広告募集してません(半ギレ)
ヘッドライン

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | TB(-) | CM(-)

吸血鬼「誰か倒れてる」

2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 19:45:16.69 ID:G4eWY/6P0

日は昇っていないので、森の中は泣けるほどに暗い。

が、吸血鬼は夜目が利く。暗闇の中を見てみると、そこには確かに人間の少女が倒れていた。

吸血鬼「たまに散歩でもと思って出かけたら・・・何なんだいこの展開」

厄介だなー、なんて呑気に思いながら近付いてみると、状況はこれっぽっちも呑気な物じゃなかったらしい、意識が無いようだった。

吸血鬼「これは・・・放っといたら確実に死ぬな」

そして少女を担ごうとし、触れる前に手が止まった。

躊躇いが生じた。

自分は、彼女とは違う存在。人に仇為す鬼。そんな化物が──

吸血鬼「──そんな事、知るか」

迷いを振り切り、少女を抱き上げる。少女の体はまだ暖かかったが、この温もりが奪われるのも時間の問題だろう。

散歩、中止。人命救助最優先。



引用元
吸血鬼「誰か倒れてる」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1335090864/
3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 19:46:31.07 ID:G4eWY/6P0

~数十分後~



吸血鬼「・・・取り敢えずベッドに寝かせたけど、大丈夫なんだろうか」

看病なんてした事が無いから、よく分からない。

吸血鬼である僕の願いが神に届くのかどうかは知らないが、無事でありますように、と祈りつつ、寝ている少女を眺める。

吸血鬼「綺麗な髪だなー・・・」

先程から気になっていたのだが、この少女、髪の色が銀髪なのだ。キラキラとランプの光に照らされて光輝いている。

吸血鬼「僕の眼が狂ってなければ、人間の子だよなー・・・呪いをかけられてる訳でもなさそうだし・・・」

吸血鬼の紅い眼は、同族を識別し、魔法や呪術を認識、把握する。だから、この少女が魔族ならば分からない訳はないのだが──

吸血鬼「と、なると・・・『生まれつき』、って事なのかな?」

ごく稀に、普通とは違う子供が生まれるという話を昔聞いた事がある。

別に親の呪いが引き継がれたとか、魔族の血が混じっているとか、生まれつき魔翌力が強大過ぎてとか、そういうどこかの病気にかかった十四歳の人間の妄想みたいな理由がある訳じゃなく、ただ単に『そうである』人間が、少ないが存在するらしい。彼女もまたその一人、と言う事なのだろう。

吸血鬼「・・・ま、どっちでも良いけどね?どうせこの子が目を覚ましても聞けないし」

少女が目を覚ましても、怯えられるだろうから。元々そう言う事を承知で拾ってきたのだから、別に何とも思わないが。



4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 19:48:52.00 ID:G4eWY/6P0

~数時間後~



読んでいた本を読み終わった瞬間、タイミングを見計らったかのように少女が小さく声を上げた。どうやら、お目覚めのようらしい。

吸血鬼「あ、おはよう」

少女「ん・・・あ、あれ?ここは・・・?」

少女がベッドからゆっくり体を起こし、僕の方を髪の色と同じ銀色の目で見て、息を飲んだ。

少女「・・・ひッ」

吸血鬼「やあ。さっきの質問にお答えすると、ここは僕の家だよ。何でか知らないけど森ん中で倒れてたからさ。放っておいても良かったんだけど、そのまま死なれても困るし、ここまで運んだんだ」

少女「き、吸血鬼・・・」

吸血鬼「うん。吸血鬼だよ。君が倒れてた森の隅っこの家に住んでるから、ほとんど人は来ない。だからここに住み始めて、今までだーれにも会ったことなかったんだ。おめでとう、君が最初のお客様だぜ」

少女「あ・・・う・・・」

少女の恐怖を紛らわそうと冗談っぽく言ってみたが、余計に怖がらせてしまったらしく、少女の顔が恐怖にひきつる。

まあ、無理もない。自分を助けたのが吸血鬼だった、なんて、笑いたくなるような冗談だ。

何をしても、何もしなくても、恐怖され、拒絶され。

こういう反応を見ると、やはり吸血鬼と人間は相容れないのだと実感する。結局、交わる事なんざ出来やしない。

吸血鬼「別に取って喰おうって訳じゃないんだけどね・・・ほら目が覚めたんならとっとと出ていってくれ」

少女「・・・」

吸血鬼「・・・何で逃げないの?」

少女「・・・」

少女は黙りこくって泣きそうな顔をしていた。僕への恐怖のせいだろうとは思うのだが、どうもそれにしては変だ。僕に意識が向いていない気がする。

吸血鬼「・・・ねえ、君。もしかして、怪我してたりする?」

少女「・・・はい」

吸血鬼「そうか、ごめんね。ここまで運ぶのに必死で気付かなかったよ」

謝りつつ、少女に向かって手の平を向ける。

少女「ひ・・・」

吸血鬼「そんなに僕の一挙手一投足に過剰反応しなくても良いと思うんだけどなぁ」

愚痴をこぼしながら手の平に魔翌力を集める。そしてその魔翌力を治癒魔法に変換し、少女に向かって放った。

ポウ、と白い光が少女を取り囲む。

少女「あ・・・脚が・・・」

吸血鬼「ああ、脚を怪我してたのか。ま、今の魔法で些細な傷とか体調もすっかりさっぱり元通りになってるから安心しなよ」

少女「な、何で・・・」

吸血鬼「僕は吸血鬼だけど、白魔法は得意でね。昔取った杵柄って奴だよ」

少女「・・・そ、そうじゃなくて・・・何で、治してくれたんですか?」



5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 19:49:49.38 ID:G4eWY/6P0

少女に聞かれて、少し戸惑った。まず、人間がここまで長い間、僕と同じ空間に居る事自体異常だし、それに。

少女を助けた事に、理由なんて無かったから。

吸血鬼「・・・何を言うのかと思えば。そんな事聞いてどうすんの?答える義務は僕には無いです」

少女「・・・」

吸血鬼「何見てんのさ」

少女「・・・」

吸血鬼「・・・もしかしてとは思うけど君、僕を良い人とでも思ってるの?」

少女「・・・」

吸血鬼「・・・まあ僕は吸血鬼だから、人じゃないんだけどね。良い吸血鬼だと思ってるの?って聞くべきだった?」

少女「・・・」

吸血鬼「・・・面倒だなもう。別に、理由なんて無いよ。散歩してたら君が倒れてた、そのままほっとくのも忍びないからここまで運んだ、んで君が怪我してるって言ったから治した。ここまでの過程に理由なんざこれっぽっちも存在しない」

