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殺戮の先の絶対能力者(レベル6)

1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 07:22:16.86 ID:rpUb36e40

とある魔術の禁書目録において、もし上条当麻が絶対能力進化計画の阻止に失敗していたら、という物語です。
初のSSで、更に作者の妄想だけで書いているので見苦しい点があるかと思いますが、よかったらお付き合いください。



引用元
殺戮の先の絶対能力者(レベル6)
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1303078936/
5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 07:28:37.92 ID:rpUb36e40

-止められなかった計画-

「そいつから、離れろ」

少年は静かに呟いた。

目の前に立つ、学園都市第一位という怪物に向かって。

「あァ?」

対する怪物は、怪訝そうな目を向ける。

実験の最中にこの第一位に挑もうなんて、正気の沙汰じゃない。



6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 07:29:18.82 ID:rpUb36e40

まぁ、ついでに殺っておけばいい。

怪物こと、一方通行はその程度に考えていた。

しかし、少年こと、上条当麻は臆することなく言葉を続ける。

「そいつから離れろって言ってんだよ、三下!」

第一位に向かって、彼は挑発する。

一方通行の意識が、地面に倒れ伏すか弱い少女からこちらに向くように。

こんな実験を続けさせるわけにはいかない。

上条には強い信念が宿っていた。



7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 07:29:57.88 ID:rpUb36e40

遡ること、数時間前。

「絶対能力進化計画・・・?」

ビリビリ中学生、御坂美琴の部屋で、上条は怪しげな資料を見つけた。

一方通行を絶対能力者(レベル6)に進化させる計画。

そのために、学園都市第三位、御坂美琴の体細胞クローン2万体を殺害するという、残虐極まりないものだった。



8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 07:30:23.63 ID:rpUb36e40

ふと上条は、昼間に出会った御坂妹のことを思い出す。

彼女たちが殺されていいはずがない。

たとえクローンだろうと、量産可能な作りものだろうと、そんなものが理由になるはずがない。

なんとしても止めてみせる。

そんな強い思いを秘めて、彼はこの操車場に立っている。



9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 07:30:49.78 ID:rpUb36e40

「おまえ、何様?」

一方通行がからかうように尋ねる。

しかし、上条は怯むことはない。

この怪物に勝てる自信があった。

上条の右手に宿る「幻想殺し」は、異能の力を全て打ち消す。

相手が第一位であろうと、例外ではないはずだ。



10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 07:31:23.92 ID:rpUb36e40

「なんで、ここにいるのですか・・・。と、ミサカは問いかけます・・・」

虫の息だった御坂妹が、不思議そうな顔で問いかけてくる。

その後も御坂妹は、実験動物がどうとか、量産ができるだとか言っていた。

バカバカしい。

上条は心の中で呟く。

助けたい、と思うことに理由なんて必要だろうか。



11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 07:31:49.76 ID:rpUb36e40

とにかく、自分がすべきことはすでに決まっている。

上条は、ゆっくりと一方通行の正面に立った。

こいつを倒して、全てを終わらせる。



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 07:32:19.36 ID:rpUb36e40

「うわあああああああああああ!!!!!」

背中に強い衝撃を感じる。

上条は吹き飛ばされてコンテナに叩きつけられていた。

殴り飛ばせば終わると思っていたが、第一位の力は伊達じゃない。



13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 07:32:48.31 ID:rpUb36e40

「さァて、そろそろ終わりにするとすっかァ」

一方通行の手が近づいてくる。

この手が触れれば、恐らく上条は死ぬだろう。

無我夢中で、その手を上条の右手が弾いた。



14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 07:33:16.25 ID:rpUb36e40

その後、形勢は逆転した。

上条の右手なら。反射の影響を受けずに殴れるからだ。

このまま殴り続ければ、いずれは一方通行は力尽き、実験は中止となる・・・はずだった。



15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 07:33:53.81 ID:rpUb36e40

