1:2012/08/21(火) 23:56:44.15 ID:H1rROV4AO
見渡せば、魔物が増えていた。
ちらほら人間も見える。
騒ぎで集まってきたらしい。
魔法使い「……もっと早く魔物化していれば良かったな…」
魔法使い「でもなんでか……感情が高ぶらないとなれないんだよ、戦士」
魔法使い「ごめんな。都合が悪いやつで、ごめん」
翼が少女の背から生える。
鷲の大きく獰猛な翼が。
魔法使い「一人で逝くのは寂しいだろ?すぐ賑やかにしてやるから」
一対数十。
圧倒的な数の中、魔法使いは笑った。
791:1:2012/08/22(水) 00:03:40.90 ID:aUuKbk4AO
――酒場
僧侶「あ」
剣士「どうした?」
僧侶「いえ…なにか、今、感じまして」
剣士「感じた?」
僧侶「…『戦いの中死ぬなら本望だ』」
剣士「……それ、戦士が昔言ってたやつ?」
僧侶「あれ、そうですね。なんで突然こんなことを…」
剣士「……」
僧侶「……」
剣士「…なんか、胸がざわめく夜だ」
僧侶「ええ…」
802:1:2012/08/22(水) 22:59:19.66 ID:aUuKbk4AO
――城のそばの森
魔法使い「はぁ……はぁ……」
血まみれだった。
彼女自身の血と彼女のではない血で。
まだ息のある人間を見つけ、胸ぐらをつかんで中吊りにした。
魔法使い「教えろ。魔王が捕まったとはどういうことだ」
生き残りの兵「ひっ…自分は何も知らねぇ!ただ、魔王を誘き寄せたとは聞いたが…」
魔法使い「誘き寄せた?一体どうやってだ」
生き残りの兵「わ、分かんねぇ……本当だよ、分かんねぇんだ…」
魔法使い「そうか」
そのまま落とした。
「ぐぇ」と足下から声がしたが気にしない。
803:1:2012/08/22(水) 23:04:23.57 ID:aUuKbk4AO
生き残りの兵「頼むよ……見逃してくれないか」
魔法使いの足首にすがって人間は言う。
魔法使い「……」
生き残りの兵「妻子がいるんだよ……」
魔法使い「勝手にしろ」
足首に絡まる手を振り払い、完全に興味をなくして踵をかえした。
生き残りの兵「なぁんてな化物がァァァァァ!!」
隠し持っていたナイフで人間が魔法使いの首筋を狙う。
素早い動きで彼女は振りかえると、ナイフをかわしつつ右手を固めて顔面を殴った。
湿った嫌な音がした。
804:1:2012/08/22(水) 23:09:26.15 ID:aUuKbk4AO
魔法使い「これで終わりか」
魔法使い「みんな死んじゃった」
感情もなく呟くとそのまま崩れ落ちた。
魔法使い(まおう……)
魔法使い(まおう、あぶないなら、たすけにいかなきゃ)
しかし手はおろか身体に力が入らない。
魔法使い「バッカだなぁ――体力使い果たした…」
夜風がふいて魔法使いの短い髪を優しく撫でた。
静かだった。
??「うわ、すごいな」
意識のどこかで声が響いた。
805:1:2012/08/22(水) 23:16:44.73 ID:aUuKbk4AO
魔法使い「……あなた、は」
黒髪の男「よー」
魔法使い「こんばんは…」
黒髪の男「魔力使い果たしたな。頑張りすぎだろ」
魔法使い「はは…」
黒髪の男「力が欲しいか」
魔法使い「怪しい匂いしかしないのでいいです」
黒髪の男「単純に魔力だよ、魔力」
魔法使い「いいです」
黒髪の男「大丈夫大丈夫。――ちっと俺の魔力を渡してほしい奴もいるし」
魔法使い「話だけは聞きましょう」
黒髪の男「目が虚ろなんだが。生きてるか?おーい」
806:1:2012/08/22(水) 23:22:38.33 ID:aUuKbk4AO
魔法使い「行かなきゃ…」ググ
黒髪の男「そんなボロボロでか?」
魔法使い「国が……魔王が……」グググ
黒髪の男「やめな姉ちゃん。死ぬぜ」
魔法使い「え……性別」
黒髪の男「俺にはお見通しだよ。なんでもな」
魔法使い「……」バタッ
黒髪の男「あ、死んだ」
黒髪の男「……生きてた生きてた、びっくりした」
黒髪の男「少し寝てろよ姉ちゃん。まだ始まってすらないぜ」
黒髪の男「っと、傷口失礼……」
指で皮膚を噛みきり、魔法使いの傷口と接触させる。
魔法使い「ん……」
黒髪の男「いま渡した魔力の半分は魔王にやってくれ」
魔法使い「あなたは…誰なんですか?」
807:1:2012/08/22(水) 23:29:05.57 ID:aUuKbk4AO
質問しながら意識が沈んでいく。
手足の隅々が暖まっていくのをぼんやり知覚する。
本当に魔力を流し込んでいるのか。
黒髪の男「知りたいか。知りたいよな」
なにか言っている。
でももう眠気が限界だ。
月を背にしたその姿がとても誰かにそっくりだった。
その誰かの名前もモヤがかってきている。
それでもその誰かの、あの金色の瞳が見たかった。
黒髪の男が何やら言ったとき、魔法使いの意識は深く落ちた。
黒髪の男「俺はほんの少し前まで魔物の国を治めていた、王だよ」
808:1:2012/08/22(水) 23:34:48.13 ID:aUuKbk4AO
――同時刻、魔王城で
魔大臣「魔王さまが……?それは本当か?」
鳩「クルッポー」
魔大臣「勇者の剣…!?そういやあんなもんあったか」
鳩「クルッポー」
側近「兵の収集を頼む。女子供はいいから」
鳩「クルッポー」バサッ
トロール「するト?」
人魚「…どうする?」
魔大臣「決まっているだろう」
側近「人間の城に行くぞ」
809:1:2012/08/22(水) 23:44:44.41 ID:aUuKbk4AO
――人間の城、牢
国王「…………で」
魔王「なんだ」
国王「何やっとるんじゃお主は…」
魔王「捕まった」
国王「魔王はそんなにあっさり捕まるものか!?」
魔王「傷口に響く。もっと静かに話してくれ、人間の王よ」
国王「激戦と聞いたが……」
魔王「おれ対二百な。しかも対魔物用の矢」
国王「……」
魔王「不意討ちの不意討ちの不意討ちで脇腹にこれ――『勇者の剣』を刺されてな」
国王「……」
魔王「後は分かるだろ」
国王「いや、分からん」
810:1:2012/08/22(水) 23:51:01.40 ID:aUuKbk4AO
魔王「理解力のないじいさんだな」
国王「どうして畏怖されてきた魔王が全身ボロボロなのか理解できんのじゃ…」
魔王「簡単だよ。刺されたとたん、力をほぼコイツが封印してただの人間当然となって」
魔王「残ってた十二人に殴る蹴るされていた。ざっと二時間」
国王「ということは最後の力を振り絞ったんじゃな…」
魔王「その頃には疲れていたしな」
国王「しかし、さっきお主を連行してきたのは大臣含め六名じゃったが」
魔王「四人死体にして三人足もいでおいたからな」
国王「うわぁ」
811:1:2012/08/22(水) 23:54:58.09 ID:aUuKbk4AO
魔王「あー、でもしくったな。あいつら上手くやれてるかな」
国王(すごく人間味があるのう……)
魔王「じいさん、これ抜いてくれないか」
国王「互いに鎖に繋がれてるから無理じゃな」
魔王「おれとか身動ぎすらできない。待遇の改善を訴えるべきだな」
国王「……」
魔王「というよりこれ、後ろに突き刺してるのか?馬鹿か?抜けないだろ」
国王「しかし不思議じゃな……なぜ“勇者”でもないのに使えたのか」
812:1:2012/08/23(木) 00:04:13.63 ID:q5pwSgPAO
魔王「触るだけならできるヤツもいるだろうさ。人間に関わらず魔物だって」
国王「そ……そうなのか」
魔王「ただ使えるかは別問題だ。今回は魔法を使って飛ばしてきやがった」
国王「とんでもない戦闘じゃったんだな……」
魔王「まあな。魔力封じられてるから傷も治らない。不便だ」
国王「…“勇者”はよくこんな奴と戦えるのう…」
魔王「だったら送り込むのやめろよ。前代国王は“勇者”を送り込まなかったぞ」
国王「新しい“魔王”になったって聞いたから早めに潰そうと…」
魔王「“勇者”のほうが先に潰されたが」
813:1:2012/08/23(木) 00:14:46.36 ID:q5pwSgPAO
国王「あれ、一体何が問題だったんじゃろうな……」
魔王「人材」
国王「……」
魔王「さらに言うなら、国王の判断ミス」
国王「やめてくれ!こんなことになってるから凹んどるんじゃて!」
魔王「暇だから仕方ない」
国王「暇だから人の心を抉っとるのか!」
魔王「いいじゃねぇか。ボケ予防になるんじゃないか」
国王「逆にストレスばかりが溜まりそうで嫌なんじゃが」
魔王「王はそんなもんだろ」
国王「だれのせいじゃだれの」
見張り(仲良しだなー)
814:1:2012/08/23(木) 00:20:02.17 ID:q5pwSgPAO
魔王「――お」
国王「?」
魔王「明るくなるにつれて、色んな気配がしてきたな」
国王「分かるのか…?魔力封じられているのに」
魔王「こんなもん魔力を使うまででもない。生まれつきだ」
国王「……」
魔王「ふん。さて、おれを助けにきてくれる者はいるのかどうか」
魔王「それに誰が勝者となるのか――楽しみだな」ニィ
国王「」ゾク
魔王「あ、いてっ。頬が腫れてるんだった」
国王「………………」
815:1:2012/08/23(木) 00:25:31.83 ID:q5pwSgPAO
――城の前
僧侶「夜明けですね……」
剣士「長い戦いになるぞ」
偵察「たたたた、大変だーーっ!!」
剣士「なんだどうした」
偵察「あ、あああああっちの向こうから、向こうから!」
マスター「落ち着け。向こうからなんだって?」