少女「・・・わ、私をわざと逃がして、追いかけ回そうと思ってるんじゃなかったんですね・・・」

吸血鬼「君はどれだけ僕を悪逆非道、冷酷無比な吸血鬼だと思ってるんだよ。まあ普通の吸血鬼は悪逆非道冷酷無比だろうからそう思われるのも仕方ないんだけど、もう外は日が出てて木々の隙間から入り込む太陽光線で体が焼けちゃうから僕は今はこっから出れねーよ。そこのカーテン開けてみりゃ分かると思うけど」

少女「あ・・・本当だ」

吸血鬼「君を見つけた時はまだ暗かったんだけどね・・・とにかく、僕は君を襲う気は無い。追いかける事も出来ない。だからさっさと帰れ」

少女「・・・か、帰れ、って言われてもですね・・・」

吸血鬼「用心深いなあ。全く、本当に子供かよ・・・じゃあ、はいこれ」

僕が手を一振りすると、銀のナイフが十本ほど現れ、床に落ちた。

少女「な、何ですか、これ・・・」

吸血鬼「銀のナイフだよ。それで僕を刺せば良い。試したことは無いから分からないけど、多分数時間は動けなくなると思う」

少女「いえ、あ、あのですね・・・」

吸血鬼「僕が自らにぶっ刺した方が危険が少なくて済むかな?」

少女「そ、そうじゃなくて・・・帰れないんです、私」

吸血鬼「・・・え?」

少女「さ、さっきは、疑ったり、怖がったりしてごめんなさい・・・助けてもらったのに」

吸血鬼「・・・逆に怖がらない方がおかしいと思うぜ」

少女「ま、まだ、ちょっと怖いけど・・・で、でも。あなたは、良い人だと思うんです。だから、言います。私、村から逃げて来たんです」

吸血鬼「・・・何だって?」



6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 19:57:20.93 ID:G4eWY/6P0

~間章~



──なぁ、お前さ。あの子の事、好きなのか?

・・・そんな事、これっぽっちもちっとも一ミリ足りとも思ってないけど?

──・・・図星ってか。

違うっつってんだろ。

──でも、止めといた方が良いぜ?あの子、ちょっと変わってるだろ?

え?まぁ、面白い子だよね。

──面白いっつーか、変だろ?

変じゃないよ、面白いよ。

──・・・警告。あの子は止めとけ。

──分かったな。



~間章~



7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 19:58:09.98 ID:G4eWY/6P0

少女「――と、言う訳なんです・・・」

吸血鬼「・・・そりゃまた、随分と人間らしい」

少女の住んでいる村、つまりこの僕が居る森を抜けた先にある村では、何でも流行り病が蔓延しているらしい。

もう、助からない人も居るのだとか。


そんな事、もう長いこと生きてる僕からすればよくある事なのだが、死んでいく家族、弱る体、いつ来るかも分からない最期、村人達は、もう耐えられなかったのだろう。流行り病の『原因』を、この少女に押し付けたのだ。

おそらくは、その目と髪の色だけで。

少女「昨日突然、『お前が居るからいけないんだ』って言われた時には、もう、どうしたら良いのか分からなくなって。それかすぐに、追いかけられて・・・」

吸血鬼「・・・人間が自分達の理解出来ない物の原因を仕立て上げ、それを排除する事で日々の安寧を取り戻そうとする。昔からよく行われてた儀式の一種だね。要するに君は人柱みたいな物さ。ちょっと違うけど」

少女「・・・き、吸血鬼さん。あなたから見ても、私の目と髪、そんなに変ですか・・・?確かに、他の人とは違いますけど・・・」

吸血鬼「化物の僕にどんな答えを求めてるのかは分からないけど、君が一番変わってるから、原因を押し付けられた。それが答えだろ」

少女「・・・」

吸血鬼「でも、綺麗だと思うよ?僕みたいに赤黒く染まった濁った目よりずーっとね」

反吐が出そうな話だ。でも、それが人間の本性であり、本能。自分を保つ為には、自分が生きていく為には、どんな犠牲を払おうが知ったこっちゃない。世の中、皆そんな物。

だからこの子がそういう目に合っているのも、偶然であると共に必然なんだろう。目と髪の色が『偶然』生まれ持った物であっても、その偶然生まれ持った物のせいで虐げられる事は『必然』だった。

そんな彼女の目と髪を、日和見主義者な僕は綺麗だなんて言ってしまったが、あまり気にしていないようだった。



9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 20:04:43.69 ID:G4eWY/6P0

少女「そ、そうですか・・・」

吸血鬼「・・・うん。でも、ここまでの話を聞いて、一つ質問がある」

少女「な、何ですか?」

吸血鬼「それを僕に話して、僕にどうして欲しい訳?まさか、ここに住みたいなんて言わないよね」

少女「・・・だめ、ですか・・・?」

吸血鬼「・・・はい?」

耳を疑った。僕の家に住みたい、だって?