「ぐあああああああああああああ!!!!!!!!!!」

上条がゆっくりと地面に倒れる。

左肩には、小石が深々と突き刺さっている。

「ギャハハハハ!!直接攻撃は防げても、ベクトル変換で蹴り飛ばした物体は防げねェってかァ!!」



16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 07:34:20.50 ID:rpUb36e40

いつの間にか、幻想殺しの弱点が見抜かれていた。

一方通行は攻撃を近距離から遠距離に切り替えたようだ。

第一位だけあって、頭の回転も速い。



17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 07:34:56.21 ID:rpUb36e40

「オイオイ、ヒーロー気取って来たくせに、もう終わりかァ?」

「まァ、所詮てめェみてェな無能力者のクズに、何かを救うなンてヒーローじみたことなンざできねェンだよ」

「どっちにしても、今更救ったところでなンになる?」

「すでに1万人以上の妹達が殺害されてンだ」

「もう1万人を救ったところで、処理に困って結局廃棄処分されるのがオチだろォがよ」



18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 07:35:25.51 ID:rpUb36e40

一方通行は倒れている上条に向かって言葉を続ける。

もちろん、上条は納得いくわけがない。

「ふざけんじゃ、ねえよ・・・」

上条は再び立ち上がる。

たとえ自分がどうなろうと、御坂妹を救ってみせる、そんな覚悟を胸に。



19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 07:35:54.41 ID:rpUb36e40

「御坂妹だって、生きてんだよ」

「歯を食いしばって、必死に生きてきたんだよ」

「そんなやつが、なんでおまえなんかに殺されなくちゃならないんだよ!」

「あいつらだって、生きたいに決まってんだろ!!」



20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 07:36:21.84 ID:rpUb36e40

その言葉を聞いた瞬間、一方通行の中で何かが切れる音がした。

気付いたら、一方通行が放った小石が上条の右肩を貫いている。

「ふざけンな!!てめェに、あいつらの何が分かるってンだ!?」

「部外者のくせに、口出ししてンじゃねェぞ!!」

急に激昂しだした一方通行に、上条は驚きを隠せない。



21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 07:36:47.52 ID:rpUb36e40

一方通行は言葉を嵐のように上条にぶつけた。

「俺だってなァ、あいつらを殺したくなンてなかったンだ!!」

「最初は[ピーーー]のをためらった!そンな俺に、あいつらはなンて言ったか分かるかァ!?」

「自分達は殺されるために生み出された存在だから、あなたに殺されるのが唯一の救いだ、そう言ったンだ!」

「そンなことを言われて、それでも殺さないなンてできるか!?俺にはできねェ!!」

「どうせ殺さなかったら、ゴミと一緒に廃棄処分だァ!それなら、俺に殺された方がよっぽど幸せじゃねェか!」

「だから俺は、一人残さず[ピーーー]って決めた!あいつらを救うためにだァ!!」

「それを、てめェみてェな偽善者に邪魔する資格なンてねェンだよ!!」



22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 07:37:36.01 ID:rpUb36e40

いつの間にか、一方通行は涙を流していた。

言いたいことは言い終わったのか、一方通行はそっと御坂妹に触れる。

「お、おまえ、なにを・・・!」

上条が慌てて問いかけるが、一方通行は静かに答えた。

「こいつを[ピーーー]。てめェの目の前でなァ。てめェもこの辛さを、味わいやがれ」

「や、やめろ・・・!」



23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 07:38:11.44 ID:rpUb36e40

上条は駆け寄ろうとしたが、遅かった。

次の瞬間には鮮やかな赤い液体が飛び散り、目の前には見るも無残な肉塊が転がっていた。

上条は茫然と立ち尽くしていた。

実際に、目の前から大切なものが失われていくのを見るのは初めてだった。

昼間には一緒に会話していたのに、今はもう何も話さない肉塊と成り果てている。

その現実は、上条にとって耐えられるものではなかった。



24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 07:38:38.74 ID:rpUb36e40

「うわああああああああああああああああああdjはsfcbgsdぶんcwwxmrgdふぇcjm!!!!!!!!」

気が付いたら、狂ったように言葉にならない叫びをあげていた。

「せいぜい泣きわめけ、偽善者がァ」

そんな一方通行の言葉も耳に入らないくらい、彼は叫び続けた。

その後、様子を見に来た御坂美琴に発見されるのに、そう時間はかからなかった。



39:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 19:13:42.15 ID:rpUb36e40