偵察「魔物が!戦の恰好をした魔物達が近づいてくる!」
マスター「」
剣士「」
僧侶「」
816:1:2012/08/23(木) 00:30:33.13 ID:q5pwSgPAO
――城の前付近、魔物側
ザッザッ
側近「?何故人間が」
ミノタウロス「あちらさんも同じ事情なんじゃ?」
魔大臣「なるほど。国王が云々とか言っていたな」
ミノタウロス「大臣ってやつは凄いなまったく。馬鹿か天才か」
側近「むぅ、上手く手を組めないものか。さすがに二つと争うのは厳しい」
魔大臣「それはあちらさんの出方によるだろうな」
トロール「脅しで攻撃すル?」
魔大臣「しない。静観だ」
ミノタウロス「果たして人間側に静観する余裕はあるかどうか…」
817:1:2012/08/23(木) 00:33:57.40 ID:q5pwSgPAO
――城内、どこか
大臣「始まるぞ!私の記念すべき日が!」
大臣「魔物も人間も入り乱れて争うがいい!」
大臣「お前達の王は私だ!」
大臣「踊れ!歌え!そして手のひらで転がり続けていればいい!」
818:1:2012/08/23(木) 00:34:34.07 ID:q5pwSgPAO
そして日が昇った。
824:1:2012/08/23(木) 21:11:58.99 ID:q5pwSgPAO
――城門前
ヒュオオオオ…
側近(城の護りは固い。恐らく我々が飛んでも打ち落とされる)
側近(なんとかあの護りを破れば中へ入れるんだろうが)
側近(そこまでに被害は出したくないな)
側近(しかし、目下問題は)
側近(百、二百メートルそばに人間がいるってこれどんな状況だ)
トロール「近いなア」
ミノタウロス「おかげで硬直状態が続いているんだけどな」
魔大臣「これじゃ日が暮れてしまうぞ」
ミノタウロス「昇ったばかりなのに?」
825:1:2012/08/23(木) 21:14:21.83 ID:q5pwSgPAO
ヒュオオオオ…
剣士(ある意味、今日一日が全てを決めるだろう)
剣士(ぐずぐずしてられない。ただ――警備が固すぎる)
剣士(ここで兵を減らすのは避けたいところだ)
剣士(しかし……)
僧侶「こ、こんな近くにたくさん魔物がいますよ…」
マスター「妙な緊張感があるな…」
剣士「ああもうどうすれば!!」
826:1:2012/08/23(木) 21:18:12.72 ID:q5pwSgPAO
人間と魔物は相容れない。
側近「……」
だが、協力を申し出たいし、協力をしてほしい。
剣士「……」
少なくとも自分たちだけで勝てるような相手ではない。
魔大臣「……」
大臣派には人間と魔物が入り交じっていると聞く。
僧侶「……」
共に戦った方がよいに決まっている。
ミノタウロス「……」
だが、長年の確執が交渉を邪魔していた。
マスター「……」
827:1:2012/08/23(木) 21:27:36.54 ID:q5pwSgPAO
ふと、剣士と側近両者は後ろのほうが騒がしくなったことに気づいた。
緊張感を持てと剣士が怒鳴る。後ろまで聞こるたかはともかく。
同じように側近も怒鳴ろうとしたが、声が出なかった。
おぞましいほどの魔力を感じたからだ。
魔大臣「な、なんだ――この魔力は」
ミノタウロス「でかすぎる!なにが来るんだよ!?」
トロール「……」
側近「……鳩、誰がいるか、分かるか」
鳩「クルッポー」バサッ
側近「そうか……来たのか」
828:1:2012/08/23(木) 21:31:33.42 ID:q5pwSgPAO
ざわざわとした声は前へと移動してくる。
人間と魔物の間にできた道を歩いてきているようだ。
ミノタウロス「攻撃は?」
側近「やめろ。絶対にだ!」
ミノタウロス「あ、ああ……」
人影が見える。
端がボロボロになったローブ。
短髪。
そして、背には大きな翼。
魔大臣「……混血か?」
側近「鷲族唯一の生き残りだ」
魔大臣「なっ!?」
側近「安心しろ、あいつは我々の味方となってくれる」
側近(目的は――やはり魔王さまか?)
829:1:2012/08/23(木) 21:34:23.45 ID:q5pwSgPAO
剣士「なんだあれ……混血か?」
マスター「みたいだな。しかし何故ここに…」
人間兵「攻撃体制は整っております!」
剣士「まだ攻撃をするな。このまま様子見だ」
人間兵「はっ」
僧侶「……」
剣士「僧侶?」
僧侶「あれ……もしかして!」ダッ
剣士「あっ、僧侶!?」ダッ
マスター「…知り合いか?いやまさかな…」
830:1:2012/08/23(木) 21:54:24.36 ID:q5pwSgPAO
……
側近「やはり小娘か」バサッ
魔法使い「側近さん」
側近「なんだその有り様は…何があった?」
魔法使い「なんでもありません」
側近「…見たところ傷は治ってるようだから追求はしないが」
魔法使い「助かります。ところで魔王は、あの中ですか」
側近「そうだ」
ダダダダッ
側近「!?」
魔法使い「……僧侶」
僧侶「勇者パーティの時のか」
魔法使い「はい。……こんな姿をみせてしまうのか」
側近「……」
831:1:2012/08/23(木) 21:59:48.14 ID:q5pwSgPAO
僧侶「はっ、はぁっ……きゃあっ!?」ガンッ
魔法使いまであと僅か、というところで僧侶はつまずいた。
そのまま重力に引っ張られ地面とご対面になるところで、ふわりと支えられる。
魔法使い「…こんなとこで怪我を作るなよ」
僧侶「す、すいません…じゃなくて!」
黄色がかかった目、首や手首から生える羽毛、そして翼。
それらを見て、最後に魔法使いの顔を見て僧侶は笑った。
僧侶「魔法使いさん!」ギュッ
魔法使い「私だと…分かるのか?」
僧侶「もちろんですよ!」
832:1:2012/08/23(木) 22:05:19.38 ID:q5pwSgPAO
魔法使い「僧侶」
僧侶「はい」
魔法使い「私は、混血なんだ」
僧侶「そうみたいですね」
魔法使い「化物だぞ。それでも以前のように話してくれるのか」
僧侶「関係ありません。魔法使いさんは魔法使いさんですから」
魔法使い「…ありがとう」
僧侶「いいえ。――着ているものが汚れていますが、どうしたんですか?」
魔法使い「ちょっと色々ね。僧侶、傷の様子は?」
僧侶「片腕にもだいぶ慣れました。利き手じゃなくて良かったですよ」
魔法使い「そうか。強いな」
僧侶「えへへ」
833:1:2012/08/23(木) 22:10:57.91 ID:q5pwSgPAO
剣士「……僧侶!」
僧侶がこけ、混血に抱き止められた時に剣士は声を出していた。
剣士「僧侶から手をはな――」
側近「やめんか」
いつのまにか側にきていた鷹の魔物に翼で叩かれた。
剣士「な、なんだ魔物!やるか!?」
側近「おちつけ餓鬼」
剣士「餓鬼…」
側近「よく顔を見ろ。見覚えがあるんじゃないのか?」
剣士「見覚えって――魔法使い!?」
側近「このアホタレ。仲間の顔すら忘れていたのか」
剣士(気づかなくて悪かったけど、なんで魔物に説教されてんだろ)
834:1:2012/08/23(木) 22:15:23.93 ID:q5pwSgPAO
側近「それに、軽々しく小娘に混血というな。あいつ気にするから」
剣士「小娘?誰が?」
側近「魔法使いのことだが」
剣士「」
側近「そうか、ずっと男として通してきたんだったか」
側近「…本人の口からのほうが良かったか?」
剣士「う、嘘だ……」
側近「?」
剣士「あんなツルペタなやつが女なわけないじゃないかー!!」
直後、剣士の足下が軽く爆発を起こした。
836:1:2012/08/23(木) 22:42:27.32 ID:q5pwSgPAO
僧侶「ま、魔法使いさん!?」
魔法使い「悪い、つい反応してしまった」
僧侶「何にですか?」タユン
魔法使い「……なんでもないよ」
剣士「お、おらー!魔法使い!なにすんじゃ!」
魔法使い「すまない」
剣士「すまないですんだら憲兵隊いらぬわ!」
側近「そろそろ話を進めないか」
837:1:2012/08/23(木) 22:54:51.94 ID:q5pwSgPAO
魔物側からは側近、魔大臣。
人間側からは剣士、僧侶。
そして――どちらでもあって、どちらでもない側の魔法使い。
五人が円となり座った。
側近「攻撃は?」
魔法使い「まだのようです。恐らく、兵全体が動いたら攻撃するかと」
剣士「で、どーすんだ?」
魔法使い「僧侶、城について説明してくれないか。魔物は知らないんだ」
僧侶「は、はい」
僧侶が説明を始める。
838:1:2012/08/23(木) 22:56:14.54 ID:q5pwSgPAO
まず城門を入ると大きな出入り口が。そこをとおると中庭がある。
右にいけば王室と謁見室、左にいけば客間。正面は次の中庭へと。
階は不明だが、五、六階以上はあるはず。
そして地下もある。
魔大臣「正直、人間と組ませた方が早いかもな」
僧侶「でしょうね。複雑ですから」
剣士「……それを連中が納得してくれるかどうか」
魔法使い「納得させるしか、ない」
剣士「……だな」
側近「今は、魔物だから人間だからと言っている場合じゃないからな」
839:1:2012/08/23(木) 23:04:40.43 ID:q5pwSgPAO
魔法使い「じゃあ、頼んだ。側近さんと剣士が言ってくれ」
剣士「オレの声届くかな」
魔法使い「ん、ちょっと待て――よし。しばらくは大声になる」パァ
側近「こちらは大丈夫だ。じゃあまずは……」
バサリ、と側近は飛び魔王軍を見下ろす。
側近「聞け!」
