1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 09:51:50.81 ID:hHuwyPeJ0
社員「は?」
社長「いやうちも不景気でね」
社員「おっしゃってる意味がよく分からないのですが」
社長「まあまあ。はいこれ君の分」
社員「」
引用元
社長「今年はボーナスの代わりにボーイズラブを給付する」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1338857510/
4:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 09:53:50.23 ID:/b51ADSGi
バナナはお尻に入りますか?
16: 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 :2012/06/05(火) 10:16:08.67 ID:idhM+AVx0
>>4わたしは入ると思います
23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 10:33:39.67 ID:GWA0yC1Y0
>>4
私は入ります!
5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 09:55:02.31 ID:hHuwyPeJ0
社員「段ボール三箱分も給付された」
社員「ボーイズラブなんて興味ないよ……」
社員「ていうか逆に処分に困る」
部長「おう、社員君じゃないか」
部長「どうした浮かない顔して」
社員「部長、今年のボーナスが」
部長「ボーイズラブだろ?」
社員「ええ、ひどい話ですよね、こんな」
部長「社長も考えたよなぁ、面白いよ」
社員「」
7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 09:57:52.11 ID:hHuwyPeJ0
課長「おい社員、これ明日までにまとめておいてくれ」
社員「はい、あの課長」
社員「今年のボーナスがボーイズラブになった件はご存知ですか?」
課長「ああ、あれね」
課長「いやあ社長も上手いこと考えたよな」
社員「課長まで……」
課長「ま、何だ。食わず嫌いするなってことじゃないか? はっはっは」
9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 10:01:04.96 ID:hHuwyPeJ0
社長「今年のボーナ……じゃなかった、ボーイズラブは自宅まで配送する」
ピンポーン
佐川「お届け物です」
社員「はーい」
佐川「○○印刷会社の社長さんから、『ボーイズラブ三箱』お届けです」
社員「読まなくていいです」
佐川「ハンコください……じゃあ残りの二箱も運びますね」
佐川「おーい! そこのボーイズラブって書いてある箱持って来い!!」
社員「もう外歩けない」
12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 10:04:50.87 ID:hHuwyPeJ0
社員「はぁ……部屋にでかい段ボールが三つもある圧迫感」
社員「しかも中身が中身」
チラッ
社員「怖いもの見たさでも見られたもんじゃないわ」
社員「はぁ……」
社員「とりあえず押し入れに入れておこう」
社員「にしても、社長はともかく部長や課長まで容認派だなんて」
社員「俺入る会社間違えたかな」
13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 10:09:34.12 ID:hHuwyPeJ0
次の日
社員「(みんな目が死んでる)」
社員「(平気なのは課長と課長補佐だけだ)」
社員「あの、係長」
係長「どうした」
社員「みんな元気がないですが、原因って」
係長「ボーナスの代わりのボーイズラブだろうな」
係長「私の家にも来た」
社員「やっぱりそうですか」
社員「困りますよね正直、あんなに貰ったって」
係長「だな。しかしおおっぴらに文句も言えない」
係長「業績が良くなれば普通のボーナスに戻る、一回の我慢だ」
社員「はい(良かった係長はまともだ)」
15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 10:15:08.15 ID:hHuwyPeJ0
社員「同僚、お前今年のボーナスどうした?」
同僚「ああ、ボーイズラブか……妹にあげた」
社員「えっ」
同僚「俺の妹、ああいうの好きなんだよね」
同僚「俺が持ってても仕方ないから全部あげたよ」
社員「よ、喜んでたのか?」
同僚「ああ、お兄ちゃん大好きって言われた」
同僚「正直とても複雑」
社員「だろうな……お前、中身見た?」
同僚「一応妹にあげるまえに確認した」
同僚「別に趣味じゃないけど、実家にいたころ妹のせいで耐性ついたし」
同僚「あんまりひどいのが混ざってたらはじこうと思ってな」
17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 10:17:02.84 ID:hHuwyPeJ0
社員「じゃああの量全部見たのかよ」
同僚「う、うんまぁ……暇だし」
社員「なにそれすごい」
社員「あ、じゃあ俺の分もあげるよ!」
同僚「いや、親が怒っちゃったから駄目だ」
同僚「悪いな」
社員「……そうか」
社員「(そう上手くはいかないか)」
社員「(でもどうにかして処分しないと、友達もまともに呼べない)」
社員「ボーイズラブ好きな知り合い作っときゃよかった」
18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 10:19:55.31 ID:hHuwyPeJ0
社員「ただいまー」
社員「って言ってもあるのはボーイズラブだけ」
社員「死にたい」
モグモグ
社員「……ネットも飽きたし、テレビもないし、俺って何の趣味もないな」
社員「読書も全く」
チラッ
社員「いやいやあれは無理だ。暇で死にそうになっても無理だ」
社員「だってホモ小説とホモ漫画だぞ?」
社員「社長は何考えてんだか……」
19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 10:23:40.48 ID:hHuwyPeJ0
社長「いやあ全く、うまく行ったわ!」
部長「さすがですよ社長、景気減退を上手く乗り切りましたね」
部長「我が○○印刷会社で印刷したボーイズラブ作品の余部をボーナスにするとは」
課長「いや全く、倉庫を圧迫していた在庫も一掃できたし」
課長「社員たちへのボーナス削減で資金も生まれる」
社長「いやあかわいそうなことをしたかとも思うが、会社のためだ」
社長「はっはっは」
20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 10:28:57.61 ID:hHuwyPeJ0
社員「おはようございます」
社員「(ボーナス支給から一週間)」
社員「(みんなの顔色も元に戻りつつある)」
先輩「よう社員、浮かない顔してんな」
社員「先輩、おはようございます」
先輩「ボーイズラブのことだろ、まだ処分できてねぇのか?」
社員「はい、まだ……」
先輩「トロいやつだな、もう皆ほとんど手放せてるぞ」
先輩「俺は翌日に古本屋に売った」
社員「……あ! その手が!」
先輩「あんだけあるとなかなかいい値段になったぞ」
先輩「お前も早くすっきりさせて、仕事集中しろよ」
社員「はい、ありがとうございます!」
22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 10:33:17.93 ID:hHuwyPeJ0
社員「来たぞブック○フ」
社員「これで段ボールの圧迫感ともおさらばだ」
社員「……結構人いるな」
ブコフ店員「いらっしゃいませー」
いらっしゃいませー
いらっしゃいませー
社員「すみません、買取お願いします」
ブコフ店員「はい……ってこれ全部ですか?」
社員「ええ、あと二箱あります」
ブコフ店員「ちょっと待ってください、店長呼んできます」
店長「いらっしゃいませ……うっわ大量」
社員「あと二箱」
店長「お待ちください。この量でこの……うっわBLばっか」
社員「(びーえる?)何でしょう」
店長「しかも全部新品ですね。ちょっとお話お聞かせください」
26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 10:37:49.07 ID:hHuwyPeJ0
店長「これらの本はどこで手に入れました?」
社員「へ? それは会社で……まさか盗品だって思ってるんですか?」
店長「念のためです」
社員「違います、それは会社からボーナスの代わりに支給されたボーイズラブです!」
シーン
ザワ…ザワ…
店長「言ってる意味が」
社員「俺にだって分かりません」
店長「そんなアホな会社があったら見てみたいですね」
店長「申し訳ありませんが、可能性がある以上買取は出来ません」
社員「そんな、じゃあこれ……」
ヒソヒソ
ナニアレー
社員「っ、失礼します!」
ブコフ店員「ありがとうございまーす」
ありがとうございまーす
ありがとうございまーす
27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 10:42:15.82 ID:hHuwyPeJ0
社員「うぅ……もうあのブックオ○行けない……」
社員「超変な目で見られた……俺ホモじゃないのに……」
社員「先輩にからかわれたかな……」
先輩「社員のやつ、上手く売り払えてっかなぁ」
先輩「そういえば、ネットで見つけたボーイズラブ専門のとこに売ったって言いそびれたわ」
先輩「宅配便で送れるから、店まで持っていかないで済んでよかったなぁ」
先輩「……」
先輩「ま、いくら社員がちょっとトロいからって、まさかブッ○オフに直接売りに行くなんてしないだろ」
先輩「あの量のボーイズラブ持って店に行くとか晒し者になるぜ」
29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 10:46:47.32 ID:hHuwyPeJ0
社員「はぁ……結局部屋は狭いままか」
社員「あ、段ボール開いてる」
社員「そういや店で中身確認させられたな」
チラッ
ガサガサ
社員「……ぱっと見は普通の漫画と変わらないな、これとか」
社員「何でこんなに絵うまいのにボーイズラブ描いてるんだろう」
パラパラ
社員「普通の高校生の話だ……何だ普通の漫画じゃん」
パラ……
社員「そんなことなかった」
30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 10:51:21.21 ID:hHuwyPeJ0
社員「(ボーナスから二週間、もう社内は何事もなかったように動いている)」
社員「みんなボーイズラブ処分できたんだろうなぁ」
社員「うっかり中身読んだやつは……いないか」
同僚「社員、今日飲みに行こうぜ」
社員「悪いけど気分が乗らない……」
同僚「……ボーイズラブか? そんなに困ってるなら妹に」
社員「いいよ、迷惑かけられないし……ははは」
社員「……ちょっと中身見ちゃった」
同僚「えっ」
同僚「きつくないかそれ」
社員「ちょっとカルチャーショック。お前もそうだった?」
同僚「まぁ俺の場合、妹がこんなの読んでるのかってショックがでかかった」
31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 10:57:29.20 ID:hHuwyPeJ0
係長「社員」
社員「何でしょう、係長」
係長「お前、今年のボーナスまだ家にあるのか?」
社員「え? ええまぁ……」
係長「もし処分したくてもできなくて、精神的に参ってるなら」
係長「私の家に置いておけ」
社員「えっ」
係長「私は独身だし、部屋もお前よりは広いだろう」