「身体の方はもう大丈夫だけど、精神のほうがねぇ・・・」

カエル顔の医者が、深刻そうに少女に告げる。

「ちゃんと言ってくれないと分からないんだよ!」

対する銀髪シスターは声を荒げて追及した。

医者は、仕方なく詳細を語り始める。

「あれから、完全に心を閉ざしてしまっているね。誰とも口をきかないし、言葉が届いているのかどうかも分からない」

「よっぽどショックが大きかったんだろうね。無意識のうちに外界を拒絶しているんだ」

「食べ物も飲み物も受け付けない。たまに、発作のように叫び出す」

「これが主な症状だね」

銀髪シスターこと、インデックスの顔から、みるみる表情が消えていく。

「・・・なんとかならないの?」

「こういうのは本人の問題だからねぇ。本人が外界を拒絶し続ける限り、僕にはどうすることもできない」



40:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 19:14:59.83 ID:rpUb36e40

インデックスは上条の病室の前に立っていた。

できるだけ落胆した表情を見せないように、無理やり笑顔を作って入室する。

「とうまー!お見舞いに来たんだよ!」

「……」

医者の言うとおり、少年は何も反応しない。

窓の外を眺めているだけだ。

「あ、そうだ!お土産にりんごを持って来たんだよ!」

「……」

「早く退院してくれないと、とうまがいなくて寂しいかも」

「……」

「早くとうまの手料理も食べたいんだよ!」

「……」

「とうま…」

少年は一向に窓の外を眺めているだけで、身動き一つしない。

「また来るね、とうま…」

インデックスは静かに去っていった。

そのころ、例の操車場では学園都市第三位の女子中学生の遺体が発見されて大騒ぎになっているのだが、彼が知る由もない。



41:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 19:15:54.76 ID:rpUb36e40

数ヵ月後

.「とうま、綺麗なお花を持ってきたから、お供えしとくね」

「お菓子もいっぱい持ってきてあげたんだよ・・・」

墓石に向かって話しかける銀髪シスター。

傍から見れば、シュールな光景かもしれない。

ここは学園都市唯一の共同墓地。

墓石には、達筆な行書体で『上条当麻』と書かれている。

あの日以来、彼は一度回復したのだが、御坂美琴の死という現実に耐えきれず、自殺してしまった。

それからインデックスは、毎日お墓に来ている。

上条が通っていた学校では緊急集会が開かれた。

恐らく、土御門と青髪ピアスが人前で涙を見せたのはこのときが初めてだろう。

学園都市は、以前のように平和ではなくなっていた。

学園都市初のレベル6に進化した一方通行が、狂ったように破壊活動を続けているのだ。

毎日、そのニュースばかりである。



42:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 19:16:43.00 ID:rpUb36e40