側近「今、我々は人間と手を組まなければ勝てない!」
ざわざわ。
側近「我らだけでは不十分で――人間だけでも不十分だ!」
側近「一時、力を貸してやってくれ!しばらくは因縁なんかは無しだ!」
……。
側近「嫌なら帰れ。魔王さまに忠誠を誓いたいなら、残れ!!」
ウオオッ――!と魔物が吠えた。
去るものはいなかった。
840:1:2012/08/23(木) 23:09:03.29 ID:q5pwSgPAO
剣士「さぁ国王軍ども!よく聞け!」
剣士「まず――わりぃ、魔物が攻めてるのは嘘な!」
えええーっとブーイング。
しかし誰かがばらしていたのかそこまで混乱はなかった。
剣士「今から向かうはなんか勘違いした大臣のところだ!」
剣士「そいつに国王さまは捕まった!」
剣士「しかもだ!やつは人間と魔物がごっちゃな軍を作ってるらしい!」
剣士「ならこちらも人間と魔物で行くぞ!」
剣士「倒せ!救え!」
剣士「少しだけでいい、魔物と手を組むんだ!そして、共に戦え!」
剣士「誰も死ぬなよ!以上!」
割れるような歓声。
841:1:2012/08/23(木) 23:12:53.07 ID:q5pwSgPAO
僧侶「……すごいですね」
魔法使い「ああ」
魔大臣「さすが側近といったところか」
魔法使い「すごくスムーズに行くってわけじゃないが…勝ち目はある」スッ
魔大臣「…どこにいく、混血」
魔法使い「混血は嫌いか?」
魔大臣「……」
魔法使い「殺したいなら全て終わってからにしてくれ」
僧侶「魔法使いさん、どこに!?」
魔法使い「お先にいかせてもらう。僧侶、あなたは危ないから援護に行ってくれ」
僧侶「魔法使いさんだって!」
魔法使いは笑って僧侶の頭を撫でた。
842:1:2012/08/23(木) 23:21:37.46 ID:q5pwSgPAO
魔法使い「行かなきゃ」
僧侶「……」
魔法使い「道を開ける。そしたらすぐに侵入を開始してくれ」
側近「…お前だけで大丈夫か」バサッ
魔法使い「今の私は、周りを巻き込みかねないから」
側近「……なら、行ってこい」
魔法使い「行ってきます」
魔大臣「混血」
魔法使い「?」
魔大臣「確かに、あまり混血は良く思っていないが――」
魔大臣「別に嫌いなわけじゃない。――それに、おまえのようなやつは好感が持てる」
魔法使い「…そう」
歩き出す。
城門と城壁が騒がしくなった。
侵入者を排除するために。
剣士「魔法使い!」
魔法使い「?」
剣士「帰ったら色々聞かせてく」れ、で魔法が切れたらしい。
一度だけ大きく手をふった。
844:1:2012/08/23(木) 23:32:09.17 ID:q5pwSgPAO
魔法使い「さぁて」
侵入を防ぐために仕舞われていた、堀の上にかかる橋を魔法で下ろした。
その上を通りながら矢を風や小石で避けていく。
固く閉じられた城門をやはり魔法でこじ開け、蹴り飛ばした。
重い音をたてながら目に入るは数百の兵。
魔法使い「はは、一番乗りで良かった」
目の前いっぱいに多数の魔法陣を展開する。
有り余るほど魔力があるために今ならかなり無茶しても大丈夫そうだ。
魔法使い(魔王に渡さないといけない分もあるけど)
あと数秒で幾百もの攻撃が魔法使いを仕留めんと向かっていくだろう
彼女は口の端を歪めて呟いた。
845:1:2012/08/23(木) 23:32:51.31 ID:q5pwSgPAO
魔法使い「―――しんじゃえ」
攻撃は同時だった。
854:1:2012/08/24(金) 21:45:54.22 ID:Uz+cm7QAO
――城門前
ドーン ドカン バン
僧侶「容赦が全然ありませんね、魔法使いさん…」
剣士「すっげぇ…もうあいつ一人でいいんじゃないか?」
側近「たわけ。あくまでもあいつは我々のために道を開けているだけだ」
側近「本番は我々が動いてからだ、違うか?」
剣士「う」
僧侶(どうしてこの鷹の魔物さんは剣士さんに厳しいのかな…)
魔大臣「して、どのタイミングで行く?」
側近「まだだな。あの破壊音が一通り落ち着いてきたら」
ドバーン
僧侶「火が一瞬見えましたよ!?」
側近「…はっちゃけているなぁ」
856:1:2012/08/24(金) 22:17:56.80 ID:Uz+cm7QAO
魔大臣「解らんな…」
側近「なにがだ」
魔大臣「なぜここまで必死に我々に協力してくれるのか」
魔大臣「混血達は普通、迫害されてきたのもあってこちらを恨んでいるはずだ」
側近「…ああ」
魔大臣「なのに……こうも手を貸してくれている」
側近「そうだな」
魔大臣「あの混血はなんのために戦っているんだ?」
側近「決まっている」
魔大臣「?」
側近「大事なひとのためだ」
857:1:2012/08/24(金) 22:24:24.17 ID:Uz+cm7QAO
――城内、中庭
魔法使い「だいたいやったか……」
魔法使い「そこ。死んだふりは見苦しいぞ」ゲシ
「~~!?」
魔法使い「魔王は?国王は?どこにいる?」
「だ、誰が教え……」
魔法使い「そういう台詞には飽きた。苦痛を味わいたいなら構わない」
「ど、どちらにしろ生きてないだろうよ!」
「国王は大臣さまに全てを明け渡し、魔王は魂を搾り取られて」
「もうじき生首が仲良く並ぶこ――びしっ」グシャッ
魔法使い「あ。靴が汚れてしまった」
858:1:2012/08/24(金) 22:30:31.02 ID:Uz+cm7QAO
魔法使い「そっちも顔が汚れたな。まあお互いさまだ」スタスタ
魔法使い(こちらが騒いでいる間にあいつは着々と行動しているわけか)
魔法使い(ちんたらしてられないな。ついた時には手遅れとなりかねない)
魔法使い「……」スッ
魔法使い(得体の知れない魔力やらで正確にしぼりこむことは難しいが)
魔法使い(魔王を閉じ込めているならそれなりの魔力がかけられているはず)
魔法使い「ん?……これは……」
魔法使い(この穢れのない魔力は……『勇者の剣』?)
859:1:2012/08/24(金) 22:38:23.85 ID:Uz+cm7QAO
魔法使い「……」
魔法使い「ひとまず、一切の疑問は置いておくとして」
魔法使い(場所はここから少し遠いようだな)
魔法使い(…『勇者の剣』は魔王の力を押さえつける力があったはず)
魔法使い(つまり――うん)
魔法使い「行ってみるしか、ないか」
ザザザザ
魔法使い「……その前に」
どこかからわいてきた兵士達を一瞥する。
魔法使い「お相手しなきゃいけないか」
860:1:2012/08/24(金) 22:51:40.96 ID:Uz+cm7QAO
――牢
キィ…
魔王「よぉ」
大臣「…拘束されているというのに余裕そうだな」
魔王「そうでもない。萎れている方が好みだったか?しないが」
大臣「ふっ、この状況でその返答か。さすが王だな」
魔王「で、なんの土産を持ってきた。それを見せるために来たんだろ」
大臣「目ざといな。だが、ただ見せるだけではない」パサッ
魔王「水晶?」
大臣「ただの水晶じゃあない」
大臣「対象の生命力を封印する代物だ」
魔王「ふむ。嫌な予感しかしない」
861:1:2012/08/24(金) 23:01:12.55 ID:Uz+cm7QAO
口元をひくつかせる魔王を横目に、大臣は魔法陣を書き、真ん中に水晶をのせる。
魔王「生命力を肉体から水晶に移すということか」
大臣「その通り」
魔王「すると、肉体のほうは?」
大臣「ただの肉と成り果てる。オイルのないランプのようなものだ」
魔王「…そして朽ちていくのか」
大臣「察しがいいな」
魔王「おれに死ねと」
大臣「そうだ」
魔王「面白いやつだな」
大臣「強情をはるのも今のうちだ。せいぜい苦しんで死ね」
魔王「死ぬのは貴様だ」
862:1:2012/08/24(金) 23:08:46.96 ID:Uz+cm7QAO
大臣「私が?ひとをおちょくるのも程々にしておけよ、魔王」
魔王「なに偉ぶってんだよ大臣。滑稽極まりないぜ」
大臣「な――」
魔王「そもそも“魔王”を殺すのは“勇者”しかいないんだよ」
魔王「それとも“勇者”になりたかったのか――混血」
大臣「っ!」
魔王「おいおい、そんなに驚くなって」
大臣「なぜそれを……」
魔王「魔王に隠し事ができると?一目で分かったよ」
魔王「なんか分かるんだよ。独特のオーラというか」
863:1:2012/08/24(金) 23:16:59.74 ID:Uz+cm7QAO
大臣「……」
魔王「そう考えると疑問に思っていたことも解決する」
大臣「わ、私が、汚らわしい混血?冗談もほどほどにしろ」
魔王「認めろよ」
大臣「黙れェ!!」ガッ
魔王「ぐふ」
大臣「どうやら、まだ、上下関係が、分からない、ようだな?」ガッガッガッガッ
魔王「って言ってもだ。このぐらいで逆転すると思うなよ?」
大臣「……っ。そこで戯言を言っていろ!」ツカツカ
魔王「……」
魔王「あー、いってぇ…」
864:1:2012/08/24(金) 23:23:00.67 ID:Uz+cm7QAO
国王「」
魔王「おっさん。おっさん?」
国王「はっ!」
魔王「いや暴力シーンで固まるなよ。どれだけ平和に生きてきたんだ」
国王「昔から苦手での…」
魔王「ああそうかい」
魔王(少しずつだるくなってきた。こいつのせいか)
国王「水晶に光が…」
魔王「憎い演出だ。最後には煌々としているんだろきっと」
国王「だ、大丈夫なのか?」
魔王「今はな」
魔王(ここに誰がくるのが先か、おれがくたばるのが先か)
魔王「……」
魔王(何故魔法使いの顔が浮かぶ?)