冗談半分で言った言葉が、まさか。

しかし、少女の顔は、至って真剣そのものだったし、何かに怯えている様にも見えた。

僕ではなく、何かもっと、目の見えない、人間の狂気、とでも言うべき物に。



10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 20:06:54.45 ID:G4eWY/6P0

吸血鬼「・・・本気で、言ってるの?」

少女「は、はい。何でもします、血を吸ってくれても構いません・・・だから・・・」

吸血鬼「・・・少女ちゃん、何回も言うぜ。僕は悪逆非道でも冷酷無比でもねーし、些細な親切の代償に血を要求したりしねーよ」

少女「・・・え?」

吸血鬼「好きなだけ泊まってけば?」

少女「じ、じゃあ」

吸血鬼「二階に空き部屋があるから、好きに使ってくれて良いよ」

そう言ってベッドから離れようとすると、後ろから僕のシャツの裾が引っ張られた。

グイッ、と。

後ろを振り向いた瞬間、腹部に柔らかな衝撃が走る。

吸血鬼「・・・どうしたの、少女ちゃん」

少女「・・・ううっ・・・ひぐっ・・・」

吸血鬼「・・・泣いてるの?」

少女「・・・ごめんなさい・・・」

吸血鬼「・・・別に、良いよ。好きなだけ泣きな」

その後、少女が泣き止むまでそう時間はかからなかった。



11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 20:07:52.53 ID:G4eWY/6P0

吸血鬼「・・・本気で、言ってるの?」

少女「は、はい。何でもします、血を吸ってくれても構いません・・・だから・・・」

吸血鬼「・・・少女ちゃん、さっきも言ったろ。僕は悪逆非道でも冷酷無比でもない。些細な親切の代償に血を要求したりしねーよ」

少女「・・・え?」

吸血鬼「好きなだけ泊まってけば?」

少女「じ、じゃあ」

吸血鬼「二階に空き部屋があるから、好きに使ってくれて良いよ」

そう言ってベッドから離れようとすると、後ろから僕のシャツの裾が引っ張られた。

グイッ、と。

後ろを振り向いた瞬間、腹部に柔らかな衝撃が走る。

吸血鬼「・・・どうしたの、少女ちゃん」

少女「・・・ううっ・・・ひぐっ・・・」

吸血鬼「・・・泣いてるの?」

少女「・・・ごめんなさい・・・」

吸血鬼「・・・別に、良いよ。好きなだけ泣きな」

その後、少女が泣き止むまでそう時間はかからなかった。



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 20:10:46.51 ID:G4eWY/6P0

~数十分後~



吸血鬼「えーと・・・あれ?どこにしまったかな・・・」

少女「吸血鬼さん、何を探してるんですか?」

吸血鬼「ん?ああ、君が着る服を探してたんだ。昔、お世話になった女性の物なんだけど・・・ってどうしたんだいそんな怖い目をして」

少女「き、吸血鬼さん・・・何でそんな女の子の服を大事に・・・っ」

吸血鬼「何を勘違いしてるのか知らないけど、ただの思い出だから。その子、結構前に死んじゃってね」



13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 20:12:40.47 ID:G4eWY/6P0

少女「・・・あ・・・」

吸血鬼「ずっと倉庫の奥で埃被ってるよか誰かに使われた方が、彼女も喜ぶだろ」

少女「ご、ごめんなさい・・・」

吸血鬼「謝んなって。生きてる人間が一番大事なんだよ、死んだ奴に縛られてちゃいけない」

少女「・・・はい」

吸血鬼「えーと・・・あ、あった。ほい」

僕は倉庫から発掘した、木箱を少女に手渡した。木箱の全ての面には、魔法陣が書き込まれている。

少女「これ・・・」

吸血鬼「ちょっとばかし細工しといたんだ。防腐加工と、防虫加工。開けてみなよ」

少女「わぁ・・・」

木箱の中から出てきたのは、白いワンピース、レースの付いたドレス、ダッフルコート、色々な洋服だった。

吸血鬼「多分サイズは合ってると思うんだ
けど、どうかな?」

少女「はい、合ってると思います!!ありがとう!!」

少女は満面の笑みを浮かべて、洋服を抱き締めた。

それを見て、僕は何故か、洋服の元の持ち主の事を思い返した。



14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 20:14:03.03 ID:G4eWY/6P0

~間章~



──はい、紅茶。

ありがと、じゃあ頂きます。

──クッキーもあるからね。ゆっくり味わいなさいな。

やっぱり、君の淹れる紅茶は美味しいな。また今度教えてよ、美味しい紅茶の淹れ方。

──それはダーメ。

えー。何でさ?良いじゃん別に。

──自分で淹れられるようになったら、私が貴方に紅茶を淹れる機会が減るじゃない。

僕は紅茶を飲みに君の所に来てる訳じゃ・・・

──それぐらい分かってるわよ。でも、建前が無いと煩い人達も居るの。誰か、私の事変だって、言ってなかったかしら?

友達が言ってたけど、別に気にしてない。僕は、誰が何と言おうと君が好きだからさ。

──あら、嬉しい事言ってくれるじゃない。じゃあ、もし私が村の皆に嫌われても、貴方だけは好きでいてよね。

──約束よ?



~間章~



15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 20:17:09.51 ID:G4eWY/6P0

その日の夜、僕はテーブルに腰掛け、ボケーっとしていた。

何故なら、今日から食事を作る必要が無くなったからだ。

少女「あ、あの、吸血鬼さん。食事は二人分で、良いんですよね?」

吸血鬼「うん。別に作るのが面倒なら君の分だけ作れば良いよ」

少女「そ、そんなつもりじゃ・・・」

吸血鬼「じゃあどういうつもり?」

少女「・・・私の血を、吸うのかなあ、って」

テーブルから転がり落ちそうになり、必死でバランスを取る。

吸血鬼「・・・あのね」

少女「だ、だって、吸血鬼って、血がお食事なんでしょう?」



16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 20:21:05.94 ID:G4eWY/6P0

吸血鬼「まあ、ね」

少女「じゃあ・・・私の血、要ります?」

吸血鬼「・・・別に飲まないと生きていけないって訳でも無いんだよ?」

少女「そ、そうなんですか!?」

吸血鬼「うん」

最近、と言うか、近年の人間達は吸血鬼を恐れる余り、凄まじく性質の悪いおぞましい怪物と認識しているらしい。まあそれはあながち外れではないし、そういう吸血鬼が多数存在するのは確かだから、誤解から生ずる差別は甘んじて受けるが、流石に共生する人間の誤解は矯正しないと。

吸血鬼「吸血鬼にとって、確かに血は大切だ。でもそれは、無ければならない物と言う訳でも無い。そうだな・・・言わば人間にとってのご馳走みたいなもんだよ」



17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 20:29:40.80 ID:G4eWY/6P0

少女「ご馳走、ですか」

吸血鬼「実際には少しニュアンスが違うんだけどね。血を飲まないと吸血鬼は段々弱っていくし」

少女「弱る、って・・・じ、じゃあ駄目じゃないですか」

吸血鬼「生命維持には普通の食事に酸素と水分があれば十分なんだよ。血を飲まないと、吸血鬼としての力が弱るってだけ」

少女「・・・どういう事ですか?」

吸血鬼「少しずつ人間に戻ってくって事」

少女「も、戻れるんですか!?」

少女が驚いた表情を見せる。

吸血鬼「うん。ずっと血を吸わなければいつかはね」

少女「で、でも・・・そんな事、聞いた事なかったです」

吸血鬼「まあ、戻れた奴が居ないしね」



18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 20:31:36.60 ID:G4eWY/6P0

少女「え・・・?」

吸血鬼「血を吸わなければ、って言っただろう?」

肩をすくめて溜め息を吐く。悲しいかな、吸血鬼には一つの病的な渇望が存在する。

吸血鬼「吸血鬼には『血への渇望』ってのがあるんだよ。血を飲まない期間が続くと、どうしようも無いほどに体が血を求め始めるんだ。その渇望に、血を求める衝動に、吸血鬼は耐えられない。そうして、人間に戻りたいと言う気持ちは消え去る。最終的には、血は飲むけども余り人を傷付けたくはない、みたいな矛盾した吸血鬼が誕生する訳」

少女「・・・そんな」

吸血鬼「と、言っても、まず人間に戻ろうとする奴が稀なんだけどね。大概の吸血鬼は自分の力に溺れて酔ってるし、純粋な吸血鬼も結構居るし」

少女「純粋な吸血鬼、ですか?」



19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 20:33:50.75 ID:G4eWY/6P0

吸血鬼「そ。生まれついた時から吸血鬼だった奴。こいつらは血を飲む事に躊躇いなんざ持ってないし、血を飲まないからと言って人間になる訳でもない。だから、人間に戻れる奴は、元々人間だった連中だけなんだよ」