数ヵ月後

.「とうま、綺麗なお花を持ってきたから、お供えしとくね」

「お菓子もいっぱい持ってきてあげたんだよ・・・」

墓石に向かって話しかける銀髪シスター。

傍から見れば、シュールな光景かもしれない。

ここは学園都市唯一の共同墓地。

墓石には、達筆な行書体で『上条当麻』と書かれている。

あの日以来、彼は一度回復したのだが、御坂美琴の死という現実に耐えきれず、自殺してしまった。

それからインデックスは、毎日お墓に来ている。

上条が通っていた学校では緊急集会が開かれた。

恐らく、土御門と青髪ピアスが人前で涙を見せたのはこのときが初めてだろう。

学園都市は、以前のように平和ではなくなっていた。

学園都市初のレベル6に進化した一方通行が、狂ったように破壊活動を続けているのだ。

毎日、そのニュースばかりである。


インデックスが共同墓地を出ると、少女が倒れていた。

小学生くらいの、アホ毛が特徴的な女の子だ。

「だ、大丈夫?」

インデックスが心配そうに声をかけると、女の子は涙目で起き上がった。

「転んじゃった~。って、ミサカはミサカは痛みに耐えてみたり」

その特徴的な口調を聞いた、一人の男が立ち止まった。

そして女の子にゆっくりと近づく。

白い髪に赤い瞳の男だ。

「どうかしたの~?って、ミサカはミサカは見知らぬ男性に声をかけてみる」

それには答えず、男は質問する。

「”ミサカ”だとォ?」

「うん、ミサカはミサカだよ。って、ミサカはミサカは自己紹介してみたり!」

すると、男は口の端を不気味に吊りあげて、一言呟いた。

「コロス」

第一部 完



52:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 20:00:46.00 ID:rpUb36e40

-贖罪への道-

「歯を食いしばれよ最強。俺の最弱は、ちっとばっか響くぞ!!」

その刹那、少年の拳は綺麗に”最強”の頬に決まった。

吹き飛ばされ、動かなくなる”最強”。

こうして、妹達は残酷な実験から解放されたのだ。

一人の”最弱”の手によって。

一方通行もまた実験から解放され、平和な日々を送っていた。

快復した御坂妹とも仲良く話せるようになり、それなりに充実した日々を送っている。

そして、今日は何故か御坂妹と買いものに行くはめになってしまった。

「こうして2人で歩いていると、なんだかカップルみたいですね。と、ミサカは頬を染めながら発言します」

「なァに訳分かンねェこと言ってやがンだァ」

「いくらなンでも、こンな会話、平和すぎンだろォ」

「…そうですね。と、ミサカは冷たく言い放ちます」

急に御坂妹の口調が冷たくなった。

驚いた一方通行が御坂妹を見ると、視線が刃物のように鋭い。

あの一方通行が後退りをするほどに。

「”あなたの現実”では、こんなに平和なわけありませんからね。と、ミサカはますます冷たく言い放ちます」

「い、いきなり、なンだァ・・・?」

「いつまでこんな甘ったるい夢に逃避しているつもりですか?と、ミサカは嘲笑気味に問いかけます」

そして御坂妹は、とどめと言わんばかりに言い放つ。

「いい加減、帰ったらどうですか?あなたが招いた、救 い の な い 世 界に」



53:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 20:01:26.97 ID:rpUb36e40

「ッ!!」

公園のベンチで、一人の男が目を覚ました。

汚れ無き白い髪に、『破壊』や『殺戮』といった醜い赤色に染まった瞳。

学園都市初の絶対能力者(レベル6)、一方通行だ。

「チッ、またあの夢かよ…」

憎々しげに呟くと、自販機で買ったコーヒーをすする。

12月25日。

今日は、クリスマスだ。

昨年は巨大なクリスマスツリーが何本もそびえ、カップルやらで賑わっていた。

だが、いまやそんなイベントは開催されない。

誰あろう彼自身が、学園都市を復興不能なレベルにまで崩壊させたからだ。

治安維持組織の壊滅、交通網の麻痺、ライフラインの寸断。

誰がどう見ても、復旧不能なのは明白だった。

もう、学園都市に残ってる人間はほとんどいないだろう。

一方通行自身が招いた結果なのに、妙に寂しかった。

何故こんな気持ちになるのか、彼自身にも検討がつかない。

レベル6の頭脳をもってしても、だ。



54:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 20:02:56.40 ID:rpUb36e40

「どうだ?てめぇ自身が招いた救 い の な い 世 界の感想は」

一方通行の背後から声がした。

振り返ると、そこには顔に入れ墨の入った白衣の男が立っている。

「皮肉でも言いに来たかァ、木原くゥン?」

彼は木原数多。

かつて一方通行の能力開発を担当した人物で、一方通行の良き理解者でもあった。

「皮肉なんて言うつもりはねえよ」

「なら何しに来たァ?俺を始末しようってかァ?」

一方通行は挑発するような口調になっていく。

対する木原は、いたって冷静だ。

「なぁ、一方通行。やり直す気はねえか?」

一方通行は耳を疑った。

「血迷ったかァ」

「いや、俺は真面目に言ってる」

今の一方通行には、木原が狂ってるとしか思えなかった。

まだこの最強の名を冠した怪物に救いがあるとでも思っているのだろうか。

「この俺が、今更何をやり直せってンだァ?」

「すべてを、だよ。おまえほどの能力があれば、学園都市の復興だってなんとかなる」

「ふざけンな。大体、救いのない世界って言ったのはてめェだろォが」

「救いのない世界を復興させて、なンになるってンだァ?」



55:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 20:03:32.43 ID:rpUb36e40