865:1:2012/08/24(金) 23:28:42.57 ID:Uz+cm7QAO
国王「これからどうなるんかの…」
国王「后と娘は無事なのかも気になるし…」
魔王「うるさいなおっさんは」
国王「おっさんでもなければじいさんでもない!あと統一しろ!」
魔王「細かいことはいいんだよじっさん」
国王「ま、混ぜおった」
魔王「独り言は自分の胸のなかでやってくれ。おれは寝る」
国王「お、おい」
魔王「」スー
国王「早っ」
国王(水晶の光がさらに強くなっている…)
866:1:2012/08/24(金) 23:36:13.29 ID:Uz+cm7QAO
――城内、通路
魔法使い「……」スタスタ
??「おっとここから先は通さないぜっ!」バッ
魔法使い「邪魔」
??「大臣さまの右腕候補!その名前は――」
魔法使い「邪魔」ゴスッ
??「ぐぇ」バタ
???「兄者ー!!おのれ、よくも!」
魔法使い「邪魔」ガスッ
???「ぐわ」バタ
魔法使い「――はぁ」
魔法使い「魔王がピンチな気がしたんだが…大丈夫かな」スタスタ
877:1:2012/08/25(土) 22:33:33.01 ID:XUBY+bAAO
――城門
マスター「頃合いだ。行くか」
剣士「そうだな」
僧侶「剣士さん――」
剣士「僧侶は危ないから、後ろで治療班にまわってくれ」
僧侶「わたし、大臣さまを……救いたいんです」
剣士「……」
僧侶「勝手なのは分かっています。わがままなのは知っています」
僧侶「でも……かつてあの人は、わたしの居場所を作ってくれたから…」
僧侶「お願いします!一緒に連れていってください!」
剣士「……」
マスター「行かせてやれよ」
剣士「そんな無責任な」
878:1:2012/08/25(土) 22:37:46.98 ID:XUBY+bAAO
マスター「お嬢さん」
僧侶「は、はい!」
マスター「死ぬ覚悟はできてるかい?戦場は誰であろうと死ぬぜ」
僧侶「できてます!」
マスター「もし死んでも恨みっこなしだ。いいな?」
僧侶「はい!」
マスター「まぁ剣士が守ってくれると思うけど。な?」
剣士「え?」
マスター「なんだ、守れないのか」
剣士「ま、守れるぞ!僧侶はオレの命をかけても守るから!!」
僧侶「け、剣士さん」カァァ
剣士「あ、いやその…うん、頑張るから」カァ
僧侶「お、お願いします」
879:1:2012/08/25(土) 22:45:32.32 ID:XUBY+bAAO
側近「……」
ミノタウロス「どうしたん?こっち準備できたが」
側近「いや……あの小僧、見てて不安だなと」
ミノタウロス「ああ…」
側近「軍、動かすか」
魔大臣「そうしよう」
魔大臣「トロール達が先に行ってくれ」
トロール「分かっタ」ノシノシ
魔大臣「隊列を組め!進むぞ!」
剣士「おっと――行くぜ!やる気を出せよ!」
ウオオオォォ!!
マスター「雑魚はこちらで潰す。お前たちは国王の救出を」
剣士「――、了解した」
880:1:2012/08/25(土) 22:54:55.68 ID:XUBY+bAAO
マスター「多分、大臣も王達の近くにいると思う。予想だけど」
マスター「もともとふたりが狙いだったわけだしな」
僧侶「はい」
剣士「じゃ、また後で。気をつけてくれよ、マスター」
マスター「剣士に言われたくない。お前こそ油断するなよ」
剣士「大丈夫だよ。故郷の姉貴が作ってくれた御守りつけてるし」チャラッ
マスター「…ペンダントか」
剣士「これのおかげで今まで生き残ってるんだからさ」ニカッ
僧侶「……」
マスター「……お嬢さん、こいつの周りを見ててくれ。絶対不意打ちで攻撃がくるから」
僧侶「…分かりました。気をつけます」
剣士「?」
881:1:2012/08/25(土) 23:03:53.08 ID:XUBY+bAAO
マスター「お前たちは少し後ろからこい。ある程度は片付いてるはずだ」
剣士「あんがと」
側近「……」ヌッ
剣士「うお!?」ビク
側近「これを」
僧侶「は、羽?わたしにですか?」
側近「魔法の攻撃を一回やり過ごせるはずだ。持っておけ」
僧侶「」ポカン
側近「二人だけでいかせるのか?」
マスター「いいや。何人かで行動させる」
側近「だよな。二人だけだったらどうしようかと」
僧侶「…あ、えっと、ありがとう、ございます」
側近「礼はいらない」
側近「死ぬなよ。小娘が悲しむのは見たくないからな」ボソ
僧侶「今、なんと?」
側近「なんでもない」
882:1:2012/08/25(土) 23:10:44.43 ID:XUBY+bAAO
――中庭
ザワッ…
マスター「こいつはひどい……死体だらけだ」
魔大臣「魔法使い、と言ったか…敵には絶対まわしたくないな」
側近「……」
側近(だいぶキレているな)
側近(普段は冷静なのに。何があったのやら)
マスター「おっと……奥からまだまだ出てくるぜ」
側近「ゴーレムか。単体は弱いが――術師を殺らないと消えないぞ」
ミノタウロス「こっちで足止め食らわす。早いとこ探してくれ」
魔大臣「悪い」
ミノタウロス「お互い様だろ?」ニヤ
魔大臣「だな。給料あげてやる」ニヤ
ミノタウロス「そうこなくっちゃ」
887:1:2012/08/25(土) 23:55:03.89 ID:XUBY+bAAO
――とある部屋
キィッ
魔法使い「ここじゃないか」
魔法使い「でも近いな。別のところをあたろう」
魔術師「いいや、ここがキサマの最後の部屋だ」ドン
魔法使い「…話なら早くしてくれ。急いでいるんだ」
魔術師「まあ焦るな」
魔術師2「ゆっくりと」
魔術師3「あの世へいけ」
魔法使い「誰?」
魔術師「我ら三つ子の魔術師」
魔法使い「ああ……“魔法使い”が偉くなるとそういう名前になるんだっけ」
魔術師「だが」
魔術師2「我らは」
魔術師3「貴様を同類だとは思わぬ」
888:1:2012/08/26(日) 00:03:17.05 ID:2ahOSzHAO
魔法使い「ふん。混血だからか?」
魔術師「左様」
魔術師2「理に反したものは」
魔術師3「“魔法使い”ではない」
魔法使い「じゃあ私は“魔法使い”ではなければなんなんだ?」
魔術師「半端者」
魔術師2「人間にもなれない魔物にもなれない」
魔術師3「半端な化物」
魔法使い「……みんな語彙力ないのか?化物は聞きあきた」
魔術師「ではなんだ?」ブォン
魔術師2「大恋愛の末の結晶とでもいうか?」ブォン
魔術師3「聞こえはいいが、所詮は愚かな両親よ」ブォン
889:1:2012/08/26(日) 00:12:21.01 ID:2ahOSzHAO
魔法使い「……」
魔術師「子のことを考えず」
魔術師2「間違いを犯し」
魔術師3「結果がそれだ。誠に愚かしい」
部屋を埋めるように魔法陣が展開された。
それを黙って魔法使いは見ている。
隙は馬鹿みたいにあったのに。
その中央から巨大な蛇が這い出て、魔法使いを丸飲みした。
そして、弾けた。
890:1:2012/08/26(日) 00:14:33.31 ID:2ahOSzHAO
魔術師「ふむ」
魔術師2「強いな」
魔術師3「ならもっと――!?」
魔術師「どうした?」
魔術師3の喉にぐるりと赤い線か引かれた。
それにそってぽろりと頭が取れた。一拍遅れて血が吹き出す。
魔術師「弟!?」
魔法使い「ごめん。まとめてやろうとしたんだけど――」
先ほどと変わらぬ位置で、困ったように笑いながら魔法使いは言った。
魔法使い「両親を最初に侮辱したから。ついやってしまった」
魔術師「ぁ…ぁ…」
魔法使い「確かに力は強いけど、個人戦向きじゃない。力を一つにするまで時間かかりすぎ」
891:1:2012/08/26(日) 00:20:59.57 ID:2ahOSzHAO
魔法使い「見た感じ、薬の調合とか研究で“魔術師”になったんじゃないか?」
魔術師二人に向かい歩いていく。
魔術師たちは兄弟を殺した相手に恐怖を感じ、とにかく攻撃をしかける。
標準の合っていないそれを軽く魔法使いはいなしていく。
魔法使い「だとしたら悪い。こちらは最近ずっと戦いっぱなしで――」
バサリと翼を広げてみせた。
魔法使い「正直、ぬるいよ」
魔法使いが片手の指を曲げた。
それだけで、ふたりの人間の頭と四肢が胴体から離れ落ちた。
892:1:2012/08/26(日) 00:30:16.57 ID:2ahOSzHAO
魔法使い「駄目だよ。両親は悪くいっちゃあ」
魔法使い「これでも誇りに思ってるんだ」
魔法使い「嫌だろ?尊敬してる人を馬鹿にされたら」
魔法使い「それを戦場で言ったら――敵が怒るのも無理はないよ」
魔法使い「今更だけどね」
魔法使い「時間食った。魔王は何処だろう」
彼女が気づかぬ内に――爪は、厚く固く、伸びていた。
鳥の爪のように。
魔物化が進んでいることに。
893:1:2012/08/26(日) 00:34:00.08 ID:2ahOSzHAO
――魔王城、医務室
ゴブリン「はっ!?」
サキュバス「チッ」
ゴブリン「待て、今どうして掛布団に潜っていた。何をした貴様」
サキュバス「今からするトコだったのに~」
ゴブリン「おい」
サキュバス「気分はどう?」
ゴブリン「気分?そういや、いきなり意識が――」ハッ
ゴブリン「みんなは!?」
サキュバス「魔王さま奪還の戦いに出ちゃった☆」
ゴブリン「魔王さまが!?なんで……」
サキュバス「……さぁね。ほら、まだうごかなーい」
894:1:2012/08/26(日) 00:37:07.69 ID:2ahOSzHAO
ゴブリン「こうやって寝てる場合じゃないんだ!行かないと!」
サキュバス「ま、そうだけどね」
人魚「ゴブリン!起きたの!?」ガラガラ
ゴブリン「なんか水槽ごと運ばれてきたよ…」
人魚「呪いが解けたの…?」