係長「お前の業務に支障を来たすようなら困る。もちろん無料でいい」
社員「そんな、係長にそこまで……」
社員「……でも、半分だけでも置かしてもらえるなら嬉しいです」
係長「いつでもいいから、早いうちに送りなさい」
社員「いえ、迷惑でなければ直接お持ちします!」
35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 11:03:41.35 ID:hHuwyPeJ0
社員「係長の家は……ここか」
社員「立派なマンションだなぁ」
ピンポーン
係長「社員か、入れ」
社員「失礼します」
係長「こっちの部屋が空いている。運んでくれ」
社員「はい……すみませんお願いします」
社員「(あの箱、俺のと一緒だ)」
社員「(ボーナスだからか、係長の分五箱もある)」
社員「……係長、ご自身の分もあるんですか?」
係長「ああ、気にするな」
係長「処分するあてが見つからないだけだ」
社員「(なのに俺の分までって、今更悪い気がしてきた)」
社員「あの、ご迷惑なら……」
係長「気にするな、置いておけ」
係長「お前にだって当てはないだろ」
社員「……すみません」
36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 11:09:29.36 ID:hHuwyPeJ0
社員「半分だけにしといてよかった、さすがにこれ以上迷惑はかけられない」
社員「しかし半分無くなるだけですっきりするなぁ」
社員「これならどうにかなりそう」
次の日
後輩「おはようございます、社員さん」
社員「おはよう。そうだお前、ボーナスどうやって処分した?」
後輩「ああ、ボーイズラブですか?」
後輩「処分してませんよ、ウチにあります」
社員「えっ」
後輩「置いてたら彼女が興味あるって読み始めて」
後輩「あんまり熱心に読むから俺も一緒になって読んだんですけど」
後輩「結構面白くて二人してはまっちゃったんですよね!」
社員「」
後輩「男同士とか気にしなければいけますよ」
後輩「社員さんもまだ家にあるなら、読んでみたらどうですか?」
後輩「どうせ捨てるのも売るのも後からできるんですし」
社員「そ、それは確かに……」
39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 11:16:44.82 ID:hHuwyPeJ0
社員「読んでみる、か」
社員「でも男同士で云々とかだろ? 無理!」
社員「……でも後輩は読んだって言うし、確かにドエロばっかりでもなさそうだし」
チラッ
パラパラ
社員「……やっぱり絵は上手いし、普通の漫画っていえば普通のだ」
社員「キスシーンとかさえ見なければ、結構楽しめるかも」
社員「どうせ暇だし……」
社員「ちょっとくらいは、読めそうだ」
40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 11:21:10.81 ID:hHuwyPeJ0
社員「……少女漫画みたい」
社員「これ男である必要なくね?」
社員「あ、これは面白い」
社員「……結構な量を読んでしまった」
社員「次はコレ……」
『緊縛の快楽~イケナイ僕を調教して!~』
社員「これはやめよう」
チュンチュン
社員「……読み明かしてしまった」
41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 11:25:50.19 ID:hHuwyPeJ0
同僚「おい社員、クマできてるぞ?」
社員「あ……ちょっと寝れなくて……」
同僚「大丈夫かよ」
社員「おう(係長の心意気に応えるためにも頑張らなければ)」
後輩「社員さんどうしたんですか?」
同僚「お、後輩。それがさ、寝てないらしいんだ」
後輩「ストレスですか? あ、そうそう昨日のことなんですけど」
後輩「よく考えたら、僕彼女と二人で読むからいいんですよね」
後輩「一人じゃ読まないです、ボーイズラブ」
社員「」
後輩「勘違いされたら困るんで一応」
43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 11:32:11.71 ID:hHuwyPeJ0
社員「ちくしょおおお後輩のやつめえええええ」
社員「馬鹿か? 俺は馬鹿か?」
社員「どうせ俺は彼女もいないしけた男だよ! くそ!」
社員「あー俺も一緒に暇つぶししてくれる彼女欲しいなー!」
社員「……寝るか」
社員「……」
社員「やばい猛烈に性欲がわきあがってきた」
社員「彼女いないとか言ったからか、ちくしょう」
社員「……パソコンパソコン」
社員「電源コードどこいった」
社員「携帯携帯……どこだ、まさか会社に忘れたか?」
社員「嘘だろ……」
チラッ
社員「いやいやいやあれはさすがにない! 確かにあの段ボールにはエロシーンが詰まってるけど」
社員「詰まってるけど……」
44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 11:34:17.26 ID:hHuwyPeJ0
社員「確か飛ばし読みしてたエロシーンが……」
社員「あった……」
シコシコ
社員「うっ」
社員「……最悪だ」
社員「未だかつてこんな気の重い賢者タイムがあっただろうか」
社員「明日休みでよかった」
48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 11:40:15.99 ID:hHuwyPeJ0
社員「休み明けの仕事だっるー」
係長「社員」
社員「うおっ係長! いやあ仕事楽しいです楽しいです!」
係長「ちょっと話をしよう」
係長「お前、ボーイズラブ読んでいるのか?」
社員「は? いいいいやどうしたんですか急に!」
係長「同僚と後輩との会話を聞きかじっただけだ」
係長「嫌なら答えなくていい」
社員「う……その、ほんの少しです。家にある分」
社員「すみません係長の家に置かせてもらってるのに」
係長「いや、それはいい」ホッ
社員「え?」
係長「お前の負担でなくなったならいいことだ」
係長「変なこと聞いて悪かったな。戻っていいぞ」
社員「いえ……」
社員「(気遣ってくれたのかな)」
社員「(係長、いい人だなぁ)」
50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 11:43:27.51 ID:hHuwyPeJ0
係長宅
係長「ふぅ……明日は得意先に出向くのか」
ドサッ
パラパラ
係長「……」
パラパラ
パラパラ
係長「まぁなかなかのストーリーだ、上の中だな」
51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 11:48:30.26 ID:hHuwyPeJ0
部長「課長、例の件はどうなった」
課長「何とか言いくるめましたよ。全く堅物な男だ」
部長「平時ならあの真面目さは重宝するものの、ここまで堅いとなぁ」
部長「係長まではスピード出世できただろうが、この先難しいだろうな」
課長「仕事の一環と言えば、あの男は文句も言いませんよ」
課長「うちがちょっとコアな本ばかり印刷しているのは分かってますから」
部長「その印刷物を知るための勉強、か」
部長「そういう意図でボーイズラブを給付した社長の思いを知れとでも言ったか?」
課長「そんなところですな。はっはっは」
部長「はっはっは
52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 11:56:19.07 ID:hHuwyPeJ0
係長「社長、いただいた本は一通り読み終えました」
社長「そうか、いや全く関心なことだ」
社長「どうだった、ボーイズラブの感想は」
係長「数年前に比べ、ストーリーも多様化してきましたし技術も上がっています」
係長「それはどの出版社及び自費出版作品にも言えることですので、他の印刷会社にも利益をもたらすでしょう」
社長「そうかそうか、いや君は真面目だね」
社長「君を勉強係に任命してよかったよ」
係長「そう、ですか」
係長「でしたら勉強係でない、他の社員にボーイズラブを与えるのはやめていただけるとありがたいのですが」
係長「今年のボーナスを負担に感じている社員もいますので」
社長「何? それはその社員に問題があるんじゃないか?」
社長「うちの得意先がボーイズラブだということは知っているだろう」
社長「それを嫌とは。一体誰だね」
係長「いえ、負担なのは量でして……作品自体は、その社員も読むことはできると」
社長「そうか、なら結構」
社長「ん? その社員もボーイズラブを読んでいるのかね?」
係長「そのようなことを言っていました」
社長「男でボーイズラブを読むとは、全く変わった性癖の持ち主だな。はっはっは」
係長「……っ」
54:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 12:02:54.50 ID:hHuwyPeJ0
先輩「俺は売った」
同僚「俺は妹にあげました」
後輩「俺は彼女と一緒に読んでます」
先輩「やっぱ後輩が一番たち悪いわー」
後輩「いいじゃないですか、僕が一番有効活用してますよ! 彼女もよく家に来てくれるようになりましたし」
同僚「そういや……社員は結局どうしたんだろう」
社員「(一度抜いてから、更に読みにくくなった)」
社員「(これ以上読んだら男として何かが変わってしまいそう)」
社員「どうにかして処分しなきゃ……ちり紙交換するか?」
係長「社員」
社員「係長、何ですか?」
係長「今日メシでも食べにいくか」
55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 12:06:32.27 ID:hHuwyPeJ0
係長「……お前、まだボーナス持ってるか」
社員「え、はいまだあります」
係長「そうか……」
社員「(係長なんかいつもと雰囲気違う)」
社員「(悩んでるように思える……)」
社員「係長、何か」
係長「お前、家に残ってるボーナス全部俺の家に持って来い」
社員「えっ」
係長「いいから全部だ」
係長「無理にとは言わない。だが推奨する」
社員「へ、あ、はいっ」
社員「(係長、目の下にクマが……)」
社員「(俺のボーナスが何か関係してるのか?)」
56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 12:13:24.52 ID:hHuwyPeJ0
社員「失礼します」
係長「社員か、入れ」
社員「お邪魔します……これ、残りのボーナスです」
係長「この前の部屋に運んでくれ」
ゴシゴシ
社員「(係長、眠そうだ)」
社員「(クマも悪化してるし、疲れてる)」
社員「じゃあこの辺に置いておきます……?」
社員「段ボール、全部開いてる」
係長「ああ、じゃあな」
パラパラ
社員「!」
社員「(係長が読んでるの、ボーイズラブだ)」
57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 12:22:05.09 ID:hHuwyPeJ0
社員「あ、あのそれ……」
係長「ん? ああこれか、気にするな」
社員「気になりますよ」
社員「係長、それ読んでるせいで寝てないんですか?」
係長「そんなところだ、お前も覚えはあるだろ」
社員「そ、それは……でも一日だけで」
係長「帰りなさい」
係長「私の為を思うなら帰ってくれ」
社員「……係長は、それ、好きで読んでるんですか?」
係長「……」
社員「何か、明らかに様子がおかしいですよ」
58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 12:24:07.60 ID:hHuwyPeJ0
係長「……」
社員「す、すみません。出過ぎたまねを」
係長「読まされている」
社員「へ?」
係長「読まされているんだよ、社長に」
59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 12:32:05.08 ID:hHuwyPeJ0