一方通行は周りを見回しながら吐き捨てる。

一面、瓦礫の山だ。

ところどころに遺体も転がっている。

そんな状況でも、木原は決して意見を曲げない。

「救いがないなら、作ればいい。それだけだろ?」

「救いを作る、だァ?」

「あぁ。おまえが、救いになるんだ」

一方通行は言葉を失った。

学園都市をここまで追い込んだ自分が、救いになる?

バカげてるとしか思えない。

だが一方で、自分が救いになれば、もっと違った人生を歩めるんじゃないか。

死んでいった妹達や御坂美琴(オリジナル)、そして数えきれないほどの犠牲者への償いになるんじゃないか。

そう思う自分も存在していた。

「…堕ちるとこまで堕ちた俺が、今更光に戻れるわけがねェ」

気が付けば、涙が溢れていた。

自らが求めた世界なのに、いつの間にか自分が求めていたものを自分自身の手で粉々に砕いていたんだ。



56:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 20:04:28.38 ID:rpUb36e40

悲しかった。

どうしようもなく、悲しかった。

大切なものを失った悲しみじゃない。

大切なものを、自らの手で葬ってしまった悲しみ、悔しさだった。

そして、こんな状況になってもまだ決断できない自分が、どうしようもなく憎かった。

いっそ死んでしまいたかった。

こんな人間なんていないほうが、みんな幸せに暮らせていただろう。

もし、タイムマシンというものがあるなら、迷わずあの頃の世界に行って自分自身を殺害するだろう。

そのくらい、一方通行は自分自身が憎かった。

目からあふれ出る涙は、もはや止めることができなかった。

そんな一方通行に、木原は優しく言った。

「戻れるか戻れないかじゃねえ。戻るか戻らないかだ」

一方通行は途切れ途切れに言葉を紡いだ。

「戻り、てェよ。あの頃みたいに・・・みンなが、笑って暮らせていた、世界に・・・」

その言葉を聞くと、木原は明るい笑顔を見せた。

「その言葉が言えた時点で、おまえはまだ完全に堕ちちゃいねーよ」

「おまえはまだやり直せる。俺も手伝うから、あの頃の世界に戻そうぜ?」

木原がそっと手を差し伸べる。

一方通行は、ゆっくりとその手を掴んで立ち上がった。

「…ありがとう」

一方通行が、初めて感謝の言葉を口にした瞬間だった。

第二部 完



58:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 20:07:21.18 ID:rpUb36e40

-復興の兆し-

あの日から、一方通行から闇の部分が消え去ったかのように、学園都市の復興に従事していた。

瓦礫を撤去し、遺体はちゃんと弔い、だんだん街はきれいになっていった。

改心した一方通行を見ていた統括理事長、アレイスター=クロウリーも復興に力を入れることにした。

アレイスターの働きかけのおかげで、政府からも莫大な支援金が寄付され、学園都市はみるみる復興を遂げていた。

「やればできるじゃねえか、一方通行」

「う、うっせェぞ木原くン」

かつて破壊の限りを尽くした一方通行が汗水流して復興に従事していることもあって、学園都市に少しずつ人が戻ってきた。

しかし、一方通行がみんなに受け入れられたわけではなかった。

きっと、彼の犯した罪が許される日は来ないだろう。

それでもいい。

彼は作業を続ける。

みんなが笑って暮らしていてくれれば、それでよかった。

それが、彼にできる、唯一の償いなのだから。



59:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 20:08:06.00 ID:rpUb36e40