サキュバス「みたい☆メイド達も起きてきてるし」
ゴブリン「人魚は残ったのか」
人魚「ええ。陸じゃ戦えないから、代理で城内指示」
ゴブリン「そうか…」
895:1:2012/08/26(日) 00:40:01.41 ID:2ahOSzHAO
サキュバス「あれあれ~、お礼言わなくていいの?」
ゴブリン「お礼?」
人魚「ちょっ」
サキュバス「人魚さんったら、ずっとあなたを見守ってたのよ~」
ゴブリン「えっ」
人魚「な、何言ってるのよ!」
ゴブリン「本当…みたいだな」
人魚「べ、別にあんたが昏睡してて不安で仕方なくて見ていたわけじゃないし」
人魚「ただ死なれたら困るなーって思っていただけよ!文句ある!?」
ゴブリン「ないです」
サキュバス「素直じゃないね☆」
896:1:2012/08/26(日) 00:43:22.60 ID:2ahOSzHAO
ゴブリン「うん、体は大丈夫そうだ」
人魚「病み上がりで戦いに行く気?」
ゴブリン「呪い上がりだけどな。戦いに行く気だ」
人魚「体調は?」
ゴブリン「バッチリ。一切問題ない」
人魚「…城内を一緒に見てよ。パニックが起こると大変なの」
ゴブリン「人魚ならいけるだろ」
人魚「無責任すぎるわ」
ゴブリン「ほら、でもさ。自分だけ暢気に寝てるのも悪いし」
人魚「……分かったわよこの戦闘馬鹿」
人魚「そうね、元々戦いが生き甲斐だものね」
897:1:2012/08/26(日) 00:46:44.26 ID:2ahOSzHAO
ゴブリン「そこまで戦闘狂ではないが……」
人魚「転移してあげる。用意してきて」
ゴブリン「どうも。ちょっと待っててくれ」タッ
人魚「ハァ……」
サキュバス「え~、気になっちゃった感じ?」
人魚「ばっ、そんなんじゃないわよ!」
サキュバス「へぇ~」ニヨニヨ
人魚「い、嫌な子ね」
サキュバス「ひとの恋愛は見てるだけで面白いからね~」ニヨニヨ
人魚「だからっ、恋でも愛でもないわよ!」キー
898:1:2012/08/26(日) 00:53:16.97 ID:2ahOSzHAO
ゴブリン「用意してきた。飛ばしてくれ」タタッ
人魚「ええ。みんなによろしく」
ゴブリン「分かった」
人魚「じゃね」
ゴブリン「頑張れよ」
人魚「そっちこそ」
シュンッ
サキュバス「うひひっ☆」
人魚「…何?」
サキュバス「戦場に行くオトコに惚れちゃった?」
人魚「うずまき管壊すわよ」
サキュバス「ごめんね」
899:1:2012/08/26(日) 00:58:53.45 ID:2ahOSzHAO
――人間の城、中庭付近
側近「待て!」バサバサ
術師「はーっはっはっ!待つ馬鹿がどこにいる!」
魔大臣「うるせぇ!大人しく捕まれ!」ダダダ
側近「口調が乱れているぞ」バサバサ
術師「はっはっは!」
魔大臣「ちぃ、ゴーレムにお姫様抱っこで運ばれてるくせに」
側近「しかしアレ防御強いな。すぐ再生するし」
魔大臣「早くしないとミノタウロス達の体力が――」
ゴブリン「ギャ――――!!!あいつどこに落としてんだ――!!」ドサッ
全員「!?」
900:1:2012/08/26(日) 01:03:04.40 ID:2ahOSzHAO
ゴブリン「あいたた……うわ、なんで土に埋もれてるんだ」
側近「ご、ゴブリン……?目覚めたのか」
ゴブリン「お陰様で」
魔大臣「なんで空から……」
ゴブリン「人魚がちょっと間違えたみたいで…あれ、誰かの上に座ってるぞ」
術師「きゅう」
ゴブリン「うわっ、なんだ平気かこいつ」
魔大臣「……」
側近「……」
魔大臣「給料上げよう。人魚もな」
ゴブリン「え?」
側近「次に行こう」
魔大臣「そうしよう」
ゴブリン「え?え?」
901:1:2012/08/26(日) 01:10:02.15 ID:2ahOSzHAO
――別のとある部屋の前
兵士「なんだ貴様――ぐぁ」バキ
兵士2「大臣さまに歯向か――べぁ」バキ
魔法使い「なんだ、ここは異様に見張りが多いな――ん?」
魔法使い(微弱に魔力がある――なんだろう)
魔法使い「あれ?」ガチャガチャ
魔法使い「開いてない」ガチャガチャ
魔法使い(普通の錠と魔力で鍵がかかっている)
魔法使い(魔王の気配じゃないし――)
魔法使い(見張りの多さといい、これといい、まさか国王がこの部屋にいるんじゃ)
902:1:2012/08/26(日) 01:14:30.58 ID:2ahOSzHAO
魔法使い「……」
魔法使い(この姿じゃ、ちょっとな)
??『もし?誰かいますの?』トントン
魔法使い「! はい」
??『あなたは誰?』
魔法使い「…大臣の敵とだけ。あなたはどうしたのですか?」
??『大臣にこの部屋に監禁されていますの。助けて下さらない?』
魔法使い「……ひとつ、条件が」
??『はい』
魔法使い「絶対に目をお開けにならないようお願いします――王女さま」
王女『あら――知ってましたの?』
魔法使い「ええ。では、開けますよ」
王女『分かりました』
903:1:2012/08/26(日) 01:19:24.16 ID:2ahOSzHAO
パキン
魔法使い「……」ギィィ
そこに立っていたのは上等なドレスを着た金髪の少女。
年は十代中ごろほどか。
瞳は瞼に遮られ見えない。
魔法使い「お妃さまは?」
王女「分かりません。どうしているのでしょう」
魔法使い「心配ですね――ちょっと目隠しをさせてもらいます」シュルッ
懐に包帯があったのでそれで緩く目を覆う。
王女「そんなに容姿が気になるの?」
魔法使い「はい。怖がらせてしまいますから」
王女「優しいのね」
904:1:2012/08/26(日) 01:29:12.15 ID:2ahOSzHAO
魔法使い「いいえ。私は優しくなどありません」
王女「そうかしら。――何も見えないから、腕を掴んでいい?」
魔法使い「どうぞ、お気になさらず」
王女「細いわ。声は低いけど高い感じがするし……」ギュ
王女「不思議。あなたは男なの?女なの?」
魔法使い「お好きなほうで」
王女「意地悪ね。じゃあ、男の人。こういうのは王子さまが助けにくるものだから」
魔法使い「…そうですね」
魔法使い(戦士に呪われそうだ)
916:1:2012/08/26(日) 21:22:52.18 ID:2ahOSzHAO
魔法使い「王女さま、大臣には会いましたか?」
王女「…ええ、会いました」
魔法使い「何か言われましたか?」
王女「あの男、『お前たちの時代は終りだ』って」
魔法使い「困った人です。しっかり叱っておきましょう」
王女「会いにいくつもり?」
魔法使い「はい、大臣が全ての元凶ですからね。灸をすえにいきます」
王女「嘘」
魔法使い「え?」
王女「そんな大人しい言い方しなくてもいいのに。殺しにいくのでしょう?」
917:1:2012/08/26(日) 21:31:41.64 ID:2ahOSzHAO
魔法使い「……まあ、はい」
王女「別に、殺しちゃ駄目なんて子供じみたことは言わない」
王女「大臣は説得で投降するほど軟弱な人間ではないだろうし――意志も弱くないでしょう」
魔法使い(僧侶に聞かせたら泣きそうだな…)
王女「でも、気をつけて。もう――あの男は止まれない」
魔法使い「……」
王女「自分が死ぬなら周りももろとも、というやり方しかねないわよ」
魔法使い「ああ…なんかありそうですね」
王女「ところで」
魔法使い「はい」
王女「本当に大臣倒しにいくだけ?」
918:1:2012/08/26(日) 21:41:37.69 ID:2ahOSzHAO
魔法使い「はい」
王女「嘘」
魔法使い「……読心が得意なんですね」
王女「いいえ。読心なんて技術持ち合わせていないわ」
王女「ただ、聞いているかぎり、何かの『ついで』みたいだから」
魔法使い「『ついで』……ですか」
王女「そう。わたくしがたまたまそこに居たから助けた感じでしょう?」クスクス
魔法使い「えっ、いや、そんな」
王女「いいのよ。ああ、お父様が目的じゃないのは分かるけど」クスクス
魔法使い「えっとですね……」
王女「大事なひとでも捕まっているのかしら?」
919:1:2012/08/26(日) 22:57:26.72 ID:2ahOSzHAO
魔法使い「だ、大事なひと……なのかな」
王女「今ので全部分かっちゃった♪」
魔法使い「え、いや、そういう関係じゃないですし…」
王女「体温上がってるわよ?」
魔法使い「うぐ」
王女「……大臣も酷いことをするわね」
魔法使い「……」
王女「わたくしは何も出来ないけど…応援はするから」
魔法使い「…ありがとうございます」
王女「生きてね」
魔法使い「はい、必ず。この戦い、勝ちます」
王女「フフッ、頼もしいわ」
バタバタ
兵「あ!王女さま!」
兵2「ご無事ですか王女さま!」
920:1:2012/08/26(日) 23:02:14.68 ID:2ahOSzHAO
王女「ええ」
兵「その…お疲れさまです」
魔法使い(血まみれでこの姿だもんな。怖がられても仕方ない)
魔法使い「いえ……彼女を頼みます。私は、まだやらないといけないことが」
兵2「しかし…」
王女「いいわ。足手まといでしょうし」
魔法使い「すみません。私がいなくなったら包帯をはずして下さい」
兵「あ、ああ」
魔法使い「では」タッ
兵2「お気をつけて!」
王女「」シュル
兵「あ、王女さま――」
王女「あら」
わずかに見えた魔法使いの背を見て王女は口に手を当てる。
王女「天使に恋してしまったみたい」
921:1:2012/08/26(日) 23:14:36.55 ID:2ahOSzHAO
――とある部屋
剣士「お邪魔します」キィ…
剣士「」
剣士「お邪魔しました」バタン
僧侶「どうしたんですか?」
剣士「何にもなかったよ。何にも」
僧侶「は、はぁ」
剣士(バラバラ死体があった…)
老兵「まだ階段登るのかい、僧侶さん」