少女「・・・吸血鬼さんは、どっちなんですか?」

吸血鬼「え?」

少女「昔は、人間だったんですか?」

吸血鬼「・・・一応、ね」

すると、少女は調理している手を止め、こちらに駆け寄り、僕の首筋を眺め始めた。

少女「噛まれた後、無いですよ?」

吸血鬼「無いね」

少女「・・・でも、人間だったんじゃ?」

吸血鬼「少女ちゃん、吸血鬼になる条件て、何だと思う?」



20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 20:36:31.39 ID:G4eWY/6P0

少女「え?それは、えっと・・・血を吸われる事、じゃないんですか?」

吸血鬼「ハズレ。罰ゲーム」

少女「えぇ!?な、何ですか罰ゲームって・・・」

吸血鬼「冗談だよ」

少女「・・・いじわる」

頬を膨らまし、少女が睨んでくる。いじわるって言われても、僕、化物だし。

吸血鬼「ふざけるのはここまでにして、答え会わせといこうか。人間が吸血鬼になる条件は、吸血鬼が自前の力を人間に注ぐ事」

少女「注ぐ・・・?」

吸血鬼「さっき少女ちゃんはこう言ったろ?『血を吸われる事で人間は吸血鬼に変わる』、って。でも、それなら吸血鬼は、一人の人間から一度しか血を摂取出来ないって事になるだろ?血を吸われた奴は人間じゃなくなるんだしさ。そんな事になったら、多分今ごろこの世に人間は存在しないよ。代わりに血が吸えずに発狂寸前の僕達が、居もしないエサを求めて、跳梁跋扈してる筈だ。夜限定で」



21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 20:45:45.20 ID:tSJl8C+Q0

少女「・・・そう言われれば、確かに・・・」

吸血鬼「吸血鬼は、血を吸う以外に、人間に自分の力を注入出来る。それで自分の同族を増やせるんだ。まぁ、与えられた力に人間の体が耐えられず自壊する事もあるし、正直な所仲間なんざ必要ねーから、やる意味は無きに等しいけどね」

少女「そうだったんですか・・・じゃあ、吸血鬼さんは、他の吸血鬼さんに力だけ貰った、って事ですか?」

吸血鬼「そうなるね。普通の吸血鬼は、吸血する時に、時たま気分でその人間を吸血鬼にしたりするんだけど、僕を吸血鬼にした奴は変わっててさ」

少女「そうですか・・・って、いけない!お料理の途中だったんでした!」

そう言って、少女はパタパタと走っていった。



22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 20:46:28.59 ID:tSJl8C+Q0

~20分後~

少女「どうぞ!腕に寄りをかけて作りましたよ、今日の晩御飯は」

吸血鬼「いつもは腕に寄りをかけてないの?」

少女「そ、そういう訳じゃないですけど・・・はい、食べてみて下さい」

少女が箸を手渡してくる。僕はそれを受け取り、眼前のテーブルに並べられた料理を眺めた。

吸血鬼「確かに、美味しそうだね。いただこうかな・・・」

何故か緊張した面持ちの少女を視界の端に捉えつつも、僕は料理を口に運んだ。

瞬間、僕の舌を衝撃が駆け抜けた。

吸血鬼「・・・う、美味いね。君がこんなにお料理上手な女の子だったなんて、びっくりしたぜ」

少女「・・・あ、ありがとうございます。良かったぁ、お口に合わなかったらどうしようかと思ってたんです」



23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 20:47:51.04 ID:tSJl8C+Q0

ありきたりな感想しか述べられなかったのにも関わらず、少女はほっとした表情を浮かべていた。いつもの僕ならここで香り、食感、味に見た目、隈無く過不足無くむしろ相手が面倒になってくる程に称賛の限りを尽くすのだが、美味し過ぎて、舌が回らない。

少女「まだありますから、一杯食べてくださいね」

吸血鬼「ありがとう。君も、一緒に食べようよ。ほら、そこ座って」

少女「あ、は、はい。いただきます」

吸血鬼「少女ちゃんは、料理はお母さんに習ったの?」

少女「はい。他にもお裁縫とか、習ってました。もう、居ませんけど・・・」



24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 20:48:56.60 ID:tSJl8C+Q0

吸血鬼「・・・亡くなってるのか」

少女「流行り病で、一年前に」

吸血鬼「親父さんは?」

少女「私が産まれてすぐに、離婚したそうです」

吸血鬼「・・・そっか。嫌な事、思い出させたかな」

少女「『生きてる人間が一番大事』、なんですよね?気にしてないですよ」

吸血鬼「さっき僕にすがりついて泣いてた奴がよく言うぜ」

少女「そ、それは・・・その話は卑怯です」

吸血鬼「卑怯、か・・・それは僕にとっての貶し文句にはなりえない。僕は人間じゃないしね」



25:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 20:52:59.84 ID:tSJl8C+Q0

少女「あ、そう言えば」

僕の屁理屈をあっさりスルーし、少女が何かを思い出したのような声を上げた。

少女「人間じゃない、で思い出したんですけど、吸血鬼さんは人間に戻れるんですか?確か、昔は人間だったんですよね?」

吸血鬼「うん。戻れると思うよ。何せ随分長いこと血を吸ってないし」

少し思い出そうと努力してみたが、最後に血を吸ったのがいつか、全く思い出せない。

少女「やっぱり、戻りたいんですか?」

吸血鬼「どうなんだろうね。戻りたい、んだろうか」

少女「戻りたいんだろうか、って・・・戻りたいから血を飲んでないんじゃ?」

吸血鬼「いや、別にそういう訳じゃないんだ。ただ、僕は吸血と繁殖を別々に出来なくてね」



26:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 20:54:28.05 ID:tSJl8C+Q0

少女「どういう、事ですか?」

吸血鬼「僕が血を吸うと、相手が吸血鬼になっちゃうって事。そういう訳で僕は血を吸えないのさ。だから君が血を吸って良いよって言ってくれても、気持ちだけしか受け取れない」

少女「た、確かに吸血鬼になっちゃうのはちょっと・・・でも、血を飲まない事は耐え難い苦痛じゃなかったんですか?」

吸血鬼「耐え難い苦痛なんざ、僕にとっては赤子が手を捻られるレベルの苦しみでしか無いぜ」

少女「よく分からないですけど・・・とにかく、吸血鬼さんは、人間に戻れそうって事ですよね」



27:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 20:55:04.85 ID:tSJl8C+Q0

吸血鬼「まあ、うん。そうなるね」

少女「そうなったら、一緒にピクニックとかも出来ますねっ!」

はじけるような笑顔。それに僕は少しびっくりして、それから、

吸血鬼「そんな日が来れば良いけどね」

少女「・・・吸血鬼さん、素っ気ないです」

吸血鬼「おいおい、これでも喜んでるんだぜ?」

嘘じゃない。本当の気持ちだ。

だって、こんなに僕に接してくれた奴、他には一人しか居なかったから。



28:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 21:15:07.40 ID:tSJl8C+Q0

~間章~



吸血鬼?何だよそれ。

───人の血を吸って仲間を増やす化物だよ!お前、またあの女の子の所に行ってたろ!!