「今日はこのくらいにしとくかぁ」

木原が腕を伸ばしながら言った。

「あァ。ンじゃ、また明日なァ」

短く別れの言葉を告げると、一方通行は早足である場所に向かった。


「今日も来たぜェ。まァ、俺の顔なンざ見たくねェだろォがなァ」

一方通行の目の前には、一見するとただの更地が広がっている。

この更地の中に、妹達の遺体が埋葬されているのだ。

いわば、妹達の墓である。

一方通行は、毎日ここに来るのが習慣になっていた。

それが、彼にとっての、妹達に対する唯一の償いだった。



60:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 20:08:39.13 ID:rpUb36e40

「なァ…おまえらは、俺に殺されて本当に幸せだったのかァ?」

贖罪という名の終わりなき旅を始めた一方通行にとって、これが最大の疑問だった。

死にゆく彼女達は、本当に幸せだったのか。

望みもしない結末を、研究員のクソ野郎どもに強要されただけではないのか。

ふと一方通行は、あの日彼の前に立ちふさがった少年を思い出した。

あの時一方通行は彼を偽善者だとしか思わなかったが、もし自分が彼に倒されていれば、妹達は今でも幸せに暮らせていたのだろうか。

”あの夢”のような世界の中で、自分も平和な日常を謳歌できていたのだろうか。

一方通行は、ずっと考え続けている。

しかし、答えが出ることはない。

答えを与えてくれるはずの存在を、自らの手で葬ったのだから。

その結論にたどり着くたびに、涙がとめどなく溢れてくる。

その悲しみの結晶は、重力に従って落下し、更地を少しずつ濡らしていく。

一方通行は、構わず泣き続けた。

いつも一人で来ているため、誰にも見られることはない・・・はずだった。

今日、”彼”が一方通行の目の前に現れるまでは。



61:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 20:09:15.85 ID:rpUb36e40

「子供みたいに泣きわめいてんじゃねえよ、善人気取りの怪物が」

氷のように冷たく、鋭い言葉は、一方通行の胸を貫いた。

”善人気取りの怪物”

その言葉が、一方通行の思考を病原菌のように蝕んでいく。

混乱したまま、声のした方を振り返ると一人の男が立っていた。

その男は、不敵な笑みで言葉を続ける。

「てめえが救いなんざになれるわけねえだろ。てめえには妹達(ゴミ)処理の方がよっぽどお似合いだよ」

男はただただ嘲笑する。

「てめえもあいつらと同じように、ゴミ箱にぶち込んでやるよ、レベル6」

その瞬間、一方通行の中で、再び何かが目覚めた。

第三部 完



64:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(栃木県):2011/04/18(月) 20:22:09.62 ID:NK/HuoZCo

展開はやっ



65:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(千葉県):2011/04/18(月) 20:26:39.32 ID:LjpSXhUy0

ふおお・・・!



67:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 20:32:16.88 ID:rpUb36e40

-繰り返す悲劇-

一方通行と謎の男は、妹達が埋葬されている更地をバックに、対峙していた。

「てめェ…何者だ」

一方通行は静かに問う。

男は答えることなく、背中から純白の翼を発生させた。

その姿はとても神々しく見える。

「未元物質…第二位か」

憎々しげに舌打ちする一方通行。

謎の男の正体は、学園都市第二位の能力者、垣根帝督だ。

能力は未元物質。

よく分からないが、とても厄介な能力だということは一方通行も耳にしたことがあった。



68:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 20:32:51.50 ID:rpUb36e40

「どうした?レベル6のくせに、ビビってんのかぁ?」

「ハッ、てめぇも所詮は妹達(ゴミクズ)と同じ脳なしか」

その言葉は、一方通行の奥底に眠る”何か”を覚醒させるには充分過ぎた。

「…ゴミクズ、だとォ?」

静かに繰り返す一方通行。

その言葉には、なんの感情もこもってないかのように思える。

対する垣根は、余裕の表情だ。

「おいおい、まさか『あいつらだって生きてたんだ!』みてえな愉快なセリフを吐くつもりか?」

「ハハハ、笑わせてくれるな・・・」

その後の言葉は、一方通行の咆哮に掻き消された。

「ふざけンじゃねェぞ、クソ野郎ォがァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!」



69:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 20:33:27.67 ID:rpUb36e40