僧侶「すいません…まだもう少し」
老兵2「どこに行くんだっけ?」
老兵3「ちゃんと聞いとけよボケジジイ」
老兵2「あぁん?」
922:1:2012/08/26(日) 23:17:18.34 ID:2ahOSzHAO
剣士「争ってる場合じゃないだろじいさん達」
僧侶「上に、脱出不可と言われる凶悪犯罪者用の牢があるんです」
剣士「何故そんな物騒なものを城に…」
僧侶「国王さまを守るために選りすぐりの人がいつも待機していますから」
僧侶「仮に逃げられてもその人たちが早期に押さえつけることができるから、だそうです」
剣士「へぇ」
僧侶「それに窓から脱出は飛び降りと同意義ですから」
老兵「もちここから国王さまの部屋までは容易にいけない造りになってるそうだ」
老兵2「人質になったら大変だからな」
923:1:2012/08/26(日) 23:28:06.45 ID:2ahOSzHAO
僧侶「わたしの予想ではそこにいるんじゃないかと…間違えたらごめんなさい」
剣士「そんな消極的になるなよ。オレらじゃそもそも検討もつかないし」
老兵「慰め下手だな」ヒソヒソ
老兵2「な」ヒソヒソ
老兵3「ありゃだめだ」ヒソヒソ
剣士「おい」
僧侶「ここから階段が狭くなります。足元に気をつけて」
老兵「じゃ、儂が前に出る。一応な」
老兵2「後ろから敵は?」
老兵3「いない。静かすぎて不気味だが…」
剣士(この辺りはほとんど魔法使いがやったみたいだからな)
924:1:2012/08/26(日) 23:32:22.07 ID:2ahOSzHAO
老兵「ぐずぐずしてないで行こうや」
剣士「ごめん」
僧侶「……」
僧侶(今なら、これを……)
僧侶「」スッ
剣士「僧侶?オレの服になにかついてたか?」
僧侶「い、いえ!なんにも付いてませんでしたよ」
剣士「?」
僧侶「行きましょう行きましょう」グイグイ
剣士「お、おお」
925:1:2012/08/26(日) 23:43:27.10 ID:2ahOSzHAO
――城近くの森
黒髪の男「やっぱ、アレですね父さん」
師匠「なんだ馬鹿息子」
黒髪の男「遠くから見てるだけじゃつまらないですね」
師匠「何を言っとるんだ。ここで見守ろうと言い出したのはおまえだろ」
黒髪の男「確かにそうですけど」
黒髪の男「――あのぐらいのピンチ、乗り越えなきゃ“魔王”じゃないですし」
師匠「あのぐらい、ねぇ…一回『勇者の剣』で刺されてみろ」
黒髪の男「ヤですよ」
師匠「というか刺されろ」
黒髪の男「なんでそんなに厳しいんですか!」
926:1:2012/08/26(日) 23:52:07.44 ID:2ahOSzHAO
師匠「当たり前だろうが!幼い息子に仕事押し付けおって馬鹿!」
黒髪の男「だってあいつ、情報処理とか自分よりうまいんだもん…」
師匠「補佐としてしばらく手伝って貰っていれば良かったのに」
黒髪の男「……駄目だったんです」
師匠「何がだ」
黒髪の男「あいつが、我を忘れて辺りを血の海にした時。とても恐かったんです」
師匠「……」
黒髪の男「愛情より畏怖のほうが強くなってしまった。…父親失格です」
師匠「もう30年なのか…」
927:1:2012/08/26(日) 23:58:09.70 ID:2ahOSzHAO
黒髪の男「結局逃げたんですよ。もう自分はあいつに顔向け出来ない」
師匠「出来るだろう」
黒髪の男「……出来ますかね。まだ、もうちょっと時間が欲しいです」
師匠「おまえが間接的とはいえ魔力をやったことを知っている」
師匠「完全に見放されてないって分かれば孫も一安心するだろう」
黒髪の男「見てたんですか」
師匠「見てた」
黒髪の男「あの混血の姉ちゃんは…父さんの弟子ですか」
師匠「そうだ」
黒髪の男「でも30年前、人間に育てさせたほうがいいと言ってませんでした?」
928:1:2012/08/27(月) 00:08:16.81 ID:IbCiM00AO
師匠「その時はまだ普通の人間とばかり思っていた。暴走しなければ大丈夫だと」
黒髪の男「でもそうじゃなかった?」
師匠「ああ。魔法が使える、成長が遅い」
黒髪の男「魔物の血の効果ですね」
師匠「そう、だから引き取った。あのままじゃ火炙りだった」
黒髪の男「それに、忘れ形見ですからね。父さんの友人の」
師匠「まあな…見過ごせなかったのもある。しかし気になるの」
黒髪の男「この戦いの行方がですか?」
師匠「それもだが――魔法使いは、どのような生き方を選ぶのか」
929:1:2012/08/27(月) 00:27:00.30 ID:IbCiM00AO
――城内、通路
魔法使い「は―――はぁ、はぁ」
窓を見れば太陽が真上に浮いていた。
もう昼間らしい。
魔法使い「疲れるはずだよ」
壁に背を預け、ぺたりと座り込む。
周りは死体が囲んでいた。
ふと思い、そばに落ちていた剣を手にとった。
刃の部分に魔法使いの顔が写り込む。
魔法使い「なんで……」
羽毛が彼女の頬にまで広がっていた。
背の翼も一段と大きくなっている。
人間から遠のいていく。
かといって完全に魔物にもなれない。
930:1:2012/08/27(月) 00:36:32.77 ID:IbCiM00AO
魔法使い「……」
頬から首元までなぞっていく。
ふわふわとした柔らかい感触。
魔法使い「中途半端…か…」
もし元から人間だったなら、と想像してみる。
少なくとも、ここにはいないだろう。
今までにあった人と会うことはきっとなかった。
師匠とも。
勇者たちとも。
魔王とも。
魔法使い「私は……私だったから――」
935:1:2012/08/27(月) 23:35:05.87 ID:IbCiM00AO
――どこかの天井
蝙蝠「ウーン」
蝙蝠は天井からぶら下がり、目の下で起こる様々なことを見ていた。
兵のぶつかりあいだとか。
逃げる兵や、それを追う兵。
あとは豪奢なドレスを着た女性が助けられてたり。
小さな蝙蝠に気づくものはいなかったし、蝙蝠自身も気をつけていた。
人目がないのを確認すると、蝙蝠は飛び出す。
蝙蝠「マオウサマ、ドコカナ」
蝙蝠は何も知らない。
魔王がここに来た意味も、兵達が争う意味も、なにもかも知らない。
936:1:2012/08/27(月) 23:41:29.47 ID:IbCiM00AO
そんなことはどうだって良かった。
ただ、何処かに行ってしまった魔王を探しているだけだ。
ひとりで旅立とうとする魔王の転移魔法に割り込んだのに深い理由はない。
なんとなくその背中が寂しそうだったから。
それだけの理由で共に転移した。
魔王が蝙蝠に気づかなかったのは魔力が微弱なことと他のことを考えていたからかもしれない。
蝙蝠「サビシイト、ツライヨネェ」
時折休みながらあちこちを飛んでいく。
蝙蝠「ボクモヒトリハ、サビシイモン」
937:1:2012/08/27(月) 23:47:08.69 ID:IbCiM00AO
蝙蝠「モシカシタラ、ナイテタリシテ」
金色の瞳から流れる涙は何色だろうかと考える。
蝙蝠「キンイロカナ。ギンイロダッタリシテ」
蝙蝠「ア、デモ」
蝙蝠「タカサンニ、ナカシタッテマチガエラレタラ、タイヘンダ」
蝙蝠「……ソウイエバ、タカサントカ、ココニイナイノカナァ」
魔王の側には必ずいるのだから多分いるだろう。
安直に考えて飛び続ける。
そして、曲がり角から現れた人物にぶつかった。
蝙蝠「アイタ」
魔法使い「ごめ……え、蝙蝠?」
938:1:2012/08/27(月) 23:52:28.61 ID:IbCiM00AO
蝙蝠「コンケツ!」
魔法使い「なんでこんなところに」
蝙蝠「エットネ――」
説明中。
説明後。
魔法使い「…じゃあ、蝙蝠も魔王を探しているのか」
蝙蝠「ウン!イッショニサガソ!」
魔法使い「一緒に探そったって…危ないぞ?」
蝙蝠「ナンデ?」
魔法使い「いつ誰に攻撃されるか分からないんだから」
蝙蝠「ダカラ、コンケツモボロボロナノ?」
蝙蝠は魔法使いの平らな胸へ飛び込む。抱き止められた。
魔法使い「ああ。攻撃したりされたりで」
939:1:2012/08/27(月) 23:55:35.59 ID:IbCiM00AO
蝙蝠「コンケツ、トリニナッテキテルネ!」
魔法使い「やっぱりそうか…」
蝙蝠「カッコイイヨ!」
魔法使い「はは、ありがとう」
蝙蝠「ボクネ、ソレナリニツヨインダヨ!」
魔法使い「そうなのか…?お前が強い、ねぇ」
蝙蝠「ナメチャコマルゼ。ダカライッショニイコ!」
魔法使い「……」
蝙蝠「イイデショ?」
魔法使い「…仕方ないなぁ。文句は受け付けないからな」
蝙蝠「ワァイ、アリガトウ!」
940:1:2012/08/28(火) 00:01:58.17 ID:Kid2apjAO
魔法使いの腕のなかに収まっていると眠気が襲ってくる。
言葉すくなになると「マイペースすぎるだろ」と苦笑する声が上から降ってくる。
蝙蝠「……コンケツノツバサハ」
魔法使い「うん」
蝙蝠「オオキイネ。トバナイノ?」
魔法使い「飛べる…のかな」
蝙蝠「トベルヨ。ソンナオオキイツバサナラ、ドコダッテ」
魔法使い「飛んだことないから。どうなんだろうね?」
蝙蝠「コンケツナライケルヨ」
魔法使い「はは、ありがとう」
946:1:2012/08/28(火) 22:16:30.81 ID:Kid2apjAO
――通路
「衛生兵!早く!」
「負傷者が出たぞ!」
側近「強いというより……しぶといな」ハァハァ
マスター「さっさと降伏すればいいものを」ハァハァ
側近「どうやら自らの意思で退却はできないらしいぞ?」
マスター「なに?」
側近「あの魔物みてみろ。両足なくしてショック状態だ」
マスター「…よく冷静でいえるんだな……」
側近「生きてきた時間が違う。ほら、身体が痙攣しているくせにまだこちらへ来るぞ?」