ゴシゴシ
係長「ボーナスの代わりにボーイズラブなんて、いくら仕事に関わっているとはいえおかしいと思った」
係長「だから部長と課長に掛け合ったんだよ」
係長「地位の低い社員にだけボーイズラブを与えて、自分たちはしっかり現金を貰っているんじゃないかって」
社員「……」
係長「そうしたら、これは教育の一環でもあると言われた」
係長「自分たちの仕事を知り、得意先を知る教育だと」
係長「もちろんこじつけだと思った私は反論した」
係長「そうしたら、社長が私を勉強係に任命したのだよ」
係長「人より多くのボーイズラブを与えられた私は、作品を研究し分析することで会社に貢献する」
係長「その貢献が認められれば、他の社員にボーイズラブを押し付けるのは辞めると言われた」
社員「それで寝ないで読んでるんですね」
社員「でも、俺の分まで預かってくれるのは何でですか?」
係長「他の社員はもう、ほとんどがボーナスを処分している」
係長「一人で抱え込んでいるところを社長に見つかって、勉強係が増えるのはごめんだ」
係長「俺一人で充分なんだよ……」
61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 12:35:33.86 ID:hHuwyPeJ0
社員「……じゃ、じゃあ俺も一緒に読みますよ」
係長「何を言っているんだ」
社員「実は家にあった半分のほう、結構読んでるんですよね。ははは」
社員「残り全部読んで、係長に内容お伝えします」
社員「……ここに置いてったら、係長が読むはめになるんですよね?」
係長「……無理しなくていい」
社員「無理してないですよ。暇ですし俺、彼女いないし、趣味もないし」
社員「係長のご迷惑でなければ……」
係長「……そうか」
係長「それなら一緒に頼む」
社員「は、はい!」
63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 12:40:41.21 ID:hHuwyPeJ0
社員「(性に合わないこと言ってしまった)」
社員「(最近ボーイズラブしか読んでなかったせいか)」
パラパラ
係長「……」
社員「……」
社員「(人と一緒に本読むのなんて、小学校の朝読書以来だ)」
社員「(気配が気になるような、居心地がいいような)」
社員「(後輩が彼女と一緒に読んだ、ってのも分かる気がするな)」
係長「っ」
ゴシゴシ
社員「係長、疲れ目なら休んだ方が……」
係長「いや、いい」
係長「私の家で、お前一人残して寝たら悪いだろ」
社員「いえ、そんな」
社員「(係長って、お堅いよな)」
社員「(しっかりしてるというか、真面目というか)」
社員「(そういうとこが憧れるんだけど)」
社員「……」
社員「(ボーイズラブばっか読んでるから思考回路が何かおかしい)」
64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 12:43:37.35 ID:hHuwyPeJ0
社員「!」
社員「飛ばしてたエロシーンだ」
社員「しかしああ言った手前、読まねばなるまい」
パラパラ
社員「おおお……」
社員「これ本当に女の子が書いてるのかよ」
社員「結構えげつない」
社員「……」
パラパラ
パラパラ
社員「(やばい勃ってきた)」
65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 12:46:50.91 ID:hHuwyPeJ0
社員「(落ち着け俺落ち着け俺)」
社員「お婆ちゃんお婆ちゃん……」
パラ…パラ…
社員「うわあ……」
パラ…パラ…
社員「おおお……」
パラ…
社員「これはあかん」
係長「……スゥ」
66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 12:52:17.32 ID:hHuwyPeJ0
社員「か、係長すみませんトイレ借ります!」
ダダダ
社員「うっ……」
社員「死にたい」
ガチャ
社員「はぁ……すみません係長」
係長「……zzz」
社員「あ、寝てる」
社員「やっぱり疲れてたんだ」
社員「本は栞挟んで閉じておこう、タオルとか掛けるか」
社員「……社長もひどいことするよな」
社員「どうせ勉強係なんて嘘なくせに」
社員「次の本は……」
『実録!オフィス♂ラブ ~係長×平社員のヒミツ残業~』
社員「」
68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 12:59:11.82 ID:hHuwyPeJ0
社員「何このタイミングですっげー読みにくいの来た」
社員「でも俺が読まなきゃ係長が読むことに……」
社員「ええい!」
パラパラパラ
社員「うっわガチエロだ」
社員「これ絶対ボーイズラブじゃなくてガチホモ用だ」
社員「そう信じたい。女の子がこんなの読んでると信じたくない」
係長「……ん、社員?」
社員「うわあああ!」
係長「……ああ、寝てしまったのか。すまなかった」
社員「いえいえ、そんないいですよ。寝ててください」
係長「いや、もう目が覚めた」
係長「悪かったな、今何を読んでいる?」
社員「ひえええええ」
70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 13:04:31.00 ID:hHuwyPeJ0
係長「成程。『実録!オフィス♂ラブ……」
社員「読まないでください!」
係長「いや、こんなあけすけなタイトルもあるのかと思ってな」
係長「内容はどうだ、少し貸してくれ」
社員「……はい」
パラパラ
係長「ひどいな」
社員「ですよね」
係長「しかし市場で販売されている以上、需要があるということだ」
係長「奥付を見ろ、うちの会社で印刷している」
係長「立派な取引先というわけか」
社員「しかしひどいですね、本当にこんなことがあるとは……」
係長「いや、フィクションだろう」
社員「でもタイトルに実録って」
係長「ただの煽り文句だろう」
係長「お前、純粋すぎるぞ」
71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 13:11:18.53 ID:hHuwyPeJ0
社員「で、ですよね! こんなの無いですよね!」
係長「ま、この本は嘘だろうな」
係長「こう言ったことが完全に無いとは言えないが」
社員「え?」
係長「こういう本に携わる仕事だ、取引先を回ればたくさんいるぞ」
係長「こういう趣味を持つ人も」
社員「」
係長「……やはりお前に勉強係は無理だ」
係長「私のように、多少は耐性のある者でないと潰れてしまう」
社員「……」
係長「帰りなさい、遅くまで悪かった」
係長「ボーイズラブの処理は私に任せて、お前はすっぱり忘れろ」
社員「……い、いやです」
社員「確かに俺は、今回が初めてのボーイズラブですけど」
社員「ホモの人と接したこともないですけど」
社員「係長のお役に、立ちたいです……」
73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 13:17:38.48 ID:hHuwyPeJ0
係長「……」
係長「お前、彼女はいるか?」
社員「え? いません」
係長「私もだ」
係長「特定の相手がいないと、処理も思うようにできないな」
係長「こんなもので興奮するのか、と自分に驚くこともある」
社員「あ」
社員「(まさしく俺だ)」
係長「……この本のようなことは、無くは無いと言ったぞ」
社員「聞いてました」
社員「係長……何をおっしゃりたいんですか?」
係長「これだけ大量のボーイズラブを読んでいると、さすがに慣れもしてくる」
係長「そしてほとんどが性描写のあるものだ」
係長「ここ最近、それらしいこととは縁がなかったからだろう」
係長「……分かったら、早く帰りなさい」
社員「……分かりません」
社員「あっでも、俺もちょっと覚えがあります!」
社員「一人で悶々としたとき、身近にボーイズラブしかなくて……ははは」
係長「……お前は本当に鈍いな」
75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 13:19:48.66 ID:hHuwyPeJ0
社員「え、係長?」
社員「どうしたんですか?」
社員「具合でも悪いんですか?」
社員「ちょ、どこ行くんですか」
社員「……」
社員「俺、帰りま」
社員「すみません、ごめんなさい!」
社員「係長……」
社員「」
76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 13:23:44.51 ID:hHuwyPeJ0
ブコフ店員「いらっしゃいませー」
いらっしゃいませー
いらっしゃいませー
「すみません、これください……」
ブコフ店員「105円が10冊で1050円です」
「あの、こういう本、他に在庫ないですか?」
ブコフ店員「ちょっとお待ちください、店長!」
店長「はいはいお待たせしました。えーと、BLの在庫ですか?」
「はい」
店長「ありますよ。こちらの棚に、どれでも105円で販売してます」
「そうですか、では……ここからここまで全部」
店長「全部ですか? 分かりました……ではレジまでお持ちします」
「はい」
社員「お願いします」
77:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 13:25:25.18 ID:hHuwyPeJ0
おわり
80:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 13:29:59.69 ID:T2ZNcSaT0
なにこれこわい
84:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 14:12:39.69 ID:hHuwyPeJ0
妹「お兄ちゃん」
同僚「ん?」
妹「こないだの本良かった、ありがとう」
同僚「いいんだよ」
同僚「俺も処分に困ってたからなぁ」
同僚「(そういや社員は結局どうしたんだろう)」
同僚「(最近あんま話しないんだよな)」
妹「にしてもさ、BL支給なんて変な会社」
妹「誰かが皆をBLに目覚めさせようとしてたりして」
同僚「んなアホな……そんなことしてどうするんだよ」
妹「取引先との交渉とか上手くいくんじゃない?」
妹「そういう趣味の人とか多そう、BLの出版社とか作家とかだもん」
同僚「おいおい、怖いこというなよ……」
妹「ちょっとたぎってきた」
87:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 14:30:26.76 ID:hHuwyPeJ0
同僚「ったく、あいつの想像はおっかねぇな」
同僚「我が妹ながら怖い」
同僚「……」
同僚「や、まさかな」
課長「社員君、取引先との関係はどうだね」
社員「順調です。今度うちで印刷してくれると言ってくれました」
課長「頼もしいね、では近いうちに契約書を書いてもらおう」
社員「はい」
社員「では外回り行ってきます」
89:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 14:35:33.56 ID:hHuwyPeJ0
取引先「いやあ社員さんが担当になってくれてから、うちもうまいこと行ってますよ」
社員「それは良かったです」
取引先「来月創刊の雑誌、○○印刷さんでお願いすることになりました」
社員「ありがとうございます」
社員「ではこちらの契約書にサインを」
サラサラ
取引先「はい、どうぞ」
取引先「今後ともよろしくお願いしますよ」
社員「こちらこそ」
取引先「……で、今夜の予定なんですけど……いいですか?」
社員「私でお役に立てるのなら伺います」
90:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 14:39:03.98 ID:hHuwyPeJ0