その刹那、一方通行の背中から、全てを吸い込んでしまいそうなほどの漆黒の翼が出現した。

気が付けば、垣根は一方通行に首をつかまれて宙に浮いている。

「な、なんなんだ…その、黒い、翼、は・・・」

そんな声には耳も貸さず、一方通行は殺意に満ちた目で吠える。

「妹達がゴミクズだと?ふざけンじゃねェよ!!」

「あいつらだってなァ、本当は生きたかったはずなンだよ!あンなところで死にたくはなかったはずなンだ!!」

「そんな妹達の命を奪ったのは、この俺だァ!」

「ゴミクズなのは俺なンだよォ。俺が呼ばれるのは構わねェが、あいつらをゴミクズ呼ばわりするのは許さねェ!!」

その言葉に呼応するかのように、黒翼は真っ直ぐ垣根に向かって飛ぶ。

防御するために展開された白い翼をいとも簡単に貫き、垣根は一方通行の手を離れた。

そのまま垣根は音速で吹き飛ばされ、摩擦で流星のように燃え尽きていった。

勢いのつきすぎた黒翼は、そのまま学園都市の市街地をなぎ払っていく。

事態が収まったころには、学園都市は以前のように荒れ果ててしまっていた。

ところどころに、死体が転がっているのも見える。

そして、その瓦礫の中心で一人の黒翼男が膝をついていた。

「…また、やっちまったのか、俺はァ…」



70:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 20:33:56.39 ID:rpUb36e40

一方通行には、もはやまともな思考ができなくなっていた。

ただ、『自分が再び学園都市をボロボロにしてしまった』という事実が、彼を苛む。

「…う、うわァァァァァァァァァぁlfksldかsfhjdhgさjろpfkjghrmf、!!!!!!!!!!」

ただただ、狂ったように叫ぶ。

皮肉にもその姿は、かつて一方通行に対峙した勇敢な少年と重なっていた。



71:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 20:34:43.53 ID:rpUb36e40

「はァ…はァ…」

数時間後、一方通行は唯一残っていた高層ビルの屋上にいた。

一見すると、自[ピーーー]るように見えるかもしれない。

自殺しようとしているなら、まだ良かったものの・・・

「いっそ、この学園都市ごと死んでやる。全てを無に還すンだ。みンな、天国で仲良く暮らそうぜェ」

ギャハハハ、と狂ったように笑う一方通行。

完全に正気を失っていた。

「さァて、フィナーレだァ」

一方通行はゆっくりと手を広げる。

これでついに解放される、そんな思いがこもった、満面の笑みで。

黒翼が、学園都市全域を覆うほどに拡大する。

青空は突如漆黒に包まれ、さながら世界の終末を彷彿させる。

「な、なんですの?急に空が真っ黒に…」

「い、嫌な予感しかしないんだよ…」

「こ、根性でどうにかできるレベルじゃなさそうだな…」

学園都市の住人の不安げな声をよそに、一方通行はそっと呟く。

「 サ ヨ ナ ラ 」

ゆっくりと一方通行の手が振り下ろされる。



学園都市は、闇に包まれた。



『番組の途中ですが、ここで地震の速報をお伝えします』

『さきほど、学園都市中心部を震源とする、マグニチュード10.0の地震が発生しました』

『この地震により、本州の沿岸部全域に大津波警報が発令されております』

『沿岸にいる方は、速やかに…』



第四部 完



73:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 20:37:44.08 ID:rpUb36e40