マスター「………っ、なぜ……」
947:1:2012/08/28(火) 22:22:54.55 ID:Kid2apjAO
側近「やつらから魔術を感じる」
マスター「魔術?なんの?」
側近「自分は魔王さまではないから詳しくは分からないが…操りの魔術だ」
マスター「……なんだそれ」
側近「文字通り人を操るんだよ。催眠みたいなもんだ」
側近「『ひたすら前進せよ』とか言われたんじゃないか?」
マスター「そんな――操るなんて出来るものか」
側近「ちょっとの心の緩みさえあればコロリと従うさ」
側近「元からある忠誠心に上乗せした、というのも考えられる」
948:1:2012/08/28(火) 22:27:44.50 ID:Kid2apjAO
マスター「……」
側近「これだけ大人数の術を解除するのは難しい」
マスター「そうか」
側近「解除している間に攻撃されたら一溜まりもないだろう?」
マスター「そうだな」
側近「だから…やつらには敵になったことを悔やんでもらうしかない」
マスター「……」
側近「躊躇いが出たか」
マスター「いいや。みんな戦っているんだ」
マスター「個人の感情で仲間を殺したくはない」
側近「流石だな。見直した」
マスター「はははっ、魔物に言われるなんてな」
949:1:2012/08/28(火) 22:33:13.93 ID:Kid2apjAO
魔大臣「側近!」
側近「どうした!」
魔大臣「兵にも疲れが見えている。どうする」
側近「二陣と入れ換えだ。一陣はしばらく休ませる」
魔大臣「了解!」
側近「トロールたち、疲労は?」
トロール「ないけどそろそろ血止めがほしイ」
トロール2「矢の盾はいいけド、矢じりを抜いてくレ」
側近「衛生兵、トロール達にも処置を!」
魔大臣「…しっかし、いつ終わるんだろうなこれ」
側近「終わるさ。――大臣は敵に回しちゃいけないのを敵に回したからな」
950:1:2012/08/28(火) 22:43:26.21 ID:Kid2apjAO
――どこかの階段
後ろから追いかけられていた。
剣士「ちくしょう!よりによってここでか!」
老兵2「走れ!槍を持ってるぞ」
僧侶「容赦がないですね!」
剣士「僧侶、悪いがしばらく全力ダッシュだ!」
僧侶「はい!」
剣士「じいさん達も―――なにやってるんだ?」
剣士が振り返ったとき、老兵二人は立ち止まり後ろ――下を見据えていた。
剣士「馬鹿、早く逃げないと。せっかく引き離したんだから…」
老兵2「アホウ、こっちで足止めするからさっさと行け」
僧侶「そんな!」
951:1:2012/08/28(火) 22:48:13.52 ID:Kid2apjAO
老兵3「どうせ老い先短いんだ。なら戦って死んだ方が名誉だ」
僧侶「名誉って―――」
老兵2「行け。どちらにしろ足がもう使い物にならん」
老兵3「こういうときに体調悪くなるんだとはなぁ」ヒッヒッヒ
僧侶「駄目です!みんなで生き残って、それで」
剣士「行こう僧侶。じいさん達に失礼だ」
僧侶「でも!」
老兵「……すぐ行く」
老兵2「おう、そしたら酒を飲もうや」
老兵3「あっちに酒はあるんだろうかな」
剣士「…ありがとうな!でも生きれたら生きろよ!」グイ
僧侶「そんな、駄目ですって、どうか――」
952:1:2012/08/28(火) 22:53:16.27 ID:Kid2apjAO
剣士に引っ張られ、僧侶たちが上へと登っていくのを見届けた。
老兵2「優しいな」
老兵3「不安になるほどにな」
老兵2「……しかしどうする?」
老兵3「本当だな。敵が数人ならこんなことしないが」
老兵2「何て言ったって足音だけで二十三十だもんなぁ」
老兵3「こうなるとこの先に国王さまがいるのは確かみたいだな」
老兵2「だな」
老兵3「全員死ぬより…ここで二人、食い止めて死んだ方が良いな」
老兵2「全くだ」
953:1:2012/08/28(火) 22:56:17.32 ID:Kid2apjAO
老兵3「やっと妻のところにいける」
老兵2「やっと娘に会える」
ワーワー
老兵3「お出ましだ。覚悟はいいか」
老兵2「もちろんだ」
老兵3「じゃ、若い世代に後は託して、何も考えずに戦うか」
老兵2「そうしよう。最後だ、楽しもうぜ」
そして、激突した。
954:1:2012/08/28(火) 23:02:16.12 ID:Kid2apjAO
……
魔法使い「――激闘だったんだな」ピチャピチャ
階段に広がる血と、転がる肉片をできるだけ踏まないようにしながら階段を登っていく。
蝙蝠「スゴイチノニオイ」
魔法使い「ああ」
蝙蝠「アトカタヅケ、タイヘンソウダネ」
魔法使い「それは勝者になってからの悩みだな」
蝙蝠「コンケツ、マケルノ?」
魔法使い「まさか、負けないさ。負けないけど油断はしてはいけない」
蝙蝠「ユダンタイテキ!」
魔法使い「その通り」
蝙蝠「ヒノヨウジン!」
955:1:2012/08/28(火) 23:06:26.41 ID:Kid2apjAO
魔法使い「マッチ一本?」
蝙蝠「アバンチュールノモト!」
魔法使い「ごめん、何言ってるかよく分からない」
蝙蝠「コンケツ、コイハネ、チョットノキッカケデモエアガルンダヨ」
魔法使い「へ、へぇ……」
蝙蝠「コイヲシタラ、テニオエナインダッテ!」
魔法使い「誰から聞いたんだそんなこと…」
蝙蝠「マオウジョウデ、タクサンキイタ!」
魔法使い「変なこと吹き込むなよ魔王城の面々…」
蝙蝠「スキナヒトノタメニハ、ナンデモヤルンダヨ!」
956:1:2012/08/28(火) 23:10:36.85 ID:Kid2apjAO
魔法使い「駄目だ暴走してるわこの子」
蝙蝠「コンケツモ、モエガッテルデショ?」
魔法使い「なんで私が人体発火現象を巻き起こしているんだ?」
蝙蝠「チガウヨ、ハナシノナガレニノロウヨ」
魔法使い「はぁ…。恋に燃え上がってるか?私」
蝙蝠「バッチリダヨ!」
魔法使い「うーん……誰に?」
蝙蝠「……」
魔法使い「えっ、なんでそこで黙るんだ」
蝙蝠「タカサン、クロウシテルンダネ」
魔法使い「そんなしみじみと言われても」
957:1:2012/08/28(火) 23:13:50.70 ID:Kid2apjAO
蝙蝠「コノボクネンジン!」
魔法使い「う、うん」
蝙蝠「コタエハジブンデミツケナサイ!」
魔法使い「意地悪だな」
蝙蝠「コウイウノハネ、ジブンデキヅクノガ、イチバンナンダヨ」
魔法使い「ちなみに、蝙蝠は?」
蝙蝠「ボクニモプライバシーハアルンダヨ!」
魔法使い「はいはい」
蝙蝠「アレレ、ネエネエコンケツ、シタミテ」
魔法使い「下?――ああ」
蝙蝠「オジイサンタチ、マンゾクソウニネテルヨ」
魔法使い「いや……死んでるんだよ」
958:1:2012/08/28(火) 23:18:53.05 ID:Kid2apjAO
身体のあちこちが裂け、刺された姿で老人二人は座って壁にもたれていた。
微かな笑みを浮かべ、二度と上がることのない目蓋を閉じていた。
魔法使い「あなたたちが…この上を守ったのですか」
数秒の黙祷。
それから頭を深くさげて階段を登る。
蝙蝠「コンケツ」
魔法使い「どうした?」
蝙蝠「ダレカシヌト、カナシイ?」
魔法使い「悲しいよ。取り残されてしまうことが、悲しい」
蝙蝠「ソッカァ」
魔法使い「あなたは?」
蝙蝠「マダダレモイナクナッテナイカラ、ワカンナイ」
959:1:2012/08/28(火) 23:22:36.76 ID:Kid2apjAO
魔法使い「そうなんだ」
蝙蝠「デモ、ソッカ、サミシイノカ」
魔法使い「うん」
蝙蝠「コンケツ、シナナイデネ。ボク、サミシイノキライ」
魔法使い「…ああ。そっちも死ぬんじゃないぞ?」
蝙蝠「モチロン!」
魔法使い「私の名前は魔法使いだ」
蝙蝠「ウン?」
魔法使い「混血は名前じゃないんだ。魔法使いが名前」
蝙蝠「マホウツカイ」
魔法使い「そう」
蝙蝠「マホウツカイッテヨンダホウガイイ?」
魔法使い「そのほうが、仲良しって感じでいいじゃないか」
960:1:2012/08/28(火) 23:27:27.72 ID:Kid2apjAO
蝙蝠「ナカヨシ!」
魔法使い「そう、仲良し。私は、仲良しの子には寂しくさせないよ」
蝙蝠「ジャ、マホウツカイトマオウサマ、ナカヨシ?」
魔法使い「え……どうだろ」
蝙蝠「ア、デモ、マオウサマナキソウナカオ、シテタトキアルヨ!」
魔法使い「あいつが?」
蝙蝠「マホウツカイノネ、アノシンジュノヤツヲワタシタトキ」
魔法使い「ああ、あの“人魚”ときの」
蝙蝠「ナンカ、モッテイタノガイガイダッタミタイ」
魔法使い「そうなんだ…」
961:1:2012/08/28(火) 23:38:52.49 ID:Kid2apjAO
蝙蝠「ナンデモッテタノ?」
魔法使い「なんとなく、かなぁ。なんでだろ」
蝙蝠「アトネアノトキ、マオウサマ、マホウツカイイナクテ」
蝙蝠「チョットサミシカッタンダヨ。ボクガオモウニ」
魔法使い「そんなことはないんじゃないか?いじる相手がいなかったからとか」ハハハ
蝙蝠「………」
魔法使い「……あ」
蝙蝠「ドウカシタ?」
魔法使い「あの真珠の、魔王が持ちっぱなしみたいだ」
蝙蝠「カエシテモラワナイトネ」
魔法使い「ふふ、そうだな。早く返してもらわないと」
962:1:2012/08/28(火) 23:52:52.06 ID:Kid2apjAO
蝙蝠「モウチョットデカイダンオワルネ」
魔法使い「長かったな」
蝙蝠「ツカレタ?」
魔法使い「ううん。今この状態なら、全然」
蝙蝠「ボクハマホウツカイにシガミツイテルシネ」
魔法使い「そうだな」
蝙蝠「ダケドサ、イマツカレスギタラ、カエリタイヘンダヨネ」
魔法使い「少し休んで帰るよ。どんな戦闘になるかは分からないけど」