別に、僕があの子に会いに行ったって良いだろ。

──まだ分からないのか!?あいつが吸血鬼なんだよ!!お前、化物にされちまうぞ!?

あの子はそんな子じゃないよ。それは僕が一番良く知ってる。

──・・・もう、手遅れみたいだな。

ん?何か言った?

──・・・いや。分かったよ、お前の好きにすれば良いさ。

──・・・どうなっても知らねーぞ、お前。



~間章~



29:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 21:17:43.64 ID:tSJl8C+Q0

~間章~



吸血鬼?何だよそれ。

───人の血を吸って仲間を増やす化物だよ!お前、またあの女の子の所に行ってたろ!!

別に、僕があの子に会いに行ったって良いだろ。

──まだ分からないのか!?あいつが吸血鬼なんだよ!!お前、化物にされちまうぞ!?

あの子はそんな子じゃないよ。それは僕が一番良く知ってる。

──・・・もう、手遅れみたいだな。

ん?何か言った?

──・・・いや。分かったよ、お前の好きにすれば良いさ。

──・・・どうなっても知らねーぞ、お前。



~間章~



30:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 21:19:33.89 ID:tSJl8C+Q0

少女を拾ってから、数日後。

僕と少女は、これと言って何の問題もなく、生活していた。

そんなある日の、月と星が輝く夜、僕は家を出て、空を飛んでいた。力の減退は大分進んでおり、多分通常の三分の一程に落ちているが、飛行能力はまだまだ飛べるレベルだ。

吸血鬼「自慢じゃないけど、僕、元々結構強かった部類だもんな、吸血鬼の中じゃ」

呟きながら翼を動かしていると、すぐに目的地の上空に着いた。

少女の住んでいた村だ。

僕は眼下に広がる村を、眺める。

吸血鬼「・・・うーむ。どうやら僕の魔法じゃ、どうしようもないな。何処から手を着ければ良いのか皆目見当もつかない」

少女がもし病気に感染してしまった場合の事を考えて、流行り病とやらがどんな物か見るために、少女が住んでいた村に来てみたのだが、実態は僕の予想遥か斜め上だった。



32:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 21:35:45.96 ID:tSJl8C+Q0

そう、ここは小さな村で、この村が特に重要な何かを持っているとは考えにくい。確かにここでしか育たない特産物とか、場所が他国に侵略するのにちょうど良い場所だとか、そういうのはあるかも知れないが、そんな理由なら別にこんな魔法で村を死滅させるような真似をする必要がない。

そして何より、こんな魔法を使えるような奴が、そんな理由で動くとは思えない。

吸血鬼「何が狙いだ・・・?あの村で、何か少しでもこの魔法をかけた術者の興味を惹きそうな物・・・」

しばらく考えてみたが、僕自身、村の事をよく知らないので、代わりに憶測を立ててみる事にした。



41:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 22:21:02.66 ID:tSJl8C+Q0

眼下に広がる村。この村自体が狙いなら、病かと思い違う程に効果が現れるのが遅い魔法を使う必要がない。手っ取り早く村人を皆殺しにすれば良いだけの話だ。

勿論、この魔法をかけた術者が、人がゆっくりと衰弱していくのを楽しむサディストだという可能性もあるにはあるのだが、そんな頭のおかしい変態の事なんて、自分が狂ってでもいない限り理解出来ないから除外。

吸血鬼「と、なれば・・・僕の頭で考え付くのは一つだ」

『実験』。それが僕の、吸血鬼の頭が弾き出した現時点での答えだった。



44:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 22:27:09.24 ID:tSJl8C+Q0

実験が目的だとするならば、こんないやらしい魔法を使った事にも納得がいくし、行動の理由も幾つか候補が上がる。

例えば、魔法の伝染力を計る為のテストとか、この魔法に耐えられるだけの人間が必要とか。まぁ考えた所で推測の域を出ないので、これ以上は無意味だが──

と、そこでふと、少女の事が頭をよぎる。

銀髪、銀目の少女。恐らく、村で一番の異質、奇怪。

彼女がもし、この魔法をかけた魔術師の興味を惹いた存在だとしたら、どうだろう。観察対象だったと、したら。

吸血鬼「・・・馬鹿な」



45:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 22:28:42.71 ID:tSJl8C+Q0

実験が目的だとするならば、こんないやらしい魔法を使った事にも納得がいくし、行動の理由も幾つか候補が上がる。

例えば、魔法の伝染力を計る為のテストとか、この魔法に耐えられるだけの人間が必要とか。まぁ考えた所で推測の域を出ないので、これ以上は無意味だが──

と、そこでふと、少女の事が頭をよぎる。

銀髪、銀目の少女。恐らく、村で一番の異質、奇怪。

彼女がもし、この魔法をかけた魔術師の興味を惹いた存在だとしたら、どうだろう。観察対象だったと、したら。

吸血鬼「・・・馬鹿な」



49:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 22:32:37.70 ID:tSJl8C+Q0

僕はすぐに考えを打ち消した。少女が普通の女の子だって事は、僕自身が良く知っている。魔眼で散々観察したんだから、間違いない。

間違いない筈なのに、言い様のない不安が胸中に渦を巻く。

そうだ、考えてみれば、僕達吸血鬼の瞳は同族を、呪いを、魔法を見抜くだけ。それだけ。

確かに少女は人間だ。それは確実確定、不変の事実だ。しかし少女が人間であると言う事実が、少女が特別な何かを持っている訳ではないと言う事の証明材料にはならない。そう、人間だって特別な奴は居る。



50:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 22:34:38.43 ID:Z0a/Cgy90

ごく稀に産まれる、他とは少し違う人間。僕にとっては見た目の違いでしかない、些細でちっぽけな物が、一部の魔術師からすれば、十分興味を惹く物だったとしたら。

吸血鬼「・・・嫌な予感がする」

僕は全力で翼を動かし、家へ向かった。



51:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 22:37:03.67 ID:Z0a/Cgy90

~間章~

それでさ。皆君の事を化物って言うんだ。

──んー・・・間違ってはいないんだけどね・・・やっぱり気付いちゃったか・・・
これくらい田舎なら、吸血鬼の存在自体がそんなに浸透してないと思ったんだけど。

・・・吸血鬼なのか?

──ええ。ごめんね、今まで隠してて。

別に・・・君が吸血鬼でも、君が君である事に違いはないんだからさ。

──本当に、優しいわね。今日で貴方の顔を見るのもおしまいか・・・

え?