取引先「専務、こちら○○印刷の社員さん」
社員「はじめまして、お世話になっております」
専務「いやあこちらこそ」
専務「今日は親睦会だからね、堅苦しいことはなしにしよう」
社員「はい」
取引先「では私はこれで」
取引先「あとはお二人でお楽しみください」
パタン
専務「ではゆっくり話し合おうかね、今後のわが社と○○印刷の展望を」
社員「……はい」
91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 14:43:21.51 ID:hHuwyPeJ0
同僚「係長」
係長「どうした」
同僚「最近社員を見ないんですが」
同僚「何かあったのでしょうか」
係長「ああ、社員は営業の仕事に行っている」
係長「上からの命令でな」
同僚「てことは営業部に異動するってことですか?」
係長「そこまでは分からん」
係長「単に取引先が企画部の人間と話をしたがっているだけかもしれん」
同僚「それも……確かに」
係長「私もちゃんと社員のことは管理している。無理な仕事はさせない」
係長「何か問題があれば止める」
同僚「そう……ですね、分かりました」
同僚「(係長がそう言うなら安心だ)」
92:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 14:46:29.79 ID:hHuwyPeJ0
部長「いやぁまさか社員君が落ちるとは」
課長「予想外でしたね、私の予想では係長かと」
部長「甘いな課長君は。あの堅物はそう簡単には落ちまい」
部長「うまく処理しきれているさ」
課長「ですが、部下を犠牲にして平気だとは思いませんよ」
部長「そこだよ」
部長「直属の部下である社員君が落ちた今、あいつが一緒に落ちるのも時間の問題だ」
課長「なるほど、一石二鳥ですか。はっはっは」
部長「はっはっは」
94:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 14:51:25.07 ID:hHuwyPeJ0
係長「(同僚にはああ言ったが、確かに心配だ)」
係長「(どうやら課長の命令で動いているようだしな)」
係長「電話してみるか」
プルルルル
係長「もしもし、私だ」
社員『あ、係長。お疲れ様です』
係長「今どこだ」
社員『取引先の重役と、懇談会をしています』
係長「それはお前の仕事ではないだろ、企画の仕事はどうする」
社員『でも課長が、企画の仕事はいいからこっちに行けと……』
社員『相手方も、俺じゃないと駄目だそうで』
係長「……分かった、無理はするなよ」
係長「何かあったら連絡をよこせ」
社員「ありがとうございます」
プッ
係長「何かあったら、か」
係長「あんなことをしておいてよく言えたものだ」
96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 14:54:40.03 ID:hHuwyPeJ0
社員「今の電話? 上司からです」
社員「係長です。とても頼りになる、いい上司です」
社員「お会いしたことあるんですか? 仕事もできるし、すごいですよね」
社員「……え?」
社員「やめてくださいよ、そんな質問するの」
社員「難しいですって、だって係長は……」
社員「すみません、今日は皆さんとの懇談会なのに」
社員「はい、今日は係長じゃなくて、専務さんの指示に従います……」
社員「」
98:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 14:59:40.25 ID:hHuwyPeJ0
社員「おはよう」
同僚「社員、久しぶりだな」
同僚「どうだ、営業もどきの仕事は?」
社員「普通、企画とあんま変わらない」
社員「ああでも、向こうのお偉いさんにかわいがってもらえるのはいいな」
先輩「へー、うまいもん食ったりしてんのか」
先輩「俺も行きたいわ」
社員「課長に言ってくださいよ」
同僚「先輩までいなくなったらうちの係回んなくなりますって」
同僚「社員がいないだけでも結構厳しいのに」
先輩「俺頼られてるなぁ」
社員「頼った?」
同僚「いや」
100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 15:02:47.24 ID:hHuwyPeJ0
同僚「(久しぶりだったけど、社員普通だったな)」
同僚「(心配なさそうだ)」
同僚「(ただちょっと、雰囲気変わった気がしたけど)」
係長「出張……ですか」
同僚「?」
課長「事業拡大のチャンスだ、よろしく頼むよ」
係長「はい」
同僚「係長出張かよ……仕事が増えるね! ちくしょう」
102:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 15:06:55.80 ID:hHuwyPeJ0
係長「……というわけで私は1週間後から三日間出張に行く」
係長「その間は先輩が私のポジションにつく」
先輩「ヒャッホウ」
係長「同僚と後輩はいつも通りの仕事内容だ」
係長「社員……は今いないが、間の一日だけ外回りだ」
係長「戻ってきたら二人の仕事を分担しろ」
同僚「社員、本当に来なくなったな」
後輩「何してるんでしょうかね、うらやましいです」
同僚「俺はあんまり羨ましくないな」
同僚「特別任務みたいなもんだろ」
103:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 15:11:31.12 ID:hHuwyPeJ0
プルルルル
社員「はい」
係長『私だ。お前今どこにいる』
社員「取引先から会社に戻るところです」
係長『そうか』
係長『一週間後、私の出張が決まった』
係長『お前の仕事内容は同僚に聞け』
社員「はい……係長」
社員「出張の前に少し、お会いできませんか?」
プルルル
同僚「もしもし」
妹「お兄ちゃん? お母さんがお米送ったって」
同僚「はいはいどうも」
妹「それからお兄ちゃんがくれた本、友達にも好評だったよ」
妹「BL支給なんて自分の身内だったらいやだけど、知り合いが勤めてる会社としては最高だねって」
同僚「ハハハ」
104:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 15:15:05.46 ID:hHuwyPeJ0
係長「明日から私はいないが、皆しっかり頑張ってくれ」
先輩「明日から俺が係長……」
後輩「係長いないと仕事が捗りませんよ」
同僚「ま、出張はしかたないよな」
同僚「お前、明日は来るんだろ?」
社員「うん、来るよ」
社員「お前も仕事くれよ」
係長「社員、行くぞ」
社員「はい」
社員「じゃあな。同僚」
106:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 15:18:28.52 ID:hHuwyPeJ0
社員「お久しぶりです」
係長「最近会ってないからな」
係長「私の家でいいか?」
社員「ええ、どこでも」
社員「ちょっとお話したいだけなんで」
社員「ああでも係長のお宅だと」
社員「ちょっと思い出しますね」
係長「……その折はすまなかった」
係長「その……我慢の限界というか」
社員「いやだなぁ、謝らないでくださいよ」
社員「俺は後悔してないんですから」
107:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 15:21:00.69 ID:hHuwyPeJ0
社員「係長、そういう趣味あるんですか?」
社員「ないって言われても怪しいですよ」
社員「俺ですか? うーん」
社員「言うなら、無かったって感じですね」
社員「そんな困った顔しないでくださいよ」
社員「今、楽しいですから」
社員「」
社員「あー……やっぱり係長が一番いいです」
109:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 15:25:07.17 ID:hHuwyPeJ0
先輩「今日から係長は出張だ」
先輩「というわけで俺が代理だ!」
後輩「分かってますよ」
社員「デスクワークなんて久しぶりだな」
同僚「社員、お前どんな仕事してたの?」
社員「えー……普通に営業だよ」
社員「食事とかもしたけど」
後輩「羨ましいです社員さん」
同僚「彼女いるやつは黙ってろ」
同僚「それって疲れるか? 何かお前雰囲気変わったけど」
社員「そうか?」
社員「疲れるってほどじゃないな」
社員「たまに翌日に持ち込むときはあるけど」
先輩「代理! 代理!」
112:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 15:29:21.77 ID:hHuwyPeJ0
同僚「あーやっぱ先輩が管理職なのは疲れるわ」
同僚「係長じゃないと駄目だわ」
社員「……で、はい」
同僚「(社員? 電話してるのか?)」
社員「はい、楽しみにしてます」
社員「いつもご贔屓ありがとうございます」
社員「ええ、おかげさまで」
同僚「(取引先か?)」
社員「今日、ですか?」
社員「いいですよ、構いません」
社員「私でお役に立てるなら……はい、××町で」
同僚「(!)」
同僚「(××町って……あの変な繁華街じゃねえか!)」
同僚「社員!」
115:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 15:34:13.16 ID:hHuwyPeJ0
社員「同僚? どうしたんだよ」
同僚「……今の電話、取引先か?」
社員「うん、今日も懇談会に来て欲しいって」
同僚「(こんな時間から懇談会? おかしいだろ)」
同僚「(それに××町……まともな会社がそんなところで懇談会なんかするか?)」
同僚「(一番おかしいのは、何の疑問もなさそうな社員だ)」
同僚「おい……その懇談会、俺も連れてってくれよ」
社員「えっ」
社員「ちょっと待って、向こうに聞いてみるから」
プルルルル
社員「もしもし、俺です」
同僚「……」
プルルルル
同僚「俺の携帯か……もしもし」
妹「あ、お兄ちゃん?」
117:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 15:38:43.09 ID:hHuwyPeJ0
同僚「何だよお前か」
妹『お母さんがお米届いた? って』
同僚「まだ会社なんだ、帰ったら確認する」
妹『分かった』
妹『それからさ』
妹『お兄ちゃんがくれた本の中に、ちょっと変わった本あったんだよ』
同僚「何だ、一応全部見たはずなのに……」
社員「同僚、来てもいいって」
同僚「ほ、本当か? 悪いな無理言って」
同僚「悪い妹またかける!」
妹『この『実録!オフィス♂ラブ ~同期に誘われて道を踏み外したオレ~』ってやつ……お兄ちゃん? もしもし?』
119:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 15:43:34.87 ID:hHuwyPeJ0
専務「おお社員君、よく来てくれた!」
取引先「無理言ってすみません、今日しかいられない役員がいるもので」
社員「いえいえ、こちらこそ無理言ってすみません」
社員「電話でお話した同僚です」
同僚「始めまして……」
同僚「(△△出版の専務? お偉いさんもお偉いさんじゃないか)」
同僚「(小さい印刷所の平社員が相手するもんじゃないだろ……普通に考えれば)」
取引先「では行きましょう、社員さん、同僚さん」
同僚「(やっぱり、変な繁華街だ……)」
同僚「(まともな会社の懇談会とは思えない)」
同僚「(一体何が……)」
社員「同僚」
同僚「な、何だ?」
社員「どこまで知ってる?」
121:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 15:48:04.97 ID:hHuwyPeJ0
同僚「どこまで、って」
社員「俺が係長とヤッたって話は?」
同僚「な、え?」
社員「社長が係長にボーイズラブを大量に読ませてるって話は?」