蝙蝠「ソダネ」
魔法使い「ああ」
蝙蝠「マホウツカイ」
魔法使い「うん?」
963:1:2012/08/28(火) 23:56:54.85 ID:Kid2apjAO
蝙蝠「マホウツカイハ、マオウジョウスムノ?」
魔法使い「いやぁ…難しいだろうな…」
蝙蝠「ムズカシイカナ?」
魔法使い「私のことを嫌がる人がいるかもしれないし…」
蝙蝠「マオウサマサエイレバ、ラクショーダヨ!」
魔法使い「はは、そうかもな」
蝙蝠「コンド、マホウオシエテネ!マホウツカイミタイニツヨクナル!」
魔法使い「あれれ、強いんじゃなかったのか?」
蝙蝠「マホウハマダマダナノ!アトハツヨイノ!」
魔法使い「はいはい分かった分かった――さぁ、どの部屋に行けばいいのかな」
973:1:2012/08/29(水) 21:15:39.47 ID:TQPwLVvAO
――牢の近く
剣士「はぁっ!」バキッ
老兵「とうっ!」バコ
剣士「ここの見張りはこいつらだけか」
老兵「だな」
僧侶(神に仕えるものとしてこれは辛いですね…)
僧侶(口出しなんかして皆さんで死ぬのは目に見えてますからいいませんが)
剣士「鍵はっと……一個あった」ゴソゴソ
老兵「こっちは一個だけだ」
剣士「あ、こいつも一個」
僧侶「この人も一個ですね…」
剣士「……あと七人、地道に調べろと……?」
老兵「時間食うなこれ…」
974:1:2012/08/29(水) 21:19:58.70 ID:TQPwLVvAO
剣士「」ゴソゴソ
老兵「」ゴソゴソ
僧侶「失礼します…」ゴソゴソ
剣士「これいちいち差し込まないといけないのか」ゴソゴソ
老兵「面倒くさいが、良く考えたものだな」ゴソゴソ
僧侶「すみませんすみません」ゴソゴソ
剣士「よしっ、これで最後だな」
老兵「じゃあ奥へ進もう」
剣士(……なんか“勇者”になった気分だな…)
剣士(あいつがいたらどんなことをしただろうか)
僧侶「剣士さん?」
剣士「あっ、い、いやなんでもないぞ」
僧侶「?」
975:1:2012/08/29(水) 21:24:57.19 ID:TQPwLVvAO
コツコツ
剣士「灯りがろうそくだけっていうのも不気味だな」
僧侶「なにか出てきそうです…」
老兵「……」キョロキョロ
剣士「トラップの類いはなさそうだな」キョロ
老兵「逆に気味が悪い」
剣士「ああ…まるで来ることを望まれているようだな」
老兵「何故だ?」
剣士「オレも知りたい」
僧侶「わたしも、どうしてこんなことをしているか不明です…」
剣士「一番奥に部屋が――」
老兵「用心しろ」
剣士「忠告ありがとう」ゴクリ
976:1:2012/08/29(水) 21:29:11.24 ID:TQPwLVvAO
僧侶「……」
剣士「僧侶は、どうやって大臣と知り合ったんだ?」
僧侶「い、今それいいますか?」
剣士「緊張しすぎで気をそらしたいんだよ現実から」
僧侶「それもそれでどうなんでしょうね…」
僧侶「わたしは元々孤児でした。それで、戦争が終わる前に大臣さんにあったんです」
僧侶「『願いはあるか』と聞かれて――わたしは、『みんなの怪我を治したい』といいました」
僧侶「その時、小瓶にいれられた液体を飲むようにいわれて――」
剣士「飲んだのか」
977:1:2012/08/29(水) 21:33:59.42 ID:TQPwLVvAO
僧侶「いいえ。その時は飲みませんでした」
剣士「え?」
僧侶「というより、引っ込められたんです」
老兵「引っ込められた?」
僧侶「それからわたしに、『“僧侶”になりたいか』と言いまして。頷きました」
剣士「そしたら?」
僧侶「引き取られました。それで、いくつか治癒魔法を習ったり」
老兵「大臣から?」
僧侶「いえ、専門の人からです。確か三つ子でした」
剣士「三つ子ってすごいな」
僧侶「まあもちろん」
978:1 ミス:2012/08/29(水) 21:34:51.50 ID:TQPwLVvAO
僧侶「いいえ。その時は飲みませんでした」
剣士「え?」
僧侶「というより、引っ込められたんです」
老兵「引っ込められた?」
僧侶「それからわたしに、『“僧侶”になりたいか』と言いまして。頷きました」
剣士「そしたら?」
僧侶「引き取られました。それで、いくつか治癒魔法を習ったり」
老兵「大臣から?」
僧侶「いえ、専門の人からです。確か三つ子でした」
剣士「三つ子ってすごいな」
僧侶「ええ。ちょっとうざったい人たちでした」
979:1 :2012/08/29(水) 21:38:48.31 ID:TQPwLVvAO
老兵「それで“僧侶”として?」
僧侶「まだです。…女ですから魔力はありませんし、かすり傷を治すのでやっとでした」
剣士「……」
僧侶「それで、大臣さまからとある液体をもらったんです。なんでも、魔力を出すものとか」
老兵「へぇ」
僧侶「それを飲んだら今みたいな治癒魔法を使えるようになったんです」
剣士「……僧侶にとって」
僧侶「はい」
剣士「大臣は、どんな存在だ?」
僧侶「――お父さん、みたいな存在でしょうか」
剣士「……そうか」
980:1 :2012/08/29(水) 21:41:16.13 ID:TQPwLVvAO
剣士「先に謝っとく。ごめん」
僧侶「え?」
老兵「……」
剣士(大臣を切ったら僧侶に嫌われるだろう)
剣士(でも――“剣士”は情に流されてはいけないんだ)
剣士「」ピタ
僧侶「ここですね…ここしかありませんが」
老兵「鍵は?」
剣士「開いているみたいだ。――離れててくれ」
――キィ
981:1 :2012/08/29(水) 21:47:05.52 ID:TQPwLVvAO
見張り「来たか。やれ!」
見張りB~G「オオ!!」バッ
剣士「っちくしょ!」シャキン
老兵「懲りずに続々と!」シャキン
ふと僧侶は左側の壁が気になった。
何故だろう。とても嫌な予感がする。
交戦する剣士たちの背中を眺め、決心したようにふたりの襟首を背伸びしてつかむ。
そのまま後ろに倒れ込んだ。
老兵「な―――」
剣士「そうり―――」
文句が最後まで出るのも待たずに、鼓膜を震わす破壊音が牢に響いた。
さっきまで剣士と老兵がいた場所が瓦礫で埋もれていた。
982:1 :2012/08/29(水) 21:55:33.57 ID:TQPwLVvAO
剣士「」
老兵「」
僧侶「だ、誰が……!?」
僅かにかぶった砂や小石を払いながら立ち上がる。
ここだけは丈夫なランプだったようで、辺りが無事に明るくまず安心する。
奥の鉄格子の向こうにはポカンとする国王と動かない青年がいたが今は後回しにする。
この惨事を起こした主が敵かもしれないのだ。
ぽっかりと空いた穴の向こう、異形のシルエットが浮かび上がった。
人の形と、そこから生える翼。
「ムチャクチャダヨ!トイウカ、キシカンアルヨ!」
「気のせいじゃないか?」
そして、異形のものは僧侶を見て軽く手をあげる。
どこか鳥の手に見えるのは気のせいだろか。
魔法使い「やあ、僧侶。ごめん、平気だった?」
いっそ、その姿は恐ろしさを通り越して美しかった。
988:1 埋めネタ:2012/08/29(水) 22:15:59.46 ID:TQPwLVvAO
【蝙蝠一族ノオキテ!】
蝙蝠父「イイカ、我ガ子ヨ」
蝙蝠「ウン、ナァニオトウサン」
蝙蝠父「明日カラ、オ前ハ、シバラクヒトリデクラス」
蝙蝠「ソウダネ!ソウイウキマリダカラネ!」
蝙蝠父「泣クンジャナイゾ?」
蝙蝠「ナカナイヨ!」
蝙蝠父「危ナイコトスルンジャナイゾ」
蝙蝠「シナイヨ!ダブン」
989:1 埋めネタ:2012/08/29(水) 22:16:25.88 ID:TQPwLVvAO
蝙蝠父「体調ハ万全ダロウナ?」
蝙蝠「モチロン!」
蝙蝠父「モシ本当ニ困ッタ事ガアッタラ、パパヲ呼ンデイインダゾ」
蝙蝠「大丈夫ダヨ」
蝙蝠父「一時間二、五回グライ様子ヲ見二行クカラナ」
蝙蝠「ソレハウザイヨ、オトウサン」
蝙蝠父「ダッテダッテ、オマエガイナクナッタラパパハ死ンデシマウヨ」
蝙蝠「タイヘンダネ」
990:1 埋めネタ:2012/08/29(水) 22:17:07.76 ID:TQPwLVvAO
蝙蝠父「本当ハオマエヲ旅タタセタクナインダァァァァ」オイオイ
蝙蝠母「今ノウチ二、イッチャイナサイ」
蝙蝠「ウン。オカアサン、ゲンキデネ」
蝙蝠母「アナタモネ。元気二帰ッテ来テチョウダイ」
蝙蝠「イッテキマス」
蝙蝠父「ウワァァァァァンイカナイデ――プギャッ」
蝙蝠母「サァ今ヨ!オ父サンハ押サエテルカラ!」
蝙蝠「ナカヨクネー」パタパタ
その数ヶ月後、魔法使いと会うことになる。
992:1 埋めネタ:2012/08/29(水) 22:23:21.01 ID:TQPwLVvAO
【魔王の一日スケジュール】
魔大臣「……」
側近「どうしたんだ?」
魔大臣「いや…魔王さまの一日を記してみているだが…」
起床
↓
緊急書類チェック
↓
朝食(抜きの場合も)
↓
会議
↓
書類チェック、作成
↓
会議
↓
昼食、散歩(30分)
↓
会議
↓
側近「あれ、おかしいな。前が滲んで見えない」
魔大臣「もはやこれ以上書けない」
993:1 埋めネタ:2012/08/29(水) 22:23:47.70 ID:TQPwLVvAO
【先代魔王の一日のスケジュール】
魔大臣「こんなの出てきた」
側近「先代さまの?」
魔大臣「勤めたての時に書いたようだ」
側近「どれどれ――」
起床
↓
脱走
↓
説教
↓
夕食
側近「………」
魔大臣「………」
魔王「そろそろ会議が始ま――なんだこの微妙な空気」
引用元
魔王「おれと手を組め」魔法使い「断る」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1339856123/