──お別れよ。



52:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 22:38:39.10 ID:Z0a/Cgy90

何処に行くんだよ?

──何処か人の居ない所。こんな田舎にも私の事が知れちゃったなら、もう人間と共生する事は、出来ないわ。だからお別れ。

・・・僕の事、置いていくのか?

──・・・ええ。

連れていっては、くれない?

──・・・私は吸血鬼で、貴方は、人間だもの。

・・・なら。僕も仲間にすれば良い。そうすれば僕は人間じゃなくなるだろ。

──・・・駄目よ。貴方は、こんな、化物になっちゃ・・・



53:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 22:39:11.28 ID:Z0a/Cgy90

君は化物じゃない。それに、僕もこんな人間社会うんざりなんだ。

──・・・駄目。お願いだから・・・私を困らせないで・・・

・・・皆が君を嫌いになっても、僕は君を好きでいる。僕は君と誓った。

──・・・私、は・・・

──・・・ッ!!危ない!!伏せてっ!!



~間章~



54:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 22:42:13.87 ID:Z0a/Cgy90

吸血鬼「少女、ちゃん?」

家に帰ってきた僕は、目を疑った。

目の前に広がる惨劇。血。血。血。

張っておいた結界は粉々に砕け、少女の護衛に付けていた使い魔はただの肉塊と化し、そして。

少女は、地面に倒れ付していた。

少女「あ・・・う・・・」

老魔術師「ふん、一足遅かったの」



55:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 22:44:15.61 ID:Z0a/Cgy90

倒れ伏す少女の横に立っている老人が話しかけてくる。

吸血鬼「・・・誰だ、あんた」

老魔術師「魔の道を究めんとする、ただの老いぼれじゃよ」

吸血鬼「・・・あんたが、やったのか」

老魔術師「そんな怖い目をするな。所詮人間、吸血鬼のお主にとっては、至極どうでも良い存在であろう?」

吸血鬼「村に魔法をかけたのも、あんたか」

老魔術師「ほう、あれが魔法と良く見抜いたな。その通りだ、この娘を観察するために、な」



56:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 22:46:41.22 ID:Z0a/Cgy90

吸血鬼「──」

気付けば、僕は老人に飛びかかっていた。

心臓を狙って、右腕を思いっきり突き出す。

しかし、爪が老人の体を引き裂く寸前に、魔法の防護壁に阻まれた。

吸血鬼「が・・・っ」

老人「この娘の価値をも知らぬ獣が。大方情にほだされて娘を匿ったのだろう?お主のおかげで、探し出すのに随分時間がかかってしまったわ」

吸血鬼「価値・・・だと?」

老魔術師「そうじゃ。この娘は、退魔の力を持っておる」



57:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 22:47:19.72 ID:Z0a/Cgy90

退魔の力。それを聞いた瞬間に、僕の中で答えが出た。

吸血鬼「・・・あんたが村にあんな魔法を撒いたのは、少女ちゃんがどの程度退魔の力を保持しているかどうかを見定める為の実験か・・・っ」

老魔術師「そうじゃ。いきなり攻撃魔法を撃ち込んでしまったら、どれほどの潜在能力があるのか確認出来んからの」



58:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 22:48:26.61 ID:Z0a/Cgy90

退魔の力とは、その名の通り、魔を退ける力。邪なる物を弾き、拒絶する力。

しかしその強さは人それぞれ。保持する人間の大半は、持っていないか、持っていても力が微量過ぎて気付かない。

しかし、二週間あの魔法に耐えた少女は、恐らく古代魔法の直撃を食らっても生きていられるだろう。

それだけの力。この老人が欲しがるのも無理はない。



59:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 22:50:16.57 ID:Z0a/Cgy90

吸血鬼「その子から、離れろ・・・っ!!」

僕は両手で空中に陣を描き、召喚した雷電を老人に放つ。

雷と防護壁が衝突し、火花が散る。

僕は全力を込めて魔法を放ち続けたが、それも空しく、やがて雷は消え去った。

吸血鬼「・・く、そ・・・」

老魔術師「・・・吸血鬼が、人間の小娘一匹に拘るか。よく分からんの、お主ら」

吸血鬼「・・・何の事だ」

老魔術師「この娘もしきりにお主の事を呼んでおったぞ。本来魔族であるお主が、娘に触れられるのも、娘がお主を信頼しておる証拠じゃろう・・・ほれ、娘は返してやる。『目当ての物』はもう貰ったのでな」



60:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 22:52:29.66 ID:Z0a/Cgy90

そう言って老人は、少女をこちらに放った。

吸血鬼「し、少女ちゃん!」

少女「あ、う・・・吸血鬼さん、ですか?」

吸血鬼「そうだよ!怪我は!?」

少女「何処に、居るんですか・・・?」

吸血鬼「え?」

僕の腕の中で、顔を上げた少女の顔には──

少女「何も、見えないです・・・、吸血鬼さん」

──銀色の目の代わりに、真っ黒い穴が二つ空いていた。



61:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 22:57:01.63 ID:Z0a/Cgy90

少女「暗いよ・・・吸血鬼さん・・・何処に居るんですか?」

吸血鬼「──目、が」

老魔術師「わしは今、ちと面白い物を創っておってな。最後の仕上げにその小娘の瞳が必要でな、くりぬかせて貰った」

え。何故。何で。黒い。暗い。少女の。綺麗な目。銀色の目。ない。ない。ないないないないないないナイないナイナイ無い亡い名異ない。

老魔術師「では・・・、安らかに眠るが良い。跡形も無く、二人仲良く死ぬが良い」

少女を抱き締め、呆然とする僕の耳に、老人の渇いた声が響いた。



62:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 23:02:13.03 ID:Z0a/Cgy90

~回想~



──く・・・ぁ・・・け、怪我は、ない?

僕を、庇って・・・?

──あの人達、もうとっくに、貴方も私と同じだと思ってるみたいね・・・っ。

だ、大丈夫なのか!?動いちゃ駄目だ!

──余り、よろしくは無いわね・・・傷が治らない・・・白木の杭のせいね・・・

・・・僕が、守らなきゃならなかったのに・・・

──ふふ・・・そうね・・・でも、最後に、貴方を守れて、良かった。

──・・・あのね。ちょっとだけ、言いたい事があるの。耳、貸してくれないかしら?



~回想~



63:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 23:03:24.23 ID:Z0a/Cgy90

そうだ。あの時もそうだった。

僕は、大切な人を守るどころか、庇われて、生き延びて。

今度も、守れなくて。

何なんだ。

何なんだ。

何なんだ、あのクソジジイ。

むかつく。

イラつく。

自分自身に、腹が立つ。はらわた煮えくり返ってスープになるくらい最高に怒りが込み上げる。

だから、今回は。

今度ばっかりは。

これ以上は、やらせない。

僕は瞬時に動き、少女の首筋に牙をあてがった。

少女「・・・ッ!?・・・ぁ、ん・・・はぁ・・・」

吸血鬼「・・・本当にごめんね、少女ちゃん」



64:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 23:07:11.67 ID:Z0a/Cgy90

~回想~



──このままだと、貴方は間違いなく殺されるわ。だから、私の最後の御願い。

な、何?