社員「うちの会社の取引先には、そういう趣味の人が結構いるって話は?」
社員「俺が係長とデキてるのが課長にバレて、こういう営業させられてるって話は?」
同僚「お、お前、何言って……」
社員「何も知らないんだな」
社員「お前、帰った方がいいよ」
122:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 15:52:01.40 ID:hHuwyPeJ0
同僚「……お前、は」
同僚「っ!」
専務「こらこら、どこに行くのかね?」
同僚「!」
専務「ちゃんと着いてきたまえ」
専務「悪いようにはしないさ、なぁ社員君」
社員「ええ、専務は優しいですから」
社員「ですけど、あの……同僚はちょっと、営業に慣れてないと言いますか」
専務「なぁに、多少の無礼は構わんよ」
専務「それに彼が自ら来たいと言ったのだろう?」
専務「もし心配なら、社員君が手本を見せてやればいい」
取引先「着きました。中へどうぞ」
社員「……同僚、逃げろ」
同僚「でも、お前は」
取引先「ほら早く」
グッ
125:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 16:07:13.80 ID:hHuwyPeJ0
役員「おお、これは専務」
専務「役員さん、どうもご無沙汰しております」
専務「こちら、○○印刷の社員さんと同僚さんです」
役員「はじめまして、△△出版の役員です」
役員「いやぁお若い二人が来てくれるとは嬉しいねぇ」
同僚「!」ゾワッ
社員「はじめまして、ご紹介に預かりました社員です」
社員「こちらは付き添いの同僚です」
社員「懇談会のメインは私ということで、お願いします」
同僚「社員……」
取引先「同僚さんは社員さんほど営業に慣れていないようですので」
取引先「まずは社員さんとお楽しみください」
取引先「そういうことですよね、社員さん?」
社員「はい……」
128:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 16:22:54.48 ID:hHuwyPeJ0
社員「同僚」
社員「目、そらしとけ」
同僚「……」
社員「お、願いします」
社員「はい、俺はこういうの慣れてますから」
社員「大丈夫です、お気遣いありがとうございます」
社員「……お二人で、っていうのは始めてです、ね」
社員「あはは……」
社員「っ!」
社員「ま、待ってくださ……」
社員「係長、とは、そんな」
社員「い、言います! 言いますから!」
社員「……その、普通のしか」
社員「グスッ」
社員「ひ、あっ」
社員「」
130:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 16:26:50.74 ID:hHuwyPeJ0
同僚「社員……?」
同僚「おい社員! しっかりしろ!」
同僚「止めろお前ら! 社員気絶してんだろ!」
同僚「触るな、っ」
同僚「……」
同僚「分かっ……分かりました」
同僚「うう……」
同僚「そん、な」
同僚「いや……すみませ、っ」
同僚「っ!」
同僚「嘘、だろ」
同僚「あ……」
同僚「」
134:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 16:29:19.45 ID:hHuwyPeJ0
妹「あっれーおかしいな」
妹「お母さん? お兄ちゃんの携帯繋がらないよ?」
妹「あ、繋がった」
課長「こんにちは、同僚君のご家族ですか?」
妹「え、あ、はい! 妹です!」
課長「実は同僚君が……」
妹「ちょっと待ってください、お母さ……母に代わります!」
課長「同僚君がちょっと、手荒にされて放心状態で」
課長「なんてな」
同僚「」
社員「……っ」
課長「あっ同僚君の親御さん? 実は同僚君が事故に遭って……」
139:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 16:37:09.14 ID:hHuwyPeJ0
後輩「社員さんも休み、同僚さんも休み」
後輩「係長は出張」
後輩「唯一いる先輩は頼りない」
先輩「おいおいそりゃねぇよ」
先輩「ていうか係長は出張ってラップみたいで面白いな?」
後輩「面白くないですよ」
後輩「そういや先輩、ボーナスのボーイズラブ読みました?」
先輩「読んでねーよ、速攻売ったもん」
先輩「あれだけ大量にあると結構な金額になるもんだな」
後輩「へー」
後輩「俺もそろそろ売ろうかな」
先輩「何でだよ、彼女といちゃいちゃしながら読んでるんだろ?」
後輩「まぁ……でも二人して一通り読んじゃいましたし」
140:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 16:43:25.42 ID:hHuwyPeJ0
彼女「あー……楽しかったぁ」
後輩「意外とはまっちゃうもんだね」
彼女「後輩くんもはまってくれて嬉しいな」
彼女「……ねぇ、私の叔父さんの会社覚えてる?」
後輩「うん、大手の出版社でしょ?」
後輩「出版社と印刷会社がいくつか合同でやった懇談会で彼女ちゃんと出会ったんだもん」
後輩「覚えてるよ」
彼女「そっか、嬉しいなぁ」
彼女「叔父さんの会社ね、最近新しい印刷所探してるんだって」
後輩「へえ。でも俺みたいな企画部の平社員じゃセッティングできないよ……」
後輩「(あれ、でも社員さんが営業の仕事してるって言ってたな)」
彼女「そういうもんなんだ、残念」
彼女「一応、叔父さんの名刺渡しとくね」
後輩「ありがと」
後輩「△△出版社、専務……すごい人だな」
143:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 16:53:44.59 ID:hHuwyPeJ0
先輩「俺の天下が終わった……」
社員「仕事してくださいよ先輩」
後輩「ただでさえ、同僚さんの分もしなきゃならないんですから」
社員「……」
係長「……社員、ちょっと来い」
課長「その前に係長君、ちょっといいかな?」
係長「課長……分かりました。悪いな社員、後で来てくれ」
社員「っ……」ビクビク
係長「また出張ですか?」
課長「いやあ、君にしか頼めないんだよ」
課長「優秀な部下に行ってもらいたくてね」
係長「しかし私ばかりが行くのも」
係長「先輩あたりなら、そろそろ単独出張もできると思いますが」
課長「若手社員の練習に使うような仕事じゃないんだよ、今回は」
課長「それとも嫌なのかね?」
係長「いえ……分かりました。行きます」
144:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 16:58:39.67 ID:hHuwyPeJ0
社員「係長、お話というのは……」
係長「いや、俺が不在のときに何があったか知りたくてな」
社員「それなら……先輩に聞いたほうが」
係長「私はお前に聞きたいんだ」
係長「聞かせてくれるか?」
社員「……っ」
社員「何も、ありませんでした」
社員「同僚の事故以外は」
係長「その事故というのは何だ」
社員「……定時後、帰宅するときにバイクとぶつかったそうです」
社員「怪我はないですけど、ちょっと疲れが来たみたいで……」
社員「俺より、課長の方が詳しいですよ」
係長「何故だ、お前の方が同僚とも仲がいいだろう」
社員「……失礼します!」
係長「社員、待て!」
係長「……」
係長「課長、か」
147:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 17:03:42.62 ID:hHuwyPeJ0
係長「というわけで、また私の出張が決まった」
先輩「キター」
係長「以前と大方同じだ。今回は一週間席を空かす」
係長「みんなしっかり頼むぞ」
係長「同僚も不在で大変だろうが、よろしく頼む」
後輩「はーい……また先輩がめんどくさくなりますよ」
社員「仕方ないな」
社員「乗り切ろう」
後輩「せめて同僚さんが戻ってきてくれればいいんですけどねー」
社員「……」
社員「今日、見舞いに行ってくるよ」
社員「無事だといいんだけど」
148:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 17:07:22.13 ID:hHuwyPeJ0
ピンポーン
社員「同僚?」
社員「俺だよ、開けてくれ」
社員「……怒ってる、のか?」
シーン
社員「同僚ー」
ガチャガチャ
社員「……何で」
社員「?」
社員「これ、同僚の家の鍵じゃないか?」
社員「何で玄関先なんかに落ちてるんだ?」
カチャ
社員「開いた……」
社員「同僚?」
社員「いない……」
150:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 17:10:31.07 ID:hHuwyPeJ0
部長「それで、相手方はどう言っているのかね?」
課長「それは気に入ったようで、大満足だと」
課長「うちに優先的に仕事を回してくれるとも」
部長「いいねぇ」
部長「これで我々のボーナスも上がる」
部長「で、彼はどうした?」
課長「多分今頃、相手方のお宅に運ばれているころです」
課長「まあ私は住所を教えただけなので、どうなっているかは分からないのですが」
152:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 17:15:16.21 ID:hHuwyPeJ0
プルルルル
『おかけになった電話は、現在……』
社員「はぁ……」
社員「同僚、一体どこ行ったんだ」
社員「……まさかあいつらに」
係長「どうした」
社員「!」
社員「係長……」
係長「思いつめた顔をしているぞ」
係長「何かあるなら言いなさい」
社員「係長、実は……」
社員「!」
係長「どうした」
社員「な……」
社員「何でも、ありません……」
係長「……本当か?」
係長「まぁ、無理にとは言わない」
係長「私でよければいつでも相談に乗る」
153:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 17:20:32.95 ID:hHuwyPeJ0
スタスタ
社員「はぁ……っ」
課長「偉いじゃないか」
社員「っ」ビクッ
課長「係長君には君が何をしているか言わない」
課長「約束をしっかり守れているな」
課長「こちらも約束どおり、係長君には何もしないようにしよう」
社員「……」
課長「元はといえば君のせいだろ?」
課長「係長君に抱かれて、すっかりそっちの世界に目覚めた君は」
課長「うちからのボーナスだけでは飽き足らず、古本屋でボーイズラブを買い漁っていたそうじゃないか」
課長「挙げ句の果てに、会社のトイレでオナニーとは」
社員「うっ……」
課長「そんなはしたない君の才能を買ってやったのは私だぞ?」
課長「お得意先の相手をするだけで仕事になるなんて、君のような男にはうってつけの仕事だろう」
課長「そこに同僚君を巻き込んだのも、君のせいだ」
154:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 17:23:49.64 ID:hHuwyPeJ0
社員「どうして、こんな」グスッ
課長「君の性癖を隠して、さらに仕事まで与えたんだ」
課長「私に感謝の一つでもしたらどうかね」
社員「あ……ありがとう、ございます……」
社員「(こんなはずじゃ、なかったんだ……)」
社員「(俺一人だけなら、我慢すればいいと思ってた)」
社員「(係長はきっと遊びのつもりだろうし、俺だけ我慢すれば……)」
社員「(だけど、同僚が探りを入れてきたから)」
社員「(何か知ってるんじゃないかと思って、助けてくれるんじゃないかと思って……)」
社員「(でも、同僚は何も知らなかった)」
社員「(俺はただ、あいつを巻き込んで……)」
社員「俺の、せいだ……」
156:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 17:26:31.11 ID:hHuwyPeJ0