-すれ違う思い-

その日は雨が降っていた。

打ちつけるような雨の中、男は傘もささずに国道沿いの歩道を歩いている。

数分後、男は目的地に着いたようだ。

そこは、学園都市のセキュリティゲート…だった場所だ。

数ヶ月前の大地震で、学園都市は完全に崩壊した。

今では、更地に無数の墓石が立っているという殺風景な場所と成り果てている。

男は、墓と墓の間を縫うように歩き、ようやく目的の墓を見つけた。

墓石には、『一方通行』と書かれている。

学園都市を崩壊させた張本人だ。

もちろん、一般の国民がそんなことを知るはずがない。

政府は、この未曾有の大事件を『自然に発生した直下型大地震』ということで処理し、報道していた。

もっとも、政府関係者にも真実を知る者はいなかったのかもしれない。

学園都市に住んでいて、生き残ったのはこの男、木原数多だけなのだから。

だが、実際には大半の人間の遺体が確認されていないため、その情報も確かなのかどうか分からない。



74:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 20:38:15.02 ID:rpUb36e40

墓前にそっと花を置くと、木原は静かに手を合わせた。

「一方通行…おまえなら、やり直せていたはずなのに…」

そのことを考えるたび、どうしようもない悔しさがこみ上げてくる。

垣根帝督。

彼さえいなければ…。

しかし、いくら垣根を恨んだところで、もう一方通行も垣根帝督もこの世にはいない。

今更、何かを変えることなどできないのだ。

学園都市も消えてしまい、能力者も一人残らず消えてしまい、もう、何も元に戻すことなどできない。

何もかも、もう遅い。

時計の針を戻すなんてことはできない。

それは、誰よりも木原自身がよく分かっているはずだった。

それなのに、気が付くと何か解決法を探ろうとしているのだ。

つくづく、愚かな人間だ。

木原は自嘲気味に笑った。



75:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 20:38:42.46 ID:rpUb36e40

どれくらいの時間が経っただろう。

木原は、墓に背を向けて歩き出した。

墓参りは、今日を最後にしよう、と決意していた。

このことは忘れて、自分自身の新たなスタートを切りたかった。

一方通行のことも、忘れて…。



76:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 20:39:09.96 ID:rpUb36e40

時間というのは、ただただ一定のスピードで過ぎていく、無情な存在だ。

楽しい思い出も、嫌な思い出も全て、いつしか時間という名の大きな波に飲まれていく。

過去に犯した過ちは、もうやり直すことはできない。

しかし、今からでも償うことはできる。

時計の針は元には戻せない。

しかし、先に進めることはできる。

もし、償うという形で時計の針を進めていれば、違った未来が待っていたかもしれない。

それは、今からでも遅くはない。

上条当麻が敗れたあの日に戻ることはできない。

しかし、今からでも必死に償っていけば、きっと希望の未来が待っている。

きっと…。



77:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 20:39:37.48 ID:rpUb36e40

木原が歩いていると、反対側から男が歩いてきた。

帽子を深々とかぶった、若干怪しい男だ。

手には花束のようなものを持っている。

だが、木原は気にも留めない。


2人はすれ違う。

雨の降りしきる歩道で。

もちろん、2人の間に会話などない。

あるのは、ただただ冷たい雨だけだった。


帽子の男が振り向く。

しかし、木原は歩みを止めない。

去っていく白衣の後ろ姿を見ながら、帽子の男は悲しげに呟いた。


「木原くン…」





78:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(中部地方):2011/04/18(月) 20:41:54.00 ID:rpUb36e40

殺戮の先の絶対能力者(レベル6)、完結です。
こんなド素人の駄文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
感想などありましたら、ぜひ書いていただけると嬉しいです。



80:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東海・関東):2011/04/18(月) 20:57:23.61 ID:NkfdM5xAO





83:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県):2011/04/18(月) 21:39:29.90 ID:VIkjQUJ9o

一気に駆け抜けましたな
乙です!



84:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/18(月) 22:40:30.76 ID:JKjh1sHDO



ちょい読みに丁度良い長さだった



91:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2011/07/02(土) 22:13:53.58 ID:a3/1MOa00

>>1

面白かった



引用元
殺戮の先の絶対能力者(レベル6)
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1303078936/
[ 2012/09/18 12:00 ] とあるSS | TB(0) | CM(0)
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