──生きて。

・・・生きて、って・・・痛っ!?

──私の力を、全て貴方に流し込んだ。私の力と、貴方が吸血鬼になる事で得られる力。それがあれば、貴方は絶対に、死んだり、殺されたりしない筈よ。

何の、事だよ。ちょっと、おい!死ぬなよ!!死なないでくれよ!!僕は、君にまだいろいろ、言わなきゃならないことがあるのに!!

──好きよ。じゃ、さよなら。

・・・う。

うわぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁああああああああああああああああああああああああぁぁぁあああああああああああああああああ──



~回想~



65:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 23:08:39.06 ID:Z0a/Cgy90

老魔術師「──消えろ」

老人の手に高密度の魔翌力が集束し、放たれる。

蒼白く光る圧倒的な力の奔流が僕と少女に襲い掛かろうとし──

僕はそれを、右手で弾いた。

老魔術師「──な!?」

吸血鬼「・・・ふぅ。ギリギリだったね。ありがと、少女ちゃん」

僕は口元に垂れる鮮血を舐め取る。

少女から貰った血が、段々と弱った力を、元に戻していくのを感じる。僕と、『あの子』の、二人分の力が復活する。



66:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 23:09:36.39 ID:Z0a/Cgy90

老魔術師「馬鹿な・・・わしの魔法を弾いたじゃと!?お主、一体何をした!」

吸血鬼「別に。単に血を吸っただけだよ。いやー、久し振りの血は美味しいね!!お陰様で完全体だよ」

体を軽く伸ばし、調子を確かめる。

僕が血を吸えないのは、僕が吸ってしまった人間がもれなく吸血鬼に早変わりしてしまうからだった。

しかし、退魔の力を持つ少女なら、僕の力に侵される事もない。

老魔術師「──馬鹿な!!」

老人が叫び、魔法を発動させようとする。



67:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 23:10:14.73 ID:Z0a/Cgy90

しかし、その動作は、今の僕にとっては緩慢な動きでしかなかった。

たん、と地面を蹴る。それだけで僕の体は加速し、一瞬で老人に肉迫する。

吸血鬼「遅え」

右の掌を、老人の胸板に叩き込む。掌底は防護壁を易々と突き破り、老人の胸部に直撃する。

老魔術師「──ぐ」

声にならない悲鳴を上げ、老人が壁にぶち当たる。



68:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 23:12:24.64 ID:Z0a/Cgy90

吸血鬼「さて、と・・・じいさん。死ぬ覚悟は出来てるよね、勿論?」

老魔術師「・・・た、助けてくれ」

吸血鬼「・・・はあ?」

老魔術師「わしに出来る事なら何でもする!命だけは──」

吸血鬼「・・・ここで命乞いか。呆れたぜ」

溜め息を吐く。やっぱり人間なんざ、この程度なのか。

自分の為に行動し、周りを犠牲にし、自分は傷付きたくないからと駄々をこねる。

吸血鬼「本当に──」



69:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 23:14:46.53 ID:Z0a/Cgy90

~回想~



──いたぞ!!この化物が!!

・・・ああ?

──吸血鬼に魂を売るとは・・・この恥さらしが!!

──やだ、見てよあの子の眼・・・歯も伸びてる・・・

──もう手遅れだ!死んで貰おう。

──[ピーーー]化物!



~回想~



70:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 23:15:19.06 ID:Z0a/Cgy90

吸血鬼「──救えないな」

僕は両腕を広げ、体の一部を蝙蝠へ変化させる。

漆黒の蝙蝠。僕の分身。

次に僕は、足早に呪文を詠唱する。

吸血鬼「『我が身を分かつ同胞よ、其の姿を矛と成し、我が障害を撃ち破れ』」

詠唱が終わると同時に、蝙蝠達はその身を黒い鎗に変えた。

吸血鬼「じいさん、一つ言っとく。この世界に蔓延る化物は僕達じゃない──」



73:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 23:20:56.29 ID:Z0a/Cgy90

~回想~



化、物?

は、はは。何言ってんの?

僕は、化物じゃない。彼女も、化物じゃない。

そうだろう?

──な、何だこいつ!?杭を撃ち込んでも死なないぞ!?

──化物!!

だから、違うんだって。

化物は僕達じゃない。

あんた達のような──



~回想~



75:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 23:26:52.26 ID:Z0a/Cgy90

吸血鬼「──あんた達のような人間だ」

右手を老人に向ける。

するとそれと連動し、蝙蝠の黒鎗も、矛先を老人に向けた。

怒り、憎しみ、ありとあらゆる悪意が入り交じった、黒鎗。

僕は宙に浮かぶ鎗を眺め、それから息を吸い、最後の言葉を紡ぐ。

吸血鬼「──死ね」

一本、二本三本四本五本──

無数の憎悪が、老人の体を貫いた。



77:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 23:31:43.63 ID:Z0a/Cgy90

~回想~



ねえ。おーい、聞いてる?

まあ、届いてはいないと思うけどさ。

一応、仇は討っといたよ。

全員惨殺余裕でした。ってか。

・・・本当に、理不尽だよね。

僕、さっきまでは全人類滅ぼそうかなって思ってたんだけどさ。

それしたら、あいつらと同じじゃん?

別に人に仇なす存在じゃないのに、吸血鬼だからって理由で襲われてさ。

僕は、こんなクソみたいな生き物達と一緒になりたくない。

心まで化物になりたくない。

・・・君だって、そう思うだろ?