後輩「最近彼女ちゃんが遊んでくれないんですよねー」
先輩「それふられるんじゃねーの?」
後輩「やめてください」
後輩「でも電話はくれるんですよ」
後輩「いいBL見つけたの、今度一緒に読もうねって」
先輩「何だそれ、変なの」
先輩「お前目覚めちゃったのかよ」
後輩「違いますよ、彼女ちゃんと一緒だから楽しいんです」
後輩「一人だったら読みません」
先輩「ぞっこんだな」
社員「……」
157:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 17:29:41.92 ID:hHuwyPeJ0
プルルルル
後輩「あ、彼女ちゃんから」
後輩「もしもし」
先輩「おいおい仕事中だぞ」
彼女『後輩くん? あのね、今日の夜会えないかな?』
彼女『会ってほしい人がいるの』
後輩「全然いいよー。どこ集合?」
彼女『行きたいとこあるから、近くがいいな』
彼女『××町のそばの公園は?』
後輩「いいけど、あそこらへん危ないから人通りの多いとこにいてね!」
プッ
彼女「後輩くん来てくれるって、叔父さん」
158:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 17:35:12.99 ID:hHuwyPeJ0
二日前
同僚「ふぅ……」
同僚「一日寝てたら何とかマシになった」
同僚「明日は会社いけそうだ」
同僚「……」
同僚「社員は大丈夫なのか……?」
同僚「あいつがあんなことされてるなんて、知らなかった」
同僚「きっと会社の誰かに無理矢理やらされてたんだ」
同僚「もっと早く気付いてれば……」
同僚「とりあえず、係長が帰ってきたら報告だな」
同僚「あいつ、絶対自分じゃ言えねぇから」
ピンポーン
同僚「お、誰だ」
同僚「社員か? 見舞い来るって連絡あったし」
同僚「よっ」フラフラ
同僚「社員? 今開けるから……」
ガチャッ
同僚「!」
同僚「あんたは……」
同僚「っむ、ぐ」
バタン ドサッ
チャリン
160:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 17:39:17.64 ID:hHuwyPeJ0
彼女「後輩くん! こっち!」
後輩「ごめんね、待たせちゃって」
彼女「いいの、早く行こう!」
彼女「相手も後輩くんのこと、待ってるよ」
後輩「そうなんだ。で、会わせたい人って誰?」
彼女「会えば分かるからいいでしょ?」
後輩「うん……?」
後輩「彼女ちゃん、こっち××町だよね?」
後輩「あんまり治安良くないとこだけど……」
彼女「大丈夫、ついてきて」
後輩「(何か怪しいな……)」
後輩「(でも彼女ちゃんを置いて帰るわけにもいかないし)」
後輩「(仕方ない、ついていこう)」
165:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 18:01:12.92 ID:hHuwyPeJ0
彼女「こっちだよ」
後輩「(うっわ高そうなホテル)」
後輩「(回りのラブホから完全に浮いてる)」
後輩「彼女ちゃん、そろそろ誰だか……」
彼女「そうだねー、いいよ。教えてあげる」
彼女「一人はね、私の叔父さん」
後輩「え、△△出版社の専務だっていう?」
彼女「うん、でも堅くならないで。仕事じゃないから」
彼女「もう一人はね、後輩くんもよく知ってる人だよ」
166:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 18:02:45.64 ID:hHuwyPeJ0
専務「やあ、君が彼女の恋人かね」
後輩「はい、あの、○○印刷会社の後輩です……」
専務「はっはっは、仕事じゃないんだ。挨拶はいらないよ」
専務「しかし○○さんにはお世話になっている。ありがとう」
後輩「いえいえ……」
後輩「(すごい人が出てきちゃったな)」
後輩「(でも何か、変な空気というか……ギラギラしてる)」
専務「ささ、こっちにおいで。彼女もおいで」
彼女「はーい、叔父さん」
彼女「後輩くんも!」
専務「日にちがなかったから付け焼き刃だが」
専務「かわいい姪の頼みだ、全力は尽くしたよ」
専務「ただちょっと、薬の加減を間違えたかな」
167:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 18:05:17.31 ID:hHuwyPeJ0
後輩「!」
後輩「同僚……さん……?」
専務「おお、知り合いか」
彼女「後輩くんも、企画部なんだ」
彼女「社員さんって人も知ってるでしょ?」
後輩「な、何で……事故に遭って自宅療養中じゃ……」
専務「ほう、そういうことになっているのか」
専務「猿轡を外してやるから、少し会話してやりなさい」
カポ
同僚「っはぁ……はぁ……」
同僚「後輩……」
後輩「同僚さん、これどういう」
同僚「お前、はめられたんだよ……」
同僚「逃げろ」
彼女「やだ、逃げないで後輩くん」
後輩「彼女、ちゃん?」
168:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 18:08:36.97 ID:hHuwyPeJ0
彼女「私ね、後輩くんが男の人に犯されるの見たいんだ」
彼女「後輩くんかわいい顔してるし」
彼女「一緒にBL読んでくれたのも、そっちがイケるからでしょ?」
彼女「嬉しかったんだあ」
後輩「……え?」
彼女「お願い、後輩くん」
彼女「同僚さんに犯されてよ」
専務「彼女がそう言うんだ、頼むよ後輩くん」
専務「同僚はもう出来上がってるからな、二日前からこの状態で放置してある」
専務「手も足も縛ってあるから、自分で慰めることも出来ないんだ」
専務「今解いてやろう」
シュル
同僚「……あ」
後輩「同僚、さん」
彼女「お願い同僚さん! 思い切りやっちゃっていいから!」
彼女「叔父さん、ビデオ回していい?」
専務「いいぞ、あとで叔父さんにもダビングしておくれ」
169:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 18:10:22.67 ID:hHuwyPeJ0
後輩「や……ぁ」
同僚「後輩……早く逃げろ……」
後輩「でも、彼女ちゃんも専務さんもいます……」
同僚「俺があぶねぇから……早く!」
同僚「っ」ドクンッ
専務「無理するな、同僚」
専務「我慢しなくていいんだぞ」
同僚「……ごめん、後輩」
ガシッ
170:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 18:11:21.00 ID:hHuwyPeJ0
後輩「や、やめ……」
後輩「お願いです! 同僚さん! やめてください!」
後輩「お願いです、から……」
後輩「う……」
後輩「あ、っ」
後輩「同僚、さ……」
後輩「っ!」
後輩「あ……」
後輩「彼女、ちゃ、ん」
後輩「何で……」
後輩「」
171:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 18:14:03.28 ID:hHuwyPeJ0
同僚「……っ」
専務「良かったよ、同僚」
専務「しかしまだ足りんだろう」
専務「私が相手してやる」
同僚「やめろ、触るな!」
同僚「……っう」
同僚「ちくしょう……薬さえ、抜ければ」
同僚「あ、くっ」
同僚「てめぇ、絶対に、許さ……」
同僚「……!」
同僚「」
172:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 18:19:35.07 ID:hHuwyPeJ0
彼女「うん、そう。結局それから会ってないなぁ」
彼女「叔父さんが預かってるはずなんだけどね」
彼女「ビデオ撮ったから今度見ようよ、最高だよ!」
彼女「やっぱり後輩くんは、男に犯されてた方がお似合いだったよ」
同僚「……」
専務「起きたか」
専務「どうする、このまま会社に復帰するか?」
専務「まあそう睨むな」
専務「後輩君はまだ若いねぇ、気の毒だから解放してあげよう」
専務「お前はもう少し私の相手をしなさい」
専務「いやだ? 拒否権があると思っているのかね?」
専務「写真やビデオは私が持っているんだよ?」
専務「そうそう、いい子だ。賢い子は好きだよ」
専務「私を恨むのはお門違いだ」
専務「恨むなら君のとこの係長を恨むんだな」
173:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 18:20:25.57 ID:hHuwyPeJ0
おわり
175:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 18:23:56.12 ID:vNu76xpy0
まだ先輩が残ってる
176:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 18:24:25.02 ID:hHuwyPeJ0
先輩「最近部下の欠席率が高い」
先輩「社員はどうやら営業に行ってるらしい」
先輩「同僚は事故ったらしい」
先輩「後輩は……昨日まで普通だったのにいきなり休んだ」
先輩「そして今、オフィスには俺一人である」
先輩「なんだこれ」
189:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 19:03:08.37 ID:hHuwyPeJ0
先輩「昼飯も一人かよ」
先輩「つまらん」
先輩「せめて係長がいれば……」
先輩「駄目だ、さらに息が詰まる」
先輩「どっか行くか」
女性「へーそんなことあったんだ」
「そうなの! すっごい興奮したあ」
「まさしくこの本の通りでさ!」
女性「どんな本?」
先輩「あの二人声でかいなぁ」
「何と……」
「『実録!オフィス♂ラブ ~先輩に犯された新入社員~』!」
女性「えーなんかすごーい」
先輩「うっわ……腐女子かよ」
先輩「引くわー」
先輩「早く行こ」
女性「あとで貸してね!」
「いいよー」
彼女「後輩くん、ほんっと可愛かったんだから」
191:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 19:03:49.90 ID:hHuwyPeJ0
先輩「結局どこ行っても一人でつまらん」
先輩「はぁ」
課長「先輩君! どうしたんだね一人で」
先輩「課長! いやーどうもこうもないですよ」
先輩「後輩も同僚も社員も欠席で」
先輩「何ででしょうね?」
課長「さぁ……しかし心配だね」
課長「何か分かったら教えてくれ」
先輩「はい、課長もよろしくお願いします」
先輩「……確かに異常だよな」
先輩「どうしちゃったんだよ、みんな」
192:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 19:04:39.88 ID:hHuwyPeJ0
係長「戻ったぞ」
先輩「お帰りなさい」
先輩「もう一週間か」
先輩「何かめっちゃ忙しかった」
係長「……皆はどうしたんだ」
先輩「ええと、社員は営業で」
先輩「同僚は欠席で後輩は遅刻です」
係長「連絡はあったのか?」
先輩「後輩はありました、同僚はないですが」
係長「……心配だな」
係長「最近皆、様子がおかしい」
係長「(ボーナスが出てからな……)」
係長「課長、か」
193:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 19:05:15.12 ID:hHuwyPeJ0
係長「課長、お話が」
課長「どうした怖い顔して」
係長「うちの部下についてですが」
係長「ボーナス支給直後から色々問題が起きているようです」
係長「何かご存知ないですか?」
課長「君が知らないのに、私が知るわけないだろう」
課長「部下の管理くらいしっかりしてくれ」
係長「……私の手には負えない、大きな力が働いているのかと思いまして」
課長「君はそういうところ、変わらないな」
課長「入社当時と同じだ」