・・・さて。これからどうしよう。

取り敢えず、生きていこう。それが君との、約束だもんな。



~回想~



78:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 23:35:08.22 ID:Z0a/Cgy90

少女「・・・ん・・・あれ?吸血鬼さん?」

老人を殺した数分後、少女が目を覚ました。

僕は家の中を魔法と使い魔で片付けながら、少女の方を向く。

少女「あ、あのお爺さんは・・・」

吸血鬼「僕がぶっ飛ばしといたよ、安心しな」

少女「そ、そうですか・・・あれ?私・・・なんで倒れて・・・」

吸血鬼「あー、ごめんごめん。僕が血を吸ったからそのショックだね。でも気持ち良かったろ?」

吸血鬼に血を吸われた物は、強烈な快楽に襲われる。多分そのせいだろう。

少女「は、はい・・・何か、凄く気持ち良かった、です・・・って何言わせるんですか!!」



79:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 23:45:09.30 ID:Z0a/Cgy90

吸血鬼「それだけ元気なら大丈夫だと思うけど、目の方は問題ない?」

少女「・・・あれ?そう言えば、わ、私の目、元通りになってる・・・」

少女がびっくりした声を上げる。その姿を見て、ほっと胸を撫で下ろす。

吸血鬼「良かった・・・初めてのケースだったから、上手く行ったのかどうか分からなかったんだけど・・・」

老人を殺した後に気付いたのだが、一ヵ所だけ、僕の攻撃を防いでいる部分があったのだ。そこを探ると、ビンに詰められた少女の目があったのだが、流石は退魔の力を宿す目。傷一つ無かった。



80:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 23:46:01.48 ID:Z0a/Cgy90

少女「な、治して、くれたの?」

吸血鬼「余り自信は無かったんだけど、君の目、相当丁寧に抜き取られてたからね。視神経がお釈迦になってなくて助かったよ」

少女「・・・よく、分からないですけど、治してくれたんですよね」

そう言って、少女が抱き付いてきた。

吸血鬼「・・・」

膝を折り、視線を少女に合わせる。それから僕も精一杯少女を抱き締めた。

少女「──怖かったん、ですよ・・・?ずっと、待ってたのに・・・遅いです・・・遅すぎです・・・っ」



83:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 23:49:46.90 ID:Z0a/Cgy90

吸血鬼「──ごめん。僕が君の力に気付いてれば、わざわざ村を見に行く事もせずに済んだし、細心の注意を払えたんだけど・・・」

少女「・・・目まで抉られ、てっ・・・」

吸血鬼「──ごめん」

少女「許しません・・・っ。私の御願い、聞いてくれないと、許しませんっ」

吸血鬼「・・・僕に出来る事なら、それこそ君の世話から命を捧げる事まで何でもするよ」

少女「馬鹿!死ぬ事が償いになりますか、もう・・・っ」

しょうがないです、と呟いた少女は、僕の頭を両手でがっしり固定した。



84:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 23:51:27.60 ID:Z0a/Cgy90

吸血鬼「え?何──むぐっ!?」

少女「・・・ぷは」

キスされた。

吸血鬼「ちょ、ちょっと!!何やってんのさ!?」

少女「・・・もうこれで逃がさないです・・・吸血鬼さんは、ずっと私と一緒です」

吸血鬼「は、はぁ!?」

少女「私の御願いは、吸血鬼さんがずっと私と一緒に居る事です!もう離れないで下さい!」

吸血鬼「・・・僕と君って、まだ知り合って数日だよね?」

少女「関係ありません!」



85:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 23:54:11.62 ID:Z0a/Cgy90

吸血鬼「・・・えぇ?」

僕は頭を整理する事にした。

少女拾って、一緒に御飯食べて、一緒に過ごして、老人が襲ってきて、ぶち殺して、で、告白?

吸血鬼「・・・よく分からないな・・・吊り橋効果ってか」

僕は頭を抱えたい気持ちで一杯だった。

少女の好意は素直に嬉しい。

でも、こんな、僕が。少女を酷い目にあわせてしまったこんな僕が。

許されるのか?

吸血鬼「・・・少女ちゃん」



86:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/22(日) 23:58:15.43 ID:nX1kvnfF0

使い魔A「お?御主人、とうとう受け入れちゃうニャ?」

使い魔B「ここの所数日間、ずっとベタベタして・・・ロリコンだニャー」

使い魔C「私達の事はあんまり愛してくれないくせにニャー」

吸血鬼「うるさい。もっかい肉塊になりたいか?」

使い魔ABC「はいニャ」

吸血鬼「・・・ったく・・・少女ちゃん、僕はさ、吸血鬼だ」

少女「知ってます」



87:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/23(月) 00:00:02.88 ID:lyXzIV070

吸血鬼「君は、良いのか?」

少女「吸血鬼さんは吸血鬼さんです」

吸血鬼「・・・僕は、不死だぜ?」

少女「昼間、本で読みました。吸血鬼の愛を受けた人間は、不死になるんですよね?」

吸血鬼「・・・それは呪いみたいなものだから、君には効かないと思うけど・・・」

少女「退魔の力、でしたっけ?」

吸血鬼「うん。自分に仇為す物を祓う力」



88:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/23(月) 00:01:39.78 ID:lyXzIV070

少女「でも、吸血鬼さんは私に触れられてるし、最初だって、倒れてる私を運んでくれたじゃないですか」

吸血鬼「それは・・・僕に、明確な敵意が無かったから・・・」

少女「なら、その呪いも効く筈でしょう?」

吸血鬼「・・・でも」

少女「もう!!つべこべ言わないで下さい!!御願い、なんです!聞いてくれないと許しませんっ!!」



89:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/23(月) 00:02:24.20 ID:lyXzIV070

吸血鬼「・・・はぁ・・・分かったよ」

少女「ほ、本当ですかっ!?」

吸血鬼「・・・うん。僕が側に居てやらないと、君がまた、狙われるかも知れないしね」

そう言って苦笑する。



90:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/23(月) 00:03:21.22 ID:lyXzIV070

ああ、神様。

吸血鬼の祈りが、届くのかどうかは分かりません。

でも、ほんの少しだけ、耳を傾けて下さいませんか?



91:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/23(月) 00:09:14.61 ID:lyXzIV070

少女「そ、そうですよ!もうこんな怖い目に、あわせないで下さい!」



昔、好きな人を守れず。

今も守るべき少女を傷付け。



92:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/23(月) 00:10:10.18 ID:lyXzIV070

吸血鬼「ああ。分かった」



こんな、情けない僕ですけど。

少しだけ、許して下さい。



少女「約束、ですよ?」

吸血鬼「ああ──」



僕はゆっくり息を吸い。




吸血鬼「──約束だ」






~お仕舞い。~



94:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方):2012/04/23(月) 00:22:46.81 ID:K8wHycfmo

>>1

ストーリーはとても良かったよ!

化物語の影響とか受けてる?とは、思った



95:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2012/04/23(月) 00:27:32.61 ID:lyXzIV070

>>94ばれちゃいましたかwww

西尾維新大好きっ子でして。口調とか真似るようになっちゃったんですよ。

出来るだけ抑えようとはしたんですけど・・・

お褒め頂き光栄です!!



105:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2012/04/23(月) 20:42:45.35 ID:hdZ+rnDWo

見つけたのがラッキーだと思えるくらいよかったよ。次もキボンヌ。



107:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋):2012/04/24(火) 00:35:57.19 ID:XQBP5Vwjo

面白かった

また次も期待



引用元
吸血鬼「誰か倒れてる」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1335090864/
[ 2012/05/04 11:50 ] 妖怪系SS | TB(0) | CM(0)
コメントの投稿






管理者にだけ表示を許可する