係長「思い出したくもないですね」
係長「失礼します」
係長「(今回も、絶対に課長が一枚噛んでいる)」
係長「(あいつらに何があったんだ……)」
200:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 19:30:52.69 ID:hHuwyPeJ0
社員「ただいま戻りました……」
係長「社員、今夜空いているか」
社員「係長! お帰りなさい」
社員「ええ、空いてますけど」
係長「私の家に来なさい」
係長「聞きたいことがある」
社員「失礼します……」
係長「座りなさい」
社員「(ボーイズラブの段ボール、減ってない)」
社員「(きっと読み終わる度に新しいのを渡されるんだ)」
係長「ここなら誰も聞き耳を立ててはいない」
係長「知っていることを全部話してくれ」
201:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 19:33:30.46 ID:hHuwyPeJ0
社員「……」
係長「話しにくいか」
係長「脅されているのか」
社員「いえ、その……」
係長「来なさい」
ギュ
社員「係長……」
係長「嫌か?」
社員「いえ、そんな」
社員「落ち着きます」
係長「ならよかった」
係長「お前だけじゃない、同僚も後輩も先輩も助けたいんだ」
係長「俺を信じて、話してくれ」
203:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 19:38:25.59 ID:hHuwyPeJ0
社員「……同僚は、俺を助けようとして」
社員「俺が連れてったばっかりに……」
社員「俺が知ってるのはここまでです」
社員「後輩については分かりません。来てないっていうのも今日初めて知りました」
社員「ずっと外回りだったので……」
係長「そうか、分かった」
係長「ありがとう」
社員「係長」
社員「……もうちょっとこのままでいいですか?」
係長「構わない」
社員「(何かボーイズラブみたい)」
207:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 19:52:49.66 ID:hHuwyPeJ0
社員「……スゥ」
係長「寝たか」
係長「黒幕は見えたな」
係長「……また十年前のようなことを繰り返すつもりか」
十年前
若係長「若課長! この報告はおかしいです」
若課長「また君か。上がこれでいいと言っているんだ。係が課に口出しできないよ」
若係長「しかし若課長は、うちの係の代表ですよね?」
若係長「係の業務が捏造されているんですよ?」
若課長「あのねぇ……会社の利益になればいいじゃない」
若課長「そんなに言うなら、君がうちの係を代表すればいい」
若課長「得意先との懇談会がある。私の代わりに行くかね?」
209:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 20:02:46.70 ID:hHuwyPeJ0
若係長「××町……最近賑わってきた町か」
若係長「確か大きなホテルが一軒……ここだ」
若専務「○○印刷の若係長さんですね?」
若専務「私は△△出版の○○印刷さん担当、若専務です」
若専務「どうぞよろしく」
若係長「はじめまして、○○印刷会社の若係長です」
若専務「皆さんお待ちです、どうぞこちらへ」
若係長「若専務さん、今日は懇談会ですよね?」
若係長「役員の方が、何故私のような若輩と……」
若係長「え、ちょ、若専務さん?」
若係長「っぐ」
若係長「」
210:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 20:06:31.01 ID:hHuwyPeJ0
若係長「俺は、一体……」ズキッ
若係長「痛っ」
若係長「頭と……腰が痛むのか?」
若係長「うっ」
若係長「……」
若専務「どうでした役員さん、○○印刷の若手社員は」
役員「全く具合がいいねぇ」
役員「彼が担当になってくれるなら、全ての仕事を○○印刷に回してもいいくらいだよ」
役員「はっはっは」
若専務「そうですか、それはよかった」
若専務「では早速○○印刷の若課長に連絡しましょう」
若専務「若係長君を役員さん専属の性奴隷にと」
若係長「!」
若係長「そうか、若課長……」
若係長「出世のために、俺を売ったんだな」
係長「……あれから、俺は課長を訴えた」
係長「当時の社長は俺の意見を聞き入れ、俺を△△出版との取引から外してくれた」
係長「しかし社長はすぐに亡くなって……」
係長「今の社長に代わり課長は出世、変わらず好き放題というわけだ」
係長「とはいえ△△出版とのコネクションを潰した俺を、恨んでいるんだな」
係長「その報復が今回の件か」
212:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 20:11:37.00 ID:hHuwyPeJ0
先輩「あー出世したい」
先輩「とはいえ俺が、係長並みにデキる男になるとは思えないな」
先輩「あーチャンスとかコネとか売ってる自販機ないかな」
課長「やあ、先輩君」
先輩「あ、課長。お疲れ様です」
課長「チャンスが欲しいのかね?」
課長「あるにはあるよ」
先輩「えっ」
課長「最近、君のいる係は不振らしいな」
課長「それも上司である係長君の責任だ」
課長「責任を取ってもらわなければ」
先輩「ちょちょちょ……待ってください!」
先輩「係長の後釜なんて俺には無理ですよ!」
課長「はっはっは、だろうな」
課長「今回言いたいのは逆だ」
課長「上司の責任を部下が取る、というのも可能だ」
213:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 20:16:24.81 ID:hHuwyPeJ0
先輩「△△出版」
課長「そうだ、得意先中の得意先だぞ」
課長「君に△△出版との繋がりを作るチャンスをあげよう」
課長「出世にはもってこいだぞ」
先輩「あ……ありがとうございます」
先輩「けど俺でいいんですか?」
課長「いいんだいいんだ、係長君には一度チャンスをやった」
課長「彼は無下にしたがね」
先輩「……これは確かに大きなチャンス」
先輩「うまくすれば俺のためにもなるだろうけど……」
先輩「果たして俺が出過ぎた真似をしてもいいものか」
先輩「……」
先輩「ええい、課長命令だと思えばいいか!」
215:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 20:20:49.08 ID:hHuwyPeJ0
取引先「はじめまして、△△出版の○○印刷さん担当取引先です」
先輩「どうも、○○印刷の先輩です」
取引先「○○印刷さんとは長い仲ですからね」
取引先「ひとつよろしくお願いします」
先輩「で、今日俺たちがやることってのは」
先輩「△△出版と○○印刷の懇談会の準備ですか」
取引先「はい、よろしくお願いします」
218:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 20:34:06.00 ID:hHuwyPeJ0
取引先「私たちの仕事は裏方です」
取引先「基本的にこのカーテン裏で待機します」
先輩「了解です」
先輩「それにしても、ちょっと狭い部屋ですね」
取引先「身内の会ですからね、広くなくていいんです」
社長「おお、先輩君じゃないか。それに取引先さんも」
先輩「社長! いらしてたんですか?」
社長「私が主催した懇談会だよ。はっはっは」
社長「取引先さん、ここは一つお願いしますよ」
取引先「はい、お任せください」
取引先「続々来ますよ、招待客が……」
専務「おお社長さん、お久しぶりです!」
社長「これはこれは、専務さん」
社長「どうですか、うちの社員は?」
専務「いやあいい働きをしてくれますよ、はっはっは」
専務「もっと大きな結果をもたらすためには欠かせない」
219:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 20:42:47.27 ID:hHuwyPeJ0
課長「専務さん! これはどうもお久しぶりです!」
専務「課長さん! 何とお懐かしい!」
専務「あなたにはいろいろとお世話になり通しで」
専務「思えば十年前、彼を派遣してくれたときから……」
専務「姪の彼氏候補を懇談会に連れてきてくださったり」
専務「最近では専属社員をつけてくださるどころか、専属の……いやあ全く、ありがたい」
課長「今日はもっと大きな贈り物がございます」
課長「十年前の失態をお忘れいただけるような、贈り物が」
彼女「叔父さん、どうも……あ、課長さん! こんばんは」
彼女「専務の姪の彼女です」
彼女「後輩くんを紹介してくださったんですよね? ありがとうございます」
先輩「後輩くん……?」
先輩「もしかしてあの子、後輩の彼女か?」
先輩「機会があったら、後輩に何があったか聞いておこう」
220:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 20:43:51.35 ID:hHuwyPeJ0
部長「いやはや、皆様おそろいで」
社長「遅いじゃないか部長君、その子はどちら様だね?」
女性「娘の女性です。父がお世話になっております」
彼女「あ、女性!」
彼女「叔父さん、この子私のお友達なの」
彼女「後輩くんとのこと、応援してくれたんだよ」
部長「娘が専務さんの姪っこさんとお友達ということで、僭越ながら連れてきてしまいました」
社長「ははは、いいじゃないか賑やかで」
先輩「いやあ、すごい面子が揃ったなぁ」
先輩「裏方でも呼ばれたのが奇跡だ」
取引先「……ふふ」
225:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 20:52:02.96 ID:hHuwyPeJ0
取引先「先輩さん」
キュッ
先輩「へ?」
先輩「腕が後ろ手に……」
取引先「始めましょうか、こちらも」
先輩「始めるって、何を」
先輩「ちょっとよく分からないんですけど」
取引先「……十年前のことです」
取引先「当時係長だったおたくの課長さんは、当時○○印刷担当の営業マンだった専務に一人の部下を差し出した」
取引先「専務は彼を役員に渡し、自分の立身出世に利用した」
取引先「それを専務は後悔しているんです……何故自分のものにしなかったのかと」
取引先「今、当時の専務と同じ立場になった私にも、同じ条件が出されているんです」
取引先「もうお分かりですね」
先輩「ちょ、ちょっと待ってください!」
先輩「いきなりすぎて意味が……」
先輩「だいたい、うちの係長は部下を売るような真似はしませんよ」
取引先「ええ、だから僕にはチャンスが来なかった」
取引先「あなたの上司が出し渋るからです」
取引先「それに業を煮やした課長さんが、係長さんの代わりにやってくれました」
先輩「な、課長が……」
227:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 21:00:49.30 ID:hHuwyPeJ0
取引先「専務のところにも何人か渡ったようですが」
取引先「私のところにはあなたが来ました」
取引先「私の手駒はあなただ」
先輩「手駒、って……人を馬鹿にするのもいい加減にしてくれ」
取引先「みんな外にいますよ、声は抑えたほうが」
先輩「……っ」
取引先「いいですね、殊勝な人は好きですよ」
社長「ところで、今日の主役はまだかね」
課長「そろそろ着く頃ですが……玄関まで迎えに行きます」
専務「では私も例の準備を」
取引先「……私たちも始めましょう」
先輩「な、っぐ!」
228:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 21:03:36.95 ID:hHuwyPeJ0
先輩「やめ、ろ、てめ……」
先輩「っう、あ」
先輩「……っ」
先輩「待っ、て」
先輩「口、塞いで……」
先輩「むぐ、っ」
先輩「……!
取引先「あなたは道具にしない。僕のものにします」
課長「皆さん、来ましたよ!」
課長「今日の主役が!」
先輩「(カーテンの隙間から向こうが見える)」
先輩「(……!)」
係長「遅れました、呼ばれたのが遅かったものですから」
先輩「(係長が、今日の主役?)」
先輩「(どうして……きっとさっきの話と関係が……)」
先輩「(……まさか)」
230:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 21:07:02.23 ID:hHuwyPeJ0
専務「おお……君はあの時の……」
専務「十年前とは見違えるな、立派になった」
係長「……お久しぶりです、専務さん」
係長「十年前はお世話になりました」
先輩「(係長が……十年前に課長に売られた部下?)」
取引先「こっちにも集中してくださいよ」
取引先「ちゃんと要望通り。猿轡噛ませてあげたでしょう?」
先輩「っ、ぐ」
課長「いやああの時は失礼いたしました」
課長「社員教育がうまくいっていなくて、専務さんにはご迷惑を」
専務「なあに、いいんです」
専務「役員さんには、あの件で充分可愛がってもらえたのですから」
専務「心残りがあるとすれば……彼をみすみす手放したこと」
係長「お言葉ですが」
係長「私は今回もあなたの側に落ちるつもりはありません」
専務「はっはっは、もちろんただとは言わない」
専務「取引は必要だ、彼を連れてこよう」
先輩「(何だよ……これ以上、誰か)」
先輩「っ!」
231:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 21:12:46.07 ID:hHuwyPeJ0
係長「お前は……!」
専務「いやあ、彼は頑張ってくれたよ」
専務「夜通し私に付き合ってくれたし、若い衆の相手もしてくれた」
専務「初めに来た彼……社員君より、君に似ていて好みだった」
係長「同僚!」
係長「しっかりしろ、大丈夫か?」
同僚「……係長」
同僚「どうして、俺……」
係長「大丈夫だ、俺が助ける」
係長「……彼の首輪と手錠を外していただけますね?」
専務「いいだろう、取引が成立したということだな?」
係長「ええ」
先輩「(取引? 係長、まさか)」
取引先「いい上司ですね」
取引先「これで部下の彼は元に戻れる、専務は念願の係長さんを手に入れる」
取引先「めでたしめでたしじゃないですか」
先輩「んむ……!」
234:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 21:17:44.66 ID:hHuwyPeJ0
取引先「分かりませんね、何を言っているのか」
取引先「猿轡、いらないですか?」
スルリ
先輩「あっ……」
取引先「喘ぎ声は響きますからね」
先輩「な、ちょ、やめろ……!」
係長「部下に何をしたか聞かせてください」
専務「いいだろう」
課長「社員君の件は省いていいですよ」
課長「どうせ知っているんですから」
専務「なんだ、やはりできていたのか」
専務「これは徹底的に手懐けないとな」
専務「……この彼は社員君についてきたんだ、自ら」
専務「その彼を私は手懐け、姪と付き合っていた後輩君を呼んだ」
専務「そして彼に後輩君を襲わせたんだよ、姪の要求で」
235:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 21:21:40.19 ID:hHuwyPeJ0
彼女「後輩くん、すっごく可愛かったですよ?」
彼女「もうビデオ見られないの、残念だなあ」
係長「……ビデオも写真も、返していただけますね」
専務「君が手に入るなら安いものだ」
専務「ほら」
ズイッ
専務「そのアタッシュケースの中に全て入っている」
専務「疑うなら私の家を調べればいい」
専務「君の家にもなるんだからな」
係長「いただきます」
サッ
係長「三人にしたことは分かりました」
係長「先輩には何もしていないんですね?」
先輩「!」
236:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 21:24:54.06 ID:hHuwyPeJ0
専務「そんなに心配かね」
専務「こうしよう、君の部下には『明日から』絶対に手を出さない」
取引先「……はは」
先輩「っ、あ!」
先輩「(しまった……)」
係長「……今すぐに、お願いします」
専務「ならば今すぐ、私のものになりなさい」
係長「分かりました」
専務「はっはっは! 今日はめでたい日だ!」
社長「では今日の懇談会はこれにてお開きということで」
部長「両社の今後ますますの発展を祈って! 乾杯!」
238:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 21:28:55.96 ID:hHuwyPeJ0
カシャーン
部長「では私たちはこれで」
彼女「女性ー、一緒に帰ろう! うちでアニメ観ていきなよ」
女性「そうする。じゃあお父さん、今日は彼女の家に泊まってく」
部長「はっはっは、お世話になります」
課長「同僚君は私が送っていこうかね?」
係長「いえ、結構」
係長「先輩、どこかにいるだろう?」
先輩「!」
先輩「あ、っ」
係長「それが終わったら、同僚を家まで送ってくれ」
係長「お前も大変な目に遭っているのは承知で言っている」
係長「最後の命令だと思って聞いてくれ」
取引先「……返事でもしたらどうですか?」
先輩「ひ、ぐっ!」
先輩「……っ、う」
先輩「係長……分かりました、っ!」
239:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 21:32:01.42 ID:hHuwyPeJ0
ザワ…ザワ…
シーン
先輩「っう、早く、終わらせ……」
取引先「泣いてるんですか?」
取引先「全く、可愛い面もあるんですね」
先輩「黙れ!っ……」
先輩「俺は早く、あいつを送ってやらなきゃ……」
取引先「僕の相手もしてくださいよ」
取引先「とりあえず、一発」
先輩「な、っあ!」
先輩「ぐ……」
先輩「(あいつら、今まで何回もこんな思いして)」
先輩「く、そ……」ポロポロ
先輩「……っ!」
240:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 21:35:10.55 ID:hHuwyPeJ0
先輩「はぁ……っ」
取引先「よかったですよ、先輩さん」
取引先「これからもお願いします」
先輩「……」
先輩「同僚、立てるか?」
同僚「先輩……係長は」
先輩「……きっともう、会えないだろうな」
先輩「あの人は、俺たちを助けてくれたんだ」
先輩「一人で犠牲になって」
同僚「そんな……」
先輩「とりあえず、社員と後輩つかまえるぞ」
先輩「このまま会社に残るか、辞めるか」
先輩「考えることが多すぎて一人じゃ無理だ」
244:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 22:02:02.58 ID:hHuwyPeJ0
後輩「……今まで、ありがとうございました」
先輩「おう」
同僚「またな」
社員「頑張れよ」
先輩「……辞めたか、確かにあいつは耐えられないだろうな」
同僚「俺も、転職先が決まったら……」
先輩「無理している必要ないぞ」
先輩「あいつらが転職の邪魔してるかもしれない」
同僚「俺は、専務にしか相手にされてませんから……」
同僚「社員、お前は」
社員「俺は残るよ」
社員「結構色んな人を接待したし、俺がいるうちは犠牲者も出ないだろうし」
社員「それにもしかしたら、係長を」
先輩「忘れろ、あの人のことは」
先輩「犠牲になってくれた係長に、また迷惑かけるのか……?」
245:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 22:02:45.76 ID:hHuwyPeJ0
社員「……」
先輩「きっと専務は、引退する」
先輩「係長を手に入れて、満足してな」
先輩「探っても出てこないさ」
同僚「社員……」
先輩「俺も会社に残る」
先輩「取引先を俺が繋いでおけば、きっと安泰だ」
社員「係長……」
先輩「……」
246:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 22:03:11.22 ID:hHuwyPeJ0
先輩「ただいまー」
先輩「はぁ……これからどうしようか、俺」
先輩「……ん?」
先輩「封筒届いてる……ボーナスのボーイズラブ売った古本屋からだ」
先輩「『買取できない作品をお返しします』……って」
ガサッ
「先輩様
本をお送りくださりありがとうございます。
以下の本は買取が出来ないため、返却させていただきます。
冊数:1
タイトル
『実録!オフィス♂ラブ ~裏接待・取引先に潰された係~』」
247:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 22:04:27.00 ID:hHuwyPeJ0
本当に終わり
長々ありがとうございました
248:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 22:08:21.52 ID:ZCrqjJgX0
乙
250:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 22:17:24.73 ID:01S0qbwT0
乙
結局BAD寄りかwwwwww
251:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 22:18:54.67 ID:xvZesaaTO
オチ怖ぇえよ
263:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/06/05(火) 22:34:38.17 ID:pj5s7e4p0
乙楽しかったぞ
引用元
社長「今年はボーナスの代わりにボーイズラブを給付する」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1338